「タイヤ付きの家」を高架下に作った理由

「タイニーハウス」とは、そのまま「小さな家」という意味だが、特に車でけん引できるタイヤ付きのトレーラーハウスのことを指す。

京急高架下にできた「タイニーズ」は、カフェやホステルも含めてこのタイニーハウスを利用した施設なのだ。
　

カフェ部分を道路から覗くとこんな感じ
　

よく見るとタイヤがある！
　

こちらがホステルの外観。もちろんタイヤ付きだ

　
宿泊施設「タイニーズホステル」は、3棟のホステルで構成。部屋ごとにテーマが異なり、男性専用のドミトリーは「DISCOVERY（発見）」、女性専用は「WONDER（驚き）」、1室貸し切りが「SILENCE（静寂）」をコンセプトにしている。
　

男性用のドミトリー。相部屋が旅人の出会いの場にもなる
　

こちらは女性用。部屋の広さや間取りはすべて同じだ
　

一棟貸しの部屋は落ち着いた雰囲気

　
ホステルというだけあって、宿泊料はドミトリー4000円～、1室2万円～と安価な設定。各棟定員4人まで宿泊することができる。若者の一人旅や、仲間との旅行が利用の中心になりそうだ。

どうしてこのような場所にホステルを作ることになったのか。京浜急行電鉄株式会社の広報部にお話を聞いた。



元風俗街からの浄化を経て

「日ノ出町から黄金町の近辺は、かつては風俗街でしたが、地域と一丸となった浄化作戦によって『アートのまち』として生まれ変わりました。今回のタイニーハウスを使った高架下活用は、その取り組みの先を行くものです」と京急の担当者。

高架下から違法飲食店が一層され、風俗街を脱却したものの、黄金町や日ノ出町へ出かける人の数は減ったまま。徒歩圏内の野毛や桜木町周辺と比べても、寂しい街並みなのが現状だという。そんな高架下に新たに誕生した「タイニーズ」の至上命題は、「いかににぎわいを取り戻せるか」ということにある。
　

「人が寄り付かない街」にしてはおけない

　
「タイニーハウス」はアメリカの経済不況をきっかけに、必要最低限のものだけを持ち、借金せずに小さな家に住むというムーブメントが発祥。若者や旅人への親和性の高さや、タイヤの付いた家という見た目の面白さから、注目を集めることを見込んだ。

とはいえこのタイニーハウスのメリットは物珍しさだけではない。別の場所でコンテナを作り、高架下に運ぶだけなのでコストが非常に安く済んだ上に、工事開始から2ヶ月強でオープンにこぎつけることができたという。
　

裏手に回ると、ちゃんとナンバープレートもある

　
また、あくまでも車でけん引して移動できる「動産」であるために、建築基準法や固定資産税の対象にもならない。その代わりに車両としての税金を支払っているほか、ナンバープレートを付けてしっかりと車検も通している。

施設の運営を担う「YADOKARI株式会社」は、これまでも東京・日本橋などでタイニーハウスを使った地域のコミュニティ再生やイベントの開催を行ってきた実績があり、京急としてはそのノウハウを借りて沿線の交流人口増加を目指していく考えだ。

京急日ノ出町駅は、羽田空港からエアポート急行で一本という好立地でもある。国内のみならず海外からの観光客も見据え、「これまで日ノ出町や黄金町に来ることがなかった人が訪れるきっかけにしたい」（京急広報部）と話している。
　

「小さな家」が沿線を変えることになるか？

　
カフェラウンジの「タイニーズリビングハブ」などは2018年4月28日から営業を開始しているが、ホステルは連休明けの5月8日がグランドオープンで、現在予約受付中。
高架下のホステルという物珍しさの先に、新しい街づくりが生まれることになりそうだ。

取材を終えて

高架下のホステル、ということで、電車の騒音や振動に悩まされそう・・・と考えていたが、実際に部屋の中に入ると意外にも電車の音はそこまで気にならなかった。トレーラーハウスという特性上、高架の柱に建物が触れずに済み、揺れを抑えることができているようだ。

5月3～5日のGW期間は「タイニーズリビングハブ」で入場無料の「高架下映画祭」を開催するなど、新たなコミュニティ拠点として活動を始めたタイニーズ。今後の取り組みにも注目していきたい。


ー終わりー


タイニーズ横浜日ノ出町
タイニーズリビングハブ（カフェラウンジ）
営業時間／午前11時～午後2時（ランチ）、午後6時～午後10時（バータイム）
http://tinys.life/yokohama/
https://www.facebook.com/omoshirogaru/