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横須賀の鷹取山にある岸壁をくりぬいた洞窟は何に使われていた?

ココがキニナル!

追浜の鷹取山の磨崖仏の近くに、岩が丸くくりぬかれた部屋のような空間が2つあり、いずれも出口の部分が海に向いてます。地元の方は、砲台の跡ではないかと言ってましたが、真相を調べて欲しいです(ときさん)

はまれぽ調査結果!

摩崖仏の近くにある洞窟は石切り場の跡だが、すでに住宅地となった湘南鷹取周辺には、戦時中見張りの待機所などとして、旧日本軍に使用されていた洞窟があった

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2018年08月07日

ライター:小方 サダオ

山の岩肌に再現された仏像(つづき)
 
さらに長谷川さんという84歳の男性に、戦中・戦後の鷹取山の様子を伺った。
 


当時の様子を語る長谷川さん

 
「鷹取山は戦時中に一部崩して平らにしたあと、近くにある海軍の工場で働く徴用工(ちょうようこう:戦争のために働かされた工員)の独身寮が5棟作られました。また高射砲が4門ほど山の尾根にありました。戦後は、私は子どもだったので高射砲についている、砲を動かすハンドルを回したりして遊んでいたものです」と話してくれた。

続けて「その後は、さらに山を崩して住宅地が出来たため、山は元の形からかなり姿を変えてしまいました。高射砲が設置されていた尾根もなくなったのです」という。
 


長谷川さんによる高射砲のイラスト。人が乗る座席(緑矢印)とハンドル(青矢印)
 

高射砲の置かれた山の尾根があったあたり

 
戦時中は「穴に監視の兵隊がいたか」については「山は全体が軍によって立ち入り禁止だったので、正確には分かりませんが、軍の敷地内なのでそこに兵隊がいたかもしれません」と答えてくれた。

そこで『新横須賀市史 別編 軍事』を調べると「横須賀海軍警備隊横須賀地区高射隊大隊別配備状況」には「第二高角砲大隊 鷹取山高角砲台 12センチ単装4門、25ミリ3連装1基 人員114名」とある。

さらに「横須賀市内の防空砲台・特設見張所と装備」によると、「所在地・湘南鷹取山一丁目 設置時期・1944(昭和19)年、装備・12センチ高角砲4、弾267発、2式陸用高射器(高射砲用の観測装置)1、98式4.5メートル高角測距儀(距離計)1、97式2メートル測距儀1、96式150センチ探照灯(サーチライト)1、25ミリ機銃3、13ミリ連装機銃2基」とのこと。
 


高射砲があったあたり(青枠)(1945年~1950年・地理院地図)

 
また、海軍の防空砲台(高射砲台・高射砲陣地)は、「1942(昭和17)年の『ドゥーリットル空襲』を契機に三浦半島全域に増設された。砲台とともに『特設見張所』も置かれて、それ以外に機銃砲台も数多く配備された。1945(昭和20)年7月10日・18日、米海軍38任務部隊により、横須賀は軍港を中心に大規模な攻撃を受けた。この攻撃に参加した米海軍攻撃隊の操縦士のコメントでは一様に、日本側の大口径の高角砲から機関銃に及ぶまで、その攻撃は『激しいもので、今までに体験したことのない対空砲火』と報告された」と記されている。

戦時中、鷹取山に人員が114名もいる高角砲陣地だったので、見張り所などが置かれ、その穴が利用されていた可能性はあるだろう。

それでは壁画のある四角い穴は何のためのものだったのだろうか? 投稿にある「丸くくりぬかれた空間」ではなかったが旧日本軍と関係があるのだろうか? 事情に詳しい方に話を伺うことにした。
 
 
 
紆余曲折のあった鷹取山の過去
 
山のふもとに広がる住宅地内の酒店の山下さんから、鷹取山の歴史について詳しい方を紹介していただいた。住宅地に住み郷土史に詳しい井上和彦(いのうえ・かずひこ)さんに、まずは磨崖仏と壁画について伺うことにした。

摩崖仏について井上さんは「磨崖仏は数体作られる予定でした。まず第1作目は『釈迦如来像』を、1960(昭和35)年1月に鷹取小学校の体育館付近に作られました」と話してくれた。
 


第1作目は鷹取小学校(青矢印)のあたりに作られた。現在残された磨崖仏(赤矢印)(© OpenStreetMap contributors

 
「中国古美術研究家の川口満(かわぐち・みつる:逗子市の実業家)氏が鷹取山は仏像を彫るのにふさわしい地として、地主の西武鉄道の了解を得て、横須賀市佐原の彫刻家・藤島茂(ふじしま・しげる:建築家・随筆家の顔も持つ)氏に依頼したのです。同年4月に完成しました」という。
 


鷹取山は一時は行楽客でにぎわっていた

 
「大きさは高さ4メートルで製作費は川口氏の個人負担でした。その後、鷹取小学校用地造成のため取り壊されたのです」とのこと。
 


2作目の「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」だけが残されている

 
「2作目は現存する『弥勒菩薩(みろくぼさつ)』です。像は腰を掛けて足を組んでいて、説法をしている姿を真似たものだそうです。高さ8メートルの枠内に高さ約5.5メートル、幅約7メートル、奥行き約1.3メートルです。1960(昭和35)年に彫り始め、1961(昭和36)年6月7日に一般公開されました」という。

続いて、3作目については「西武鉄道の会長、堤康次郎(つつみ・やすじろう)氏が、日本最大の磨崖仏を作ることを着想し、壁面の造成を指示したのです。藤島氏は『不動明王』を計画していましたが、西武側はつながりを持った仏像の集団として彫りたいと考えていました。彫刻家も数名動員して、3年くらいかかる大作を作りたいと発表したのです」

「場所は鷹取小学校の校庭の山側付近でした。1961(昭和36)年6月に仏像を彫るための幅50メートル、高さ23メートルの屏風のような壁面が完成したのです」という。
 


第1作から第3作までの磨崖仏(赤線)と穴の壁画(ピンク線)の位置

 
「しかし藤島氏が体調を崩し1963(昭和38)年に死去。堤会長が後を追うように1964(昭和39)年4月に亡くなってしまい、実現しませんでした。そのころ鷹取山一帯を観光地から宅地開発にする案が出ていて、磨崖仏のメッカにする話は消えてしまいました」と話してくれた。
 


以前は岩に「親不知(おやしらず)」などの名前が付けられていた

 
大掛かりな磨崖仏の聖地を作る予定であったが、時代の流れもあり住宅地の計画に変わってしまったようだ。

続いて、穴にあった石仏について伺うと「横須賀市に住む1908(明治41)年生まれの千場勇次郎(ほしば・ゆうじろう)氏が、1987(昭和62)年に鷹取山を訪れた際、高さ4メートル、幅10メートル、奥行き4メートルほどの石切り場の後を発見しました。明治・大正のころの石切り職人の血の出るような苦しい作業を想像して、その霊が宿っているように感じたと、1971(昭和46)年の春に石仏を掘ることを決心したのです」という。
 


彫刻家ではなく一般人が作った壁画だった
 

お経も書かれている

 
「1972(昭和47)年に近くに移住したあと、横須賀市に石仏制作趣意書を提出し、許可を得ました。そして1人で製作を始め、36日かけて三体の石仏を彫ったのです。不動明王像は、横1メートル、縦1.5メートル。釈迦涅槃像(しゃかねはんぞう)は、横3メートル、縦2メートル。阿弥陀三尊像は、横3メートル、縦2メートルになります」

「さらに地蔵尊の壁画や水子仏も作り、『清風洞(せいふうどう)』と呼び、訪問者に感想を書いてもらったりしていました。しかし千場氏が亡くなると、横須賀市は『彫刻禁止、カラー塗り禁止』の警告看板を掲げました」
 


横須賀市による彫刻禁止の看板

 
「そのほか、登山道の途中に、地元の住民による戦時中の犠牲者のための祭壇や、『特攻隊戦士の像』『落下傘部隊勇士の像』などが作られましたが、認可されたものではなかったので、横須賀市が1983(昭和58)年4月に撤去しました」とのこと。

穴の仏像は、やはり磨崖仏とは関係なかったようだ。また穴は壁面の石を切り出した跡だったようで、四角い形であることが理解できた。
 
 
四角い穴の謎に迫る・・・キニナル続きは次のページ≫

 

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