フジサワ名店ビルの変遷、そして現在は

？

　
開店から53年。バブル崩壊などの時代の変遷や後継者問題などにより店舗数は減少し、現在の店舗数は合計34店舗。
　

現在の店舗一覧

　
生鮮食品をはじめ、飲食、衣料、書籍など多岐にわたる店舗が出店しているが、近隣の商業施設などの影響を受けて、創業時に比べると、若年層のお客さんが減少しているという。

では、ビル内を少しご紹介！
　

路面にはアイスクリーム、ドーナツなど若い人にもうれしい店が
　

レトロな雰囲気のコーヒーショップ。ザ・昭和な感じが逆に新鮮だ
　

中2階がある特徴的な構造で、ここには手作り革製品の店がある
　

「有隣堂」は創業時から継続して出店

　
しだいに面積を増やし、フロア全体ではないが、現在は2階から5階に店舗がある。
　

地下フロアには生鮮三品がそろう

　
「地元のお客さまが根付いていて、午前10時からにぎわっています。生鮮三品については、ほかの百貨店にも引けを取らない自信があります」と井下さんは話す。

地下フロアには名店ビル創業以来、営業を続けている店が2つある。その一つ「魚つる」の店主、岩田實（いわた・みのる）さんに話を伺った。
　

「魚つる」の2代目、岩田さん（左）と店長さん

　
「魚つる」は岩田さんの父、鶴松さんが1932（昭和7）年に創業した鮮魚店。實さんは中学卒業後からお父さまとともに店を営んできた。80歳近い今でも、毎朝午前1時30分に起きて午前3時ごろには市場に行く。金沢区の横浜南部市場や神奈川区の本場だけでなく、その日ごとに良い魚を求めて、静岡県の方まで仕入れに行くこともあるとか。

「ほかにないものを売ること。鮮度を大事にして、その日の良いモノを安く売ることがモットー」と語る。
　

新鮮な魚が並ぶ！　常連には近隣の飲食店の方なども多いとか

　
「名店ビルはみんなで協力し合って盛り上げていかなければだめだ。名店ビルがある限り、身体が続くかぎり店に立ちたいね」と。創業時からフジサワ名店ビルを知る岩田さんの言葉は、温かくも重みのあるものに感じられた。
　

創業時からあるもう1店が「みのるうなぎや」

　
定休日（水曜日）のため、話を伺うことはできなかったが、「頑固一徹の店主が、早朝から一串一串丁寧に下ごしらえして焼き上げたうなぎを、自信を持ってお客さまに提供している。残念なことに、土用の丑の日はお休みなんです」と井下さんが教えてくれた。

フジサワ名店ビルの1日の来館者数は約1万1000人。昨年に比べて1割ほどダウンしているという。5年ほど前に、辻堂に「テラスモール湘南」ができて、藤沢駅周辺の商業施設はどこも苦戦している状況のようだ。そのような中でも、「地元に根ざしてはや53年！ お客さまに愛される地域密着型の商業施設として充実を図っていきたい」と井下さんは語ってくれた。
　
　
　

取材を終えて

　
商業ビルの先駆的存在ともいえる「フジサワ名店ビル」。ゆったりとした空間がとられ、昭和レトロな雰囲気が漂う店内には、最近の商業施設とは全く違った居心地の良さがあった。

ハゼの木広場では、6年ほど前から、集客やにぎわい創出のために、基本的に毎月1回、月末の日曜日にミュージシャンのライブなどステージイベントが行われている。地元のコミュニティFM局「レディオ湘南」とコラボして、藤沢出身だったり、湘南に馴染みのあるアーティストが来ることも多いとか。

こうした試みも成果を上げ、今後も、さらに地元に愛され、活気ある商業施設であり続けてほしいと思う。
　
　
―終わり―
　
　
取材協力
フジサワ名店ビル
住所／藤沢市南藤沢2丁目1−1
電話／0120-111-391
営業時間／10:00〜21:00

参考文献
「藤沢391まちづくりブック」慶應義塾大学SFC中島直人研究室
「藤沢駅前南部第一防災建築街区造成の都市計画史的意義に関する考察」中島直人（2012年）