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相模原の相模川沿いに点在する「ヤツボ」という水場の正体とは?

相模原の相模川沿いに点在する「ヤツボ」という水場の正体とは?

ココがキニナル!

相模原には湧き水を利用する「ヤツボ」という水場があります。水神様が祀られるなど、ちょっと不思議な空間。ヤツボとは何でしょうか。3箇所ほどネットで見つけましたが、他にもあるでしょうか(yummyzさん)

はまれぽ調査結果!

ヤツボとは、江戸時代に作られ、溜めた湧水を生活用水などに利用した水場。かつては相模川沿いに数多く存在したが、今では水量が少なくなり使用されていないところも多い

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ライター:小方 サダオ

神社のご神水となるヤツボの湧水の神秘性とは



日々神社のご神水や相模川沿いにある有鹿神社の霊泉となっている、この地の湧水。

 
相模川沿いに位置する本宮
 

相模の国最古の神社といわれる海老名市の有鹿神社のホームページには「有鹿谷にある豊かな泉は、水神として人々の信仰の対象となった。この泉の流れによる鳩川(相模原市から海老名市を流れる河川)に沿って農耕生活が発展し、有鹿郷(鳩川流域の地)が成立。この郷の水田における農耕の豊穣と安全を祈る『水引祭(有鹿郷《海老名市》の誕生と発展を物語る祭)』が起り、有鹿神社はご創建された」とある。

 

有鹿神社では、有鹿谷でご神水を使った“お水もらいの神事”を行っている
 

水量が豊富に出ていて、今でも地域で管理されているヤツボは少なくなってしまったようだ。しかしヤツボに鎮座する龍蛇神やヤツボの水をご神水とする神社の存在が、この地の豊富な湧き水への人々の感謝と畏敬の念を伝えている気がした。



特徴的な水場・ヤツボはどのようにして作られたのか



最後になったが、ヤツボという水場はどのように、何の目的で形成されたのだろうか。資料から紐解くことにする。

ヤツボが広く紹介されたのは、1927(昭和2)年の地理学者の論文であると『相模原市史 自然編』に記述があった。論文の内容によると「土地の人が“相模横山”と称している段丘崖下では、地下水が湧きだし、水田存し、水車が回っている」と、当時の様子が紹介されていた。水車を利用して、精米・製粉などを行っていたという記述もあり、かつては湧き出る地下水を、生活の一部として有効活用していたようだ。

 

ヤツボは生活用水に使われていた(提供:『相模原市史 自然編』より)
 

続けて、『相模原市史 自然編』には、ヤツボの利用方法の変遷が記されていた。

ヤツボは、江戸時代の1600年代から存在していたようで、飲料水としての湧水利用については江戸時代よりさらに時代をさかのぼるという。
その後、この地区の水道の普及が遅かったため、昭和30年代まで各所で使用されていた。しかし、都市化に伴う工業廃水や生活排水による水質汚濁などが原因で、飲料水としての利用が衰退し、現在では洗い物程度の用途になっているとのことだ。

 

時代の流れによって、ヤツボの利用が少なくなっていった
 

『おおさわ風土記』には、その昔相模川沿いの大島地区は、こんこんと清水の湧き出る泉があり、大島各地のヤツボ周辺には縄文時代の土器が多数発見されていることから、ヤツボのあたりに住居を造り、古代人が生活を営んでいたことが想像されるという。大昔の相模川は川尻付近まで入海か湖になっていて、昔は井戸ではなく、ヤツボの清水で生活を営んでいたようだ。

 
相模原の川尻地区。このあたりまで海か湖になっていた
 

ヤツボは江戸時代に作られたものの、豊富な湧き水は縄文時代から使用されてきたようだ。

 

大島水場のヤツボの近くには縄文時代の集落があったそう
 

またヤツボの成因については、次のようなことが書かれていた。

湧水のほとんどが川沿いなどに分布する段丘崖にあり、その中でも平地との高低差の大きい部分に多いという。
また、湧水が起こる特徴には、地下水を通しやすい地層の「帯水層(たいすいそう)」と地下水を通しにくい地層の「不透水層(ふとうすいそう)」が関係し、不透水層の上に流れる地下水が地表に露出している場所に湧泉が存在している。

相模原市内の場合は、田名原(たなばら)段丘・陽原(みなばら)段丘と相模原低地との崖には、全ての不透水層の上に、帯水層である大きな河川流域に見られる地層「段丘礫層(だんきゅうれきそう)」があるとのことだった。

 

相模原の段丘等を示す図
 

上図の水を通しにくい基盤の層(茶色枠)の上に、地下水面(青矢印)が出来て、それが露出した部分にヤツボ(紺矢印)が作られやすい。
つまり、相模原台地の階段状の地層には、水を通しにくい層とその上に水を通しやすい層があり、水を通しにくい層の断面が露出した表面に湧水が出て、ヤツボになっている場合が多いようだ。

 

この地域の人々は地層による恩恵を受けていた
 



取材を終えて



生命にとって欠かせない水は、神聖なものであったといえる。古代からこの水の豊富な地で生活してきた住民にとって、水=神としての信仰が発生したのは自然といえ、それは今でも生き続けているようだ。

 

水の豊かな土地の人々は水神信仰に篤(あつ)いのかもしれない
 


-終わり-


参考文献
『相模原市史 自然編』(相模原市総務局総務課市史編さん室、出版年2009年)
『おおさわ風土記』(おおさわ風土記刊行委員会、出版年2000年)
 
 

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コメントする
  • おお、なんとも格調高く学術的なフィールドワーク記事ですね!埋もれ消えていく地域の歴史遺産の記録も重要です! ところで川尻まで縄文時代に海だったとすると、このあたりの標高は70m近いようなので、縄文海進では南極の氷が全部溶けたくらいの温暖化だったことになります!? キニナル!!

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