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生態学の世界的権威、横浜国大の宮脇先生が提言する津波対策とは?【前編】

ココがキニナル!

横浜国大の宮脇昭先生をインタビューしてください。特に神奈川県の沿岸部に植林して津波を防ぐ方法を提言して欲しいです。(にゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

神奈川県民は今いる場所が最善と考えて、そこで生き残ることを考えるべき。そのためにも潜在自然植生に合った樹木の苗木を植えることが必要である。

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ライター:松崎 辰彦

4000万本の木を植えた男



東日本大震災は“水の災害”であった。

2011(平成23)年3月11日、宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の大地震は、巨大な津波を引き起こし、沿岸地域を壊滅状態に陥れた。死者は2012年10月現在で1万5000人を超え、行方不明者も2000人を超えているとされる。
 


世界を震撼させた東日本大震災(画像:岩手県釜石市)


波高10m以上とも言われる巨大津波は沿岸にあった原子力発電所をも破壊し、放射性物質の飛散が日本全土を震撼させた。
たしかに未曾有の大地震ではあった。しかし人間の知恵で、被害を最小限に防ぐことは不可能だったのだろうか?

ここで多くの注目を集めるのが横浜国立大学名誉教授で国際生態学センター長の植物生態学者・宮脇昭氏である。
日本そして世界各地で植樹を指導し、“4000万本の木を植えた男”として知られている。

最近では、今後起こるであろう自然災害を最大限に防止する手立てを提唱する人物として、新たな脚光を浴びている。



「潜在自然植生」に従うことで強い木を育てる



横浜市西区にある横浜西合同庁舎。その3階にある国際生態学センターで話を伺った。 
「神奈川県の津波被害への対応は、まさにすぐやるべきことです。今晩来るか、あるいは300年後かわかりませんが、大きな地震が来ることは間違いないからです」

神奈川県こそはすぐに防災措置をとらなければならないと、宮脇氏は強調した。そのためにはたとえわずかの空間でも植樹することが大切であるとの持論を展開する。
 


“4000万本の木を植えた男”宮脇昭氏


「神奈川県の潜在自然植生は、海面から高度800mまでがシイ・タブ・カシ類です。それから上は落葉広葉樹のミズナラ・ブナです」
 


スダジイ。木炭やシイタケ栽培のホダ木にもなる
 

タブ(またはタブノキ)。神社の「鎮守の森」によく見られる
 

シラカシ。関東に多く見られる


宮脇氏の話に頻繁に登場するのが「潜在自然植生」という言葉。これは人間の影響・干渉が完全に停止した場合に、最終的にその土地が維持する植物、というものである。わかりやすく言えば“その土地本来の植物”ということ。

宮脇氏によると、92.8%の日本人が住んでいる地域の潜在自然植生は、照葉樹林(温帯にできる常緑広葉樹林の一種。葉の表面が照り輝いている樹木によって多く構成されている)であるシイ・タブ・カシ類(アラカシ・ウラジロガシ・シラカシ等)である。

しかしそうした潜在自然植生をそのまま反映させている土地は現在、0.06%しか残っていない。人間が経済的な利益のために、土地本来の木を伐採し、スギやヒノキなどを大量に植えたからである。
 


日本の潜在自然植生 (『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』
宮脇昭〈学研パブリッシング〉より)


東日本大震災では、海岸沿いに植えられた多くのマツの木が津波に押し流され、被害を大きくしたとも言われている。針葉樹(葉が針状の裸子植物の樹木。マツ・スギ・ヒノキ等)であるマツの根は浅く、波の圧力に耐えきれなかったのだろうと考えられる。

宮脇氏は言う。
「マツだけを植えても長持ちしません。マツが海岸で生育するには他の広葉樹(葉が広い被子植物の樹木。シイ・タブ等)のサポートが必要です」
 


津波で倒れたマツ(写真提供 宮脇昭


土地本来の多様な木を植えることが、人命を守ることにつながる。そのためにも、今回の震災で発生した大量の瓦礫を有効利用せよと宮脇氏は提言する。