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造船メーカー「ジャパン マリンユナイテッド」鶴見工場、どうやって芦ノ湖の山の中まで海賊船を運んでいる?

ココがキニナル!

護衛艦・いずも進水式で話題の、磯子のジャパンマリンユナイテッド横浜工場は芦ノ湖の海賊船をユニット毎に作って陸送し、再度湖畔で組み立てるとか!箱根まで船を運ぶ様子が知りたい!(象の鼻さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

正式には鶴見工場で製造。いったん組み上げた船を10個のブロックに輪切りし、深夜に陸路で芦ノ湖へ。現地の湖畔で約半年をかけて完成した

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ライター:河野 哲弥

横浜ならでは、造船メーカーに直撃



海に面した港町横浜。
かつては、世界中の文化や情報が、船に乗って運ばれてきた。造船会社のドックが、横浜市にあったとしても不思議ではないだろう。
しかし、芦ノ湖に浮かぶ観光船を製造し、箱根の山の中へ運んだのだとしたら、そこにはキニナル何かがありそうだ。
 


鶴見区にある、ジャパン マリンユナイテッド(以下JMU)を訪問
 

さっそく取材を申し込んでみたところ、東京都港区に本社を置くJMU(資本金:250億円、従業員数:7500人(グループ会社含む <平成25年度>) は、全国に7つの工場や事業所を展開し、横浜だけでも磯子と鶴見に工場を持つそうだ。
「実際に芦ノ湖の海賊船を手がけたのは鶴見工場になります」とのことで、後日、同工場を訪れることになった。



記念品ともいえる「船の盾」がずらり



エントランスに飾られていたのは、壁一面を埋め尽くす「船の盾」。
これらの記念品は、同社で造船や修理を行った船主から感謝の意を込めて寄贈されたもので、ある種の習慣のようになっているらしい。
 


盾のほか、模型や賞状なども飾られている
 

砕氷艦「しらせ」の盾。ペンギンがかわいい
 

さて、カメラが持ち込めるのはここまで。
同社では、護衛艦や巡視船のようないわゆる「艦艇」や「官公庁船」も扱うため、機密保持の観点から、関係者以外の立ち入りや撮影に制限を設けているそうだ。
 


ということで、DVDを拝見
 

したがって、会議室内で資料映像を鑑賞。
まずは、投稿にあった芦ノ湖の観光船の経緯を追ってから、同社の詳細について伺っていくことにしよう。



上下逆さまに造る? 造船には不思議がいっぱい



説明してくださったのは、同社営業部の根岸一美(ねぎしかずみ)さんと、芦ノ湖海賊船「ロワイヤルⅡ」の製造責任者を務めた建造部の横山東光(よこやまはるみつ)さん。
 


左から、根岸さんと横山さん
 

この海賊船の特徴は、「どんがら」と呼ばれる胴体の部分が鉄製で、その上にアルミ製の構造物を載せていることなのだとか。このため「どんがら」は、一般的な船よりも平たい印象を受ける。
 


黒い部分が胴体、ほぼ湖面すれすれといったところ
 

まず、この部分が製造された
 

キニナったのは、船底が上になった状態で造船されていること。
この点について根岸さんは、「溶接者が下を向いて“楽な姿勢で”溶接作業が行えるよう、ブロックを反転させていまする。良い作業環境で、より良い船を建造するための知恵です」と話す。
 


その後、10のブロックに輪切りし
 

深夜、陸路にて芦ノ湖へ搬送
 

それにしても、ブロックごと運ぶのであれば、最初からそう造ればいいような気がする。なぜ、わざわざ完成した胴体を輪切りにするのだろうか。

横山さんによれば、「ミリ単位のズレが命取りになることもあるので、面倒でもいったん船の『どんがら(エンジンなどは積んでいない胴体のみ)』を完成させます。ただし、全長方向へは多少長く造ってあります。これは、溶接や切断を繰り返すと、その部分の金属がわずかに失われてしまうからで、計算した上で『のりしろ』のような部分を設けているのです」とのこと。
 


約2週間をかけて搬送後、芦ノ湖湖畔で再び組み立て
 

「現地には、船を芦ノ湖へ下ろすための船台があるだけで、専門の設備はありません。ですから、船台の脇に150トンクレーン車を据え付けて荷下ろしします」と横山さんは続ける。

ブロックを載せたトラックは狭い船台まで乗り入れられないので、少し離れた道路から荷役作業をすることになる。一方クレーンは、アームの距離が長くなると、それだけ軽いものしか運べなくなるそうだ。こうした諸条件を勘案した上で、「10」というブロックの数が決定されたのだという。
 


着々と船の形に育っていく
 

胴体が完成したら、ブリッジなどを設置
 

約4ヶ月後、「ロワイヤルⅡ」は芦ノ湖に浮かんだ
 

2012(平成24)年9月3日に鶴見工場から搬出された同船は、雨風や雪に悩まされながらも、翌年の1月17日に無事進水式を迎えた。しかし、これで完成したのではないという。

「エンジンや軸の据え付けなどの作業は船が水に浮かんでいる最も自然な状態で行います。」と横山さん。また、エンジンの試運転など、水の上でしかできないことも少なくない。今まで金属の塊だったものを、いよいよ「船」にしていくのは、実はこれからなのである。
 


特別船室の様子、内装も重要な工程のひとつ
 

こうして2月26日、全長約35メートル、総トン数315トンの同船はついに完成し、3月20日から就航を開始した。船主との打ち合わせも含めると、ブロックが芦ノ湖に到着してから実に半年以上の歳月を要したプロジェクトとなった。

この期間は、同規模の船にしては長い方なのだろうか。
横山さんにたずねてみると、一般的なケースと大して変わらないとのこと。ただし、「芦ノ湖周辺は国立公園ですから、本来このような作業は認められていない。そのため、事前に色々な申請手続きが必要でした。船主の箱根観光船(株)様にも全面的なご協力をいただきました。」とのこと。
では、同社ではほかに、どのような造船事業を行っているのだろう。今度は、管理部の大島さんに、話を伺うことになった。