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昔は横浜で石油が出たって本当?

ココがキニナル!

昔、西谷付近で石油が出そうだという騒動になったという話を聞いたことがあります。試掘までして結局は少量の天然ガスしか出なかったとのこと。話は30年以上も前に聞いたので戦前の話かも(hiwochanさん)

はまれぽ調査結果!

昭和30年代に石油に代わる燃料として天然ガスの試掘が各地で行われた。保土ケ谷区西谷の周辺はその採掘候補地の一つだった

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ライター:小方 サダオ

石油採掘騒動は本当にあったのか?



石油採掘というと、アラブのような砂漠の真中や北海油田のような海の上のイメージだ。
交通量が多い国道16号沿いの、住宅が立ち並ぶ今の保土ケ谷区西谷の姿からは想像ができない。
 


国道16号線の通る、相鉄線西谷駅前
 

まずは図書館で保土ケ谷区史を調べてみたが、保土ケ谷区川島町の川島小学校のあたりから石英(せきえい/鉱物の種類)を成分とする珪砂(けいさ/砂)が発掘されたことくらいしかわからなかった。
 


赤丸が川島小学校。石油は出たのか?
 

そこで現地を訪れ、まずは公民館に集まり将棋に熱中していた地元のお年寄りに話を伺った。すると「そんな話は聞いたことがない」とあきれ顔をされた。

これはただのデマだったのかと少し心配になった。

つぎに西谷駅前で長く営業しているタバコ屋さんでお話を伺うことに。
夫人に話を伺うと知らない、とのことであったが、そこにご主人の金子さんが帰ってこられた。
  


西谷駅前のたばこ店
 

店主の金子さんと店内に置かれた楽器の数々
 

すると「『石油が出る』という騒ぎはあったよ。俺が12才のころだから今から54年位前になるよ。櫓(やぐら)を組んでボーリング工事みたいなことをやっていた。ガスだか温泉だかが出たとか言ってた。最近まではその場所に、柵に囲まれたガス抜きのためのパイプのようなものがあったよ」と答えてくれた。

ちなみに金子さんは、音楽活動をされていることで新聞などマスコミに登場している有名人だ。以前筆者が書いた「矢沢永吉さんの記事」を話題にすると「永ちゃんがやってたライブハウスで俺もやってたんだ!」と話が盛り上がった。
  


ロックなたばこ店として新聞に紹介される
 

テレビにも出演された
  

ロックな店主に別れを告げ、石油騒ぎのあった場所へと向かう。
 

教えていただいた場所は山の上だ。長い階段を上り、保土ケ谷の町が一望できそうな山の上には、住宅地が広がっていた。西谷中学校をすぎたあたりで、採掘地の土地を持っていた人を探した。このあたりは川島町だ。
 


山の上に元採掘現場がある
 

西谷からだと、帷子川を渡った山の上を目指す
 

ある旧家を訪れると、ちょうど車で帰宅された男性Yさんにお話を伺えた。
「今から55年くらい前かな? 今は賃貸住宅が建っているけれど、昔はカヤやすすきが茂る畑だった。そこに真中に柱を立てて、ドリルで地面を掘っていたよ。1年以上掘っていたかもしれないね。あと現在は環状2号線が通っている『市沢下』の交差点のあたりも掘っていたよ」
 


環状2号線の市沢下町交差点
 

近くには陣ケ下渓谷公園。赤丸のあたりが市沢下町交差点
 

「だけど地元の人たちは『石油なんか出るわけないよ』って思ってたよ。天然ガスだったら千葉県の白子の方で今も出てるけどね。ここも房総半島と続いてる地層らしいから天然ガスなら出る可能性はあると聞いたことがある」と答えてくれた。

畑の真中に降ってわいた石油採掘騒動、当時の地元の人たちは驚いたことだろう。
 


昔は農家が多かったという
 

つぎに元採掘場所だと思われるところのすぐ近くに住む、Kさんにお話を伺った。
「その話はちょうど私たちがここに引っ越してきた時だから、1963(昭和38)年でしたね。櫓(やぐら)を建ててボーリングをやっていました」

近いから作業の音がうるさかったのでは? と伺うと「ボーリングといっても今のようなドリルではなく、金属製の筒状のものを上げては落とし、上げては落とし、という原始的な方法だったので、あまり音は大きくなかったです」

採掘方法が証言する人によって違う。いろいろな方法が試されたのだろうか?
 


今でも畑が残っている
 

採掘の様子について伺うと「採掘場所の穴からは、地中からの黒くて汚い水がしみだしていました。結局あたたかい温泉しか出なかったように聞いています。旭区の団地では温泉が出ますし、近いからここから出ても不思議ではないのでしょう」

また「あの土地はずーっと東京ガスのものでしたよ」と教えてくれた。
 


採掘場所があったあたり
 

またYさんという地元の事情に詳しい方に話を伺うと「あれはよく分からない話なんだよね。櫓を立ててドリルを使って1km掘ったらしいけれど。石油なんか出なくて、天然ガスが出たとか、原油かなんかの貯蔵庫にしただとか、いろんな説があったんだ。17℃のあたたかい水が出たことは確からしいんだけど、温泉にはならなかったね」とのこと。
 


元採掘場所には住宅が建っている
 

住宅が建つまでこのあたりにガス抜きの管が残っていたという
 

最後に長年この地に住む、Kさんに当時の様子についてお話を伺うと「あそこには東京ガスの看板がかかっていたよ。柵の中では櫓を組んでいた。先にダイヤモンドをつけた、2リットルのペットボトルほどの太さのドリルで掘っていたよ」

「穴の中に水を入れて土を泥状にして、ディーゼルエンジンを使ってドリルで掘り進めていたんだ。となりには出てきた泥水を貯めるため池があった。作業員は泥だらけになりながら作業をしていたよ。でも掘っていた期間は3ヶ月ほどだったけどね。この前の道路は作業用の重機を入れるためにつくられたものなんだ」
 


本来は採掘現場への重機搬入のためにつくられた道路だという
 

天然ガスを掘っていたんですよね、と確かめると「いや、親方に聞いたけど『石油を掘るんだ』って言ってたよ。また『ほかにも市沢下や旭区の白根など数ヶ所掘っていて、お金はかかるけれど何本か掘って1本当たればいいんだ』と言っていたよ。とくにここには期待をしていたらしく、何千メートルも掘ったらしいよ。珍しかったから、よそからも見物人が来て、写真を撮ってる人もいたよ。でも結局ぬるいお湯しか出なかったようだね」と答えてくれた。