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大さん橋で開催された「世界初」、職人たちが本気のコマで世界一を目指す「世界コマ大戦」ってどういう大会?

ココがキニナル!

大さん橋で開催される「全日本製造業コマ大戦2015世界大会」のレポートをお願いします。(enさん、神絆会さん、たこさん)

はまれぽ調査結果!

「全日本製造業世界コマ大戦2015」は、国内外の職人たちによる29チームが本気の技術で競い合う、熱い大会だった!

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ライター:すがた もえ子

「全日本製造業世界コマ大戦 2015」とは?



「『世界コマ大戦』て知ってますか?」
編集部・宮城より、突然そんな電話がかかってきた。
世界コマ大戦・・・どこかで聞いたような、と、しばし考える。
先日、秋葉原へ出かけた際、子ども向けのコマ大戦のチラシを見かけたことを思い出した。

「大さん橋ホールでやるやつですか?」と聞くと、
「それです、それ! でも子ども用じゃないんですけど」と、何故か少し興奮気味で話し出す編集部・宮城。
 


これが今回のチラシ

 
筆者が見かけたチラシは子供向けだったが、どうやら「コマ大戦」というのは製造業を行っている中小企業が、自慢の技術を駆使してコマをつくり、競い合う大会らしい。
ベ○ブレードの大会のような物を想像していたので、少し拍子抜けする。
工業用のコマというと、精密さがどうの、加工の仕方がどうのといったような感じのイメージがある。

この大会はコマを作る技術を競うだけではなく、投げ方などの技、対戦相手との駆け引きをがモノをいうらしい。
 


職人による本気のコマ回し対決。倒れたり土俵から出たりすると負け


・・・なにそれ、おもしろそう。
「しかもですね、『五光発條(ごこうはつじょう)』さんていう横浜のバネ製造会社が南関東代表で出場するんです!」
そんなわけで、全日本製造業世界コマ大戦 2015の様子を取材するまえに、横浜から世界を目指す五光発條を取材することになった。



横浜から世界一を目指す「五光発條」




東急田園都市線南町田駅からタクシーで8分ほどの瀬谷区五貫目町に、今回の世界コマ大戦の南関東代表「五光発條」(資本金7575万円、従業員数35人)がある。
 


お伺いした五光発條さん
 

バネで作られた作品が出迎えてくれる

 
今回ご対応いただいたのは、五光発條代表取締役の村井秀敏(ひでとし)さん(下写真右)と、技術開発部技監の岩佐勇さんのお二人。
 


よろしくお願いいたします

 
さすがバネ屋さんだけあり、社長室の中には玄関ホールにもあったバネで作られた作品が多数飾られていた。
 


ペン立てもバネ!
 

こんなのとか
 

こんなのが
 

たくさん。全部バネ!
  

これもバネ

  
意外というか当然というか、バネ製品なのでぐにゃぐにゃとしていて握れるし、ぶつかっても痛くない。
だけどバネとコマがどう繋がるんだろう? そんな疑問を持ちながらお話を伺う。
 
五光発條は1971(昭和46)年に川崎市高津区宮崎台で創業。1977(昭和52)年に現在地に本社工場を新設した。山梨やタイ、ベトナムなどにも関連会社を展開している。

「うちは量産工場のモノづくりなんですね。横浜が35名、山梨に15名で日本国内には50名ほど社員がいるんですが、50名が食べていくためにはどうしても量産物がないとだめなんですね」と語る村井さん。

家電やスマホなどの中の部品やパチンコの部品、今話題の妖怪ウォ○チのおもちゃの部品となるバネを作っているそうだ。

なかなか表に出ない部分ばかりだが、世間のお子様たちを熱狂させている妖怪ウォ○チの心臓部ともいえそうな部分に、横浜の企業の作った部品が使われていると思うと、なんだか嬉しくなってくる。



「世界コマ大戦」に出場する理由とは



「この先、どうやってウチのような中小企業を盛り上げていこうかとよく考えます。生き残りを考えた時に二つしかなくて、ひとつはまず『うち(五光発條)を知ってもらう』ということで、目立ってなんぼというわけです。もう一つは、『今まで来ていた図面通りの物をいくら作っても仕方が無い』ということ。手掛ける製品や展開するビジネスに更に付加価値をつけていかないと、国内で生き残れない」と村井さん。

そんなことを考えていたところに「コマ大戦」の話が来たのだという。


会社の入口付近にあるコマ大戦の土俵

 
このコマ大戦が開催されるきっかけとなったのが、「元気が無い製造業を元気にしたい」という主催の想いからだったそう。2012(平成24)年2月に「第一回全日本製造業コマ大戦」が開催されたのが最初で、21チームの参加だったという。

まさに五光発條さんの目指す方向性と一致するお話だったので、出場を決めたのだという。

「『モノづくり』をしている人たちって全般的に暗いイメージがあると思うんですけど、実際に暗いんですよ。何故かというと人柄が暗いとかじゃなく、要はお客さんから来る図面が『できて当たり前』なんですよ。だから褒められることがないんです」
 


「納期が遅れたりNGだったりして、叱られることしかない職業になっちゃっていたんですね」

 
だから皆さん、いつの間にか食べていくために仕方なく作っているというようなテンションになってしまっていたのだそうだ。

そんなモノづくりに携わる皆さん。「コマ大戦」に初めて参加する際も、今までが「図面通り」だったために村井さんに材料から形態から何にもないところから「コマを作れ」と言われても、困ってしまったのだという。
 


社内的には微妙な空気が流れたそう

 
「そんな余裕はないのに何言ってるんだ」とか、そんな雰囲気だったそうだ。

しかも初回の参戦を決めた時は、ちょうど2011(平成23)年9月に起きたタイの大洪水で、自社のタイ工場が3メートルほど浸水してしまった時期と重なっていたのだという。

大きな被害は免れたものの、タイ工場の生産分まで徹夜で対応しているところへの「コマ作ってください」だった。

現場からは「冗談じゃない」という空気がありありと伝わってきたが「この『コマ大戦』は出ておかないと後が無い」と感じた村井さんは、困難な時期でもあえて参加することにしたのだという。
 


「やるしかないと思ったんです」と村井さん

 
「コマ大戦」のルールは、コマを投げ合い、負けたら勝った人に自分のコマを取られ、優勝者が全ての参加者のコマを総取りすることになっている。

はじめは嫌でしょうがなくコマを作っていた職人さんたちだったが「いざ参加してみると『負けたら相手に自分のコマが取られる』というシステムが悔しかったようですね」と村井さんは語る。

コマを作るのにかかった時間や金額も、無駄になってしまう。だから一度負けると、何も言わなくても熱くなり、そこから火が点いて今に至るそうだ。
 


「ひとつのコマを作るのに2日~3日はかかります」と岩佐さん

 
材料費だけでも20~30万。それを1個作るわけではなく、試作に試作を重ね、より良い物をいくつも造る。しかもそのコマを作る機械は本来コマ専用のものではなく、本来だったらほかの製品を作って利益を生み出すもの。にもかかわらず、コマ作りに時間を費やすわけなので、その損失分を考えると下手したらコマ1個につき50~100万ほどの価値があるのだ。

「実はまだ今回の大会用のコマができてないんですよ」という岩佐さん。
コマを作りたくてうずうずしているようだ。
ちなみに取材にうかがったこの日は、大会本番の2日前だ。
 


過去大会で使用したという五光発條のコマ

 
単独で一番長い時間まわすという物なら低重心など技術的な対策もできるが、対戦なので相手がいる。
このコマならば必ず勝てるというコマは存在しない上に、右回しか左回しか回転だけでも勝負が全然変わってしまうのだという。

だから「はっけよい」の時に親指が見えているか見えていないかで、どっち回しかということを瞬時に判断しているのだそうだ。もちろん相手のコマの形状や重さなども見ての上でだ。

「最近は前日とかにみんな違う手で違う回し方してみたりしてるんです」と岩佐さん。ただのコマ対戦かと思いきや、奥が深い!

当初はコマの作り手として関わっていた岩佐さんだが、村井さんいわく「実は全国でも3本の指に入るほどのコマ回しの逸材」だというのが最近分かったのだという。

「見て下さいこの指」とご自身の指を差し出す岩佐さん。
 


コマだこができている!

 
右手で8000rpm(rortation per minute:1分間の回転数のこと)出るのだという。普通の人は6000台が出たら「すごい!」と言われる数字なのに、岩佐さんは8000をはじき出すというのだ! 逆回しで7000rpm、左手でも8000rpmというものすごいポテンシャルだ。

岩佐さんの回し方がすごいということに気が付くまで、プレッシャーを受けながら村井さんが回していたのだそうだ。

「優勝者総取りだから、コマを取られちゃうでしょ。それで『あれ、五光発條のコマ、真面目に回すと強いぞ』って噂になってたんですよ。でも回す人がいなかったから、僕が回してたんですよ」と悔しそうな村井さん。
あるとき岩佐さんに任せたところ「ブーン!」と凄い音を立て回ったのだという。
 


コマを回させてもらった。なかなか難しい

 
コマごとに重心や個性があるので、コツは毎回変わるのだという。
しかも土俵の状態(傷一つ)でもコマに影響が出るので、毎回なにかしらドラマが生まれるそうだ。

五光発條は全国大会に過去4回出場し、最高成績は2位。
2015(平成27)年2月に東京国際フォーラムで行われた特別場所では優勝したが、コマ総取りルールではなかったため、ほかのコマを手に入れることができなかったそうだ。
 


優勝の文字がまぶしい特別場所のメダル

 
コマ大戦本選は今回で5回目。初めての世界大戦になるのだという。
「これで外国からの参加者も、コマを取られて熱くなるということを知ってしまいますね」と楽しそうな村井さん。

「いろんな面白い技術にチャレンジしている人たち同士が集まって、新しい物を生み始めているんです」
世界コマ大戦をやっていく中で、現場の子たちが初めて自分の技術やモノづくりが特別なことで、本当に夢と誇りがある、すごい技術だということに気づくのだという。

「何故ならみんなの見ている前ですごいね、わーっという歓声を浴びる。自分たちが作った物に、関係ない人たちがこれだけ熱狂して褒めあえる」と村井さん。
上の人間が敵同士だと思っていても、現場の技術者同士だと分かり合えるので、お互いのコマを称え合っているという。
 


コマ大戦がきっかけでできたという自社製品

 
この世界コマ大戦がきっかけで会社を知ってもらい、仕事面などでも困った時に「ああ、どこそこの○○さんその技術持ってるよ」と分かり合っているそうで、この世界コマ大戦に参加しようという企業さんは何か特別な技術を持っていたり、自社製品を作ろうとしていたりとプラスアルファを持っている会社ばかりなのだという。

自分の業種で当たり前の技術であっても、他業種や技術を持っていない人からしてみればすごいことかもしれない。世界コマ大戦に参加して目立つことにより、今まで知らなかった人たちに五光発條を知ってもらえる。
それがどんどん繋がっていって、ワクワクするようなところへ繋がっていっているのだという。



コマを作る現場とバネ工場を見学させていただいた!
 


こちらが五光発條さんのバネ工場
 

さまざまなバネが作られている
 

こちらが妖怪ウォ○チに入っているバネを作っている機械だ
 

そしてこちらがコマを作っている機械

 
本来はコマ以外の物を作る機械で作っているという。
奥では今回の大会に向けて岩佐さんがコマ造りに取り組んでいた。
 


「掲載は大会後なんですよね? じゃあいいですよ」


秘密の何かをコマに塗っている!


最近では、回すと同時にハネが広がるようなギミックが盛り込まれたコマも増えてきたため、大会前にルールに抵触していないか別室でのチェックもある。大会本部へも「こういうものは大丈夫か」という問い合わせが多くなっているそうだ。
今回の世界コマ大戦本番でも、観客を驚かせるようなギミックがあるのだろうか。
そう考えると、なんだかワクワクしてくる。本番が楽しみだ!