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【横浜の名建築】横浜港大さん橋国際客船ターミナル

ココがキニナル!

横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第3回は、横浜港大さん橋国際客船ターミナル。曲面を多用した斬新でユニークなデザインは緻密な計算の上に設計されていた。

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ライター:吉澤 由美子

横浜には歴史ある名建築が数々あるが、そうした古いものを残すだけでなく、時代ごとに街の顔となるような名建築が新しく加わっている。2002年12月1日にグランドオープンした横浜港大さん橋客船ターミナルもそのひとつ。
 


「くじらのせなか」という愛称を持つ屋上広場が下の階層と交差しながらつながる


長さ約480m、幅100m、3層の大さん橋は、壁や床が曲面で融合し、スロープでゆるやかに各層をつないだ斬新な構造の建築物だ。

案内してくれたのは、大さん橋指定管理者である相鉄企業株式会社の竹田左保利さん。
 


今年ホール担当に配属された、笑顔がキュートな竹田さん




横浜が世界有数の港として発展する礎となった明治半ばの鉄桟橋



横浜に大きな船が接岸できる桟橋ができたのは、1894(明治27)年。
現在の大さん橋の場所に、イギリス人技師H.S.パーマーの設計によって鉄桟橋が完成した。

輸入した巨大な鉄らせん杭(スクリューパイル)を埋め込んだ、当時最先端のこの桟橋は外国航路の貨客船の主要拠点となる。
 


大さん橋手前のビル脇に残されている鉄らせん杭


1923(大正12)年に関東大震災で桟橋部分が陥没し、上屋を焼失したものの、1925(大正14)年には復旧工事が竣工。脚柱685本中106本など一部の部材を再利用して改修され、その後も拡張工事が行われてきた。

補修による対応が限界に達した1993年には代替ターミナルが完成し、古い桟橋はその役目を終え撤去された。

そして新ターミナルは、「庭港(にわみなと)」というコンセプトのもと、1994~1995年、国際デザインコンペ(国際建築設計競技)により、船客だけでなく市民にも愛されるデザインを広く募集する運びとなった。
 


ウッドデッキの中に芝生があることで、丘の上にいるような気持ちにさせる




応募の半数近くが海外から。世界的にも注目された国際コンペ



このコンペでは、世界41ヵ国から660作品の応募があり、日本で行われた国際コンペとして過去最高の規模となった。
その中で最優秀に輝いたのが、イギリス在住の建築家、アレハンドロ・ザエラ・ポロとファッシド・ムサヴィ両氏の作品。
 


単純なマップだが、曲面がうねりながらつながっている回遊式の構造


受賞したデザイナーふたりが30代で、フルCGのコンピューターによる設計、そしてそのユニークで革新的でありながら機能や工法、快適性にも配慮した作品は大きな話題となった。

このデザインを実現するため、デザイナーと設計チームが基本設計を何度も練り直し、実施設計が2000年3月に完成。
ここでようやく、新ターミナル新築工事が着工され、現在の大さん橋は2002年に完成する。



インパクトあるデザインと多目的に使えるフレキシビリティ


 


空間全体がつながっているため、高低差があっても自然な動線で移動可能


大さん橋は、遠回りしなければいけない場所もあるが、景色を楽しみながら散策するのにぴったりな建物だ。

印象的な床や壁の木材は、ブラジル原産の「イペ(IPE)」という木。
海風に強く、水に沈むほど密度が高く、歳月が経っても変形しにくい、硬い材料だ。
 


斜めにカットされた木材を組み合わせて美しいカーブが作られている


見学ツアーでは、イペのサンプルを手に持つことができる。実際に手にしたときの重みには、ちょっとビックリする。
 


室内外で色がかなり違うが、外の木材は自然の風雨によって色がさめたもの


この木は残念なことにトゲが多い。
横浜市では、このトゲによる被害を軽減するため、毎年さまざまな方策を試しているとのこと。
 


エントランスにも「トゲ注意」の看板がある


デッキに整然と並んだ円柱は、緊急車両などが通る場所を示す目印。
円柱より海寄りの場所は車の走行が可能だ。
 


海側には強度を上げるため分厚い木材が使われていて、強く踏むと音の違いがわかる