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68年の歴史に幕!? 綱島の歴史ある温泉施設「東京園」閉店の経緯とは?

ココがキニナル!

綱島の温泉「東京園」が急遽閉館が決まったようです。4年後の営業再開を目指すという噂も。地下鉄新駅の影響?毎日通ってるお年寄りはどうなる?(布団から出たくないさん/輪太郎さん/スさん他多数のキニナル)

はまれぽ調査結果!

多くの人から愛されてきた東京園は、新駅建設のため5月19日(火)をもってひとまず休業。その後、仮店舗での営業の可能性も告知されている。

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ライター:松崎 辰彦

東京園が閉店する!?



「綱島にある東京園が閉店する──」
こんな一報が入ってきた。
これは捨ておけない。
 


綱島最後の温泉、東京園


かつて「東京の奥座敷」として多くの温泉宿を擁していた綱島。しかし、近年は駅から歩いてわずかの場所にある温泉施設「東京園」のみが昔日の温泉街の雰囲気を伝えていた。広い浴場に、演芸ステージのある大広間。老若男女、世代を超えた人びとが裸のつきあいをして、心身の疲れを癒していた。

はまれぽでも『かつて綱島は温泉町として有名だったって本当!?』など、いくつかの記事で、この昭和の薫り漂う綱島最後の温泉を取り上げていた。その黒いラジウム泉は家庭の風呂では味わえない、街の浴場ならではの心身のリラックスをもたらすものだった。

日本の入浴文化を今に伝える貴重な場、東京園。そのかけがえのない癒しの楽園が閉鎖されてしまうとは、こうしてはいられない。あの赤い煙突を目指し、取材に急いだ。
 


東京園のシンボル 赤い煙突




中村社長の話



「まだ話し合っている最中なんです。少なくとも17日まではオープンしています(注・実際には19日まで営業した)。お客さんは大変心配していますよ。いずれ再開するにしても、もし工事でお湯が出なくなったらどうなるのか。でも、廃業は考えていません」
急な取材を申し込んだ当方に、東京園の中村ゆう子社長は淡々と説明する。
 


東京園の庭を名残惜しく眺める中村ゆう子社長


東京園がここ綱島にオープンしたのは戦後間もない1947(昭和22)年。くわしくははまれぽ記事『歴史とともに、その顔を大きく変貌させてきた街。はま旅Vol.61「綱島編」』を参照されたいが、時代の移り変わりで温泉施設が次々と消えるなか、東京園は都会人の憩いの場として孤塁(こるい)を守ってきた。
 


東京園の内部。お湯が黒い


東京園の雰囲気は平成生まれの若い世代をも惹きつけ、今では来場者の7割が若者であるとのこと。

「土日はすごいですよ。結婚披露宴はあるわ、イベントやライブや落語はあるわ、この前なんかAKBに入る予定という女の子が7人来て、1時間歌って踊って、男の子たちがペンライトをかざしていました」
平成生まれの子が“昭和って癒されるのね・・・”というんですよ、と微笑む中村社長。
時代が移り変わっても、人がコミュニケーションを求める気持ちに変わりはない。
 


 

 

多くの人を迎えてきた


「今回のことで、20年も30年も通っている、90歳を超えたお客さんは泣いていますよ。
その歳になるとほかの場所に行けないから、ここだけが楽しみなんですね。そういう方は親の代からのお付き合いで、来ていただけなくなるのが一番悲しいですね」
東京園休業のニュースは、馴染みのお客さんにとって大きな衝撃だったようだ。とくに何十年も通い続けた人にとって、この温泉はもうかけがえのない人生の一部なのである。



鉄道建設による休業



東京園休業は、相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線鉄道計画によるものである(はまれぽでも過去に『相鉄・JR直通線開業事業では、どんな工事が行われている?』『相鉄・JR直通線と相鉄・東横線直通線開通事業の遅延状況と今後の予定は?』などの記事で、このプロジェクトの概要を伝えてきた)。
 


相鉄線・JR、相鉄線・東急線が直結する


相鉄線が西谷駅から羽沢駅・新横浜駅・日吉駅といった各駅に延伸し、都心とダイレクトに結ばれるという記事は、大きな反響を呼んだ。
 


「都市鉄道利便事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線」のサイトより引用


この大きな鉄道計画には、いくつかの新駅建設が盛り込まれていて、その一つが綱島の「新綱島駅」(仮称)であることも公表されている。

その地下鉄「新綱島駅」のほぼ真上にあるのが、東京園なのである。
 


赤と緑の線で囲われているのが新綱島駅。ピンクの部分が東京園。一部分が重なる
(画像提供:鉄道・運輸機構)


新綱島駅建設のためにはどうしても東京園の一部建物を取り壊し、敷地内を工事現場とする必要がある。そのため、東京園の今まで通りの営業は不可能になった。

「工期は4年。1日に最大240台のミキサー車が入るそうです」中村社長はいう。
 


新綱島駅を建設中(画像提供:鉄道・運輸機構)


今回の鉄道工事は、2012年(平成24年)に施工認可を受けたとのこと。最初の地元説明会は同時期ごろに開催され、その後も10回近く説明の場が持たれたという。当初はもちろん、地元の人びとは驚き、主催側に多くの質問を浴びせた。

東京園も存続の道を探り、何度も話し合いを行った。東京園のファンも署名1万1000人分を集め、横浜市に提出したが、決定は覆らなかった。

工事を推進している鉄道・運輸機構の工事第二部工事第五課長の立石和秀氏は説明する。
「工事計画を決定するときに、工事期間中に影響が出ますよということは、お話していました。経営者の方のご理解もいただき、工事方法も若干変更しました」

東京園の設備に影響しない方法で、地上から掘削する方法を一部採用したという。
工事期間は4年だが「店舗の完全休業は6~7ヶ月程度は必要。その後は仮店舗での営業が可能」と、これまでの話し合いをふまえた見通しを述べる。
今回の鉄道建設で、神奈川東部方面の交通の利便性が向上すると言明する。
 


図を使って説明する


「今まで相鉄線の利用者は、都心に行くにしてもまずは横浜駅に出る必要がありましたが、このたびの直通線で横浜駅を経由しなくても、乗換なしで都心に行けるようになります。都市部に職場があり、ほかの場所に住宅地を求めておられる方などにとって、大きな選択肢の広がりになると思います」
そのためにも、新綱島駅の建設にご理解いただきたいという。
 


新綱島駅を建設中。巨大な工事現場だが、5㎜単位の精度が要求されるという
(画像提供:鉄道・運輸機構)
 

新綱島駅の断面図(計画中)
(画像提供:鉄道・運輸機構)


「東京園様が綱島の大切な文化であることは、私どももしっかり認識しています。駅の工事期間中は今のような形で使えなくなることで、非常に迷惑をおかけすることになると思っております。しかし、駅を造った後にまた、新しい東京園や、新しい綱島の憩いの場を作るということで、ご理解願いたいと考えています」

「私も東京園様のお湯に浸からせていただきました」と立石課長。建設側も、さまざまな思いとともに事業を進めていることが感じられる。