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横浜では流れることのない防災無線が緑区中山町で流れている? 『ふるさと』のメロディの正体は?

ココがキニナル!

緑区中山周辺で5時になると「ふるさと」の音楽が流れています。去年までは全くなかったのに、いつから流れ始めて、どこから流れていて、何のために流しているのかとても気になります。(キョウさん/Zoo3さん)

はまれぽ調査結果!

中山町の自治会が2014年から独自に行っている防災無線による放送。音楽は機器の状態チェックと子どもたちへ帰宅を促すために流している。

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ライター:福原 麻実

防災無線から聞こえる『夕焼け小焼け』などの童謡が午後5時の合図という地域は多いだろう。筆者が昔住んでいたのは大阪の片田舎だが、そこでも同様だった。
それが横浜では流れていない。はまれぽでは以前、その理由を調査している。

しかし最近、横浜市にある一地域では午後5時に音楽が流れているという。
いつから始まったのか、何のために流しているのか? 早速調査すべく、投稿にあった中山へ!



中山町でお話を伺う!



実際、午後5時に『ふるさと』が流れているのか?
買い物のために駅前に来ていた、大野さん(写真はNG)という女性にうかがうと「毎日流れていますよ」とおっしゃった。
 


JR横浜線中山駅前

 
このような放送については「実家の埼玉でも夕方に『夕焼け小焼け』が流れていたので、変わったこととは思っていないです。遊びに行く子どもに『5時になったら帰っておいで』と言っているお母さんたちは多いと思うんですけど『ふるさと』がその合図になるので助かってます」と、役立っているようだ。

その『ふるさと』はどこから流れてきているのでしょうか? との質問に、大野さんは「中山は公園とかに防災無線のスピーカーがあるんですよ」と教えてくださった。



中山町自治会への取材



「中山は」防災無線を設置しているという。防災無線が、横浜市や緑区ではなく、中山町独自のものということだろうか? 何故、市や区ではなく、自治会が防災無線を持っているのだろう?

お話を聞かせてくださったのは、中山町自治会会長の相原磯光(あいはら・いそみつ)さん、副会長の齋藤純男(さいとう・よしお)さんと同じく副会長の齋藤宏和(さいとう・ひろかず)さん。
 


中山町会館。ここに放送システムがある

 
―午後5時に「ふるさと」が流れているのはなぜでしょうか?
「子どもたちへの帰宅を促し、防災無線からシステムの点検を兼ねて流しています。冬場は午後4時です」

―防災無線はいつからあるのでしょうか?
「最初に防災無線を設置しようという話が出たのは10年くらい前。しかし話は出たものの、しばらくは進まず、実際にプロジェクトが動き出したのは7年前でしょうか。その後、2011(平成23)年の東日本大震災で必要性を再認識し計画は加速、2014(平成26)年4月から運用が始まりました」

―防災無線から、ほかに放送されることがらはあるのでしょうか?
「日常では自治会行事や啓発活動の案内放送、緊急時では、警察、消防、区役所、学校からの依頼による放送、それから災害発生時の放送です」


どういった経緯で、自治会で防災無線を持つことになったのか、そう質問すると、相原さんたちは、自治会館内にある中山町の立体図面を見せてくださった。
 


これが中山町の町域図。東西にかなり広い

 
中山町にはおよそ5300世帯、約1万2000人が暮らしている。大規模な町なのだ。

この町に暮らす住民の安心・安全のために、素早い情報の伝達を目指した結果が防災無線であった。

防災無線の音声は、中山町のどのくらいの範囲をカバーしているのかと尋ねると「放送塔は7基あって中山町のほぼ全域で聞こえます」とのこと。
 


これは中山町会館の敷地内にある放送塔

 
ちょうど取材時に『ふるさと』が流れた。オルゴールのような音だ。この曲は防災無線の機械にセットされている8曲の中から選ばれたのだという。

理由を尋ねると「ほかの曲と違って25~26秒と、短いんですよ」とのこと。音楽を流すことについて、住民に配慮した結果だったのだ。

お願いして放送機器を見せていただいた。
まずは「システム管理室」にある基地局。この部屋は会館の一角に、住民たちが手作業で作ったのだという。
 


この手作りの空間から、1万2000人に呼びかけるのだ

 
写真中央にあるパソコンが管理画面。放送塔の異常の把握や、どの放送塔から放送するのかを選択するなどの操作ができる。
 


各放送塔の状態はこのように表示される

 
そのパソコンの右側にある無線機と、左側にあるノートパソコンを持ち出せば、基地局としての機能をほかの拠点に移すことが可能になる。この無線機は各放送塔にある子局との交信が可能な親局でもあるのだ。

このほか、予備バッテリーもあり、もし停電してしまっても24時間待機できるとのこと。
 


この昔の携帯電話みたいな機械で、放送塔の子局と交信する

 
子局も見せていただいた。子局の機械類は、放送塔の下部に設置されたボックスの中に収められている。
 


親局と交信するための機械や、マイクなどが入っている

 
この子局では、親局と交信するだけでなく、その場にある放送塔から放送することもできるという。目の前で緊急事態が発生した時、親局と交信し、そこから放送をしていたのでは間に合わないこともあるためだ。
 


ボックスの扉には子どもたちの標語を入れていることもあるそうだ

 
これらの機器類だけでも「緊急に備える」姿勢を強く感じられたが、特筆すべきは携帯機の存在だろう。

携帯機は、放送システムと同じくデジタルMCA方式。「絶対に混線しない」ために導入されたのだという。
災害発生などの緊急時には、これを携えて車で町内の状況を確認し、システム管理室と情報をリアルタイムで共有するのだ。
 


これが携帯機。中山町には9台ある

 
これら全ての機器の導入費用は約2800万円。市もしくは区からの助成はあったのか? そう尋ねると、相原さんは「自治会の内部留保で賄った」とおっしゃった。

すると、助成は一切なかったのですか? と聞くと「7年前に26名でプロジェクトを立ち上げ、500万円の助成が得られる横浜市の『まち普請事業』にエントリーしたんですよ。エントリーは9件、そこで一次審査は通過したんですが、二次では落ちてしまいました。『コミュニティ(共通点をもった集まり)がない』という理由で」

コミュニティがない? 私にはその回答の意味が全く分からなかった。そこで実際にそれを聞いたときどう思われたのですか? と尋ねてみた。
「市長宛てに質問しようとしたのですがね、市の方から『選考するのは市の人間ではなく、外郭団体だから止めてほしい』と」
 


都市整備局が推進する「まち普請事業」

 
その後、中山町自治会では防災無線システムの見積もりを3社から取り直した。そして交渉の末いくらか価格を抑え、住民と話し合いを重ね、2013(平成26)年4月にこれらの放送システムの導入に至ったのだ。