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消滅可能性都市、三浦市はどうする? 2週間お試しで三浦市に泊まれる「トライアルステイ」とは?

ココがキニナル!

2週間で500円程度でお試し移住ができる三浦市の「トライアルステイ」。空家を利用し移住のお試しをする制度のようだが、東洋大学が関係している。どんな物件で、制度の狙いなどがキニナル。(まさしさん)

はまれぽ調査結果!

空家を2週間貸し出し! 利用料は退去時返金額を含め4万円。東洋大学、東京R不動産と人口減少問題に直面している三浦市の新たな取り組み。

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ライター:やまだ ひさえ

三浦半島の先端に位置する三浦市の主な産業は、観光、農業、漁業。筆者の生まれ育った場所だ。

昔からよくリゾート地から通って来ているとか、旅番組で紹介される場所に住んでいるとか言われてきたが、京浜急行を利用すれば品川まで約1時間。都心にも十分に通勤できる圏内だ。実際、三浦市内から横浜や都内まで通勤や通学している人は多い。
 


三浦半島の先端にある

 


県内の市でただ一つの消滅可能性都市



今回、キニナルの取材を始めて驚いたことがある。
それは三浦市が神奈川県内の市の中で唯一の「消滅可能性都市」ということだ。
消滅可能性都市というのはどういうものなのか。そしてトライアルステイの詳細を聞くために三浦市役所を訪ねた。
 


三崎にある三浦市役所

 
吉田英男(よしだ・ひでお)三浦市長自ら、トライアルステイと消滅可能性都市について話を聞かせてくれた。
 


吉田英男三浦市長

 
消滅可能性都市とは、元総務大臣の増田寛也(ますだ・ひろや)氏を中心とした民間の有識者でつくる「日本創生会議」が2014(平成26)年に発表したもの。出産の中心となる20~30歳代の若年女性の人口が、2010~2040年の間に推計で5割以下になる896の自治体名をあげている。

神奈川県では、三浦市、二宮町、大井町、松田町、山北町、箱根町、真鶴町、湯河原町、清川村の1市7町1村があげられている。

吉田市長は、三浦市内から通勤しやすい横須賀市にあった大手企業の撤退による職場環境の変化が、若い世代の市外への流出という人口構成のアンバランスを生んだ一因だと語る。
実際、2000(平成12)年には、関東自動車の深浦工場(横須賀市)が、2003(平成15)年には日産自動車の久里浜工場(横須賀市)が相次いで閉鎖している。
 


京急の終点三崎口駅。通勤圏内にある職場環境が大きく変化している

 
加えて、三浦市ではこの10年で人口そのものが1割減。2014(平成26)年1年間の人口減少率は、1.57%という厳しい状態に陥っている。
例えば、横浜市では2015(平成27)年9月1日現在の人口は、371万9589人。これは、対前年同期比9862人増。2019年の373万6000人のピークまで年々増加するといわれている状況とは大きな違いだ。

雇用の創出など、市も状況を打破するためにさまざまな対策を行ってきたが、抜本的な改善策を見いだせていないのが現状だ。

その打開策として期待されているのが、三浦市では初の試みとなる「トライアルステイ」だ。



人口減少抑制事業としての「トライアルステイ」



トライアルステイは、人口減少が始まっている横須賀・三浦地域の活性化を目的に、人口の増加や定住の促進、地域の魅力アップを図るために神奈川県が行った「平成27年度地方創生大学連携事業」で採択された提案だ。

中心となって事業を提案したのは、東洋大学PPP研究センターの難波悠(なんば・ゆう)シニアスタッフだ。
 


日本初のPPP専門の研究センターとして設立(東洋大学HPより)

 
PPPとは、Public/Private Partnership(パブリック/プライベートパートナーシップ)の略。地域の抱える問題を官民市民協働で解決することを目指す研究のことだ。

東洋大学のPPP研究センターは、2006(平成18)年、日本で初めてPPPを研究する専門機関として設立された。

難波シニアスタッフは、2009(平成21)年から三崎漁港二町谷(ふたまちや)地区の公有地の活用方法を研究してきた。三浦市の経済に関する造詣も深く、トライアルステイでも重要な役目を担っている。
 


一番左端の女性が難波シニアスタッフ

 
募集などの実務を行っているのが「東京R不動産」だ。
全国規模で不動産事業を展開している東京R不動産は、PPP研究センターの修了生も事業に携わっており、また、募集方法など不動産情報発信に独自のノウハウを持っていることから協力を得ることになった。
 


トライアルステイの応募ページ(東京R不動産HPより)


東洋大学と東京R不動産、そして三浦市が注目したのが、市内に点在する空家だ。

総務省統計局が出している2013(平成25)年の住宅土地統計調査によると、三浦市の空家率は17.4%で県の平均11.2%を大きく上回っている。これは、高齢化や前述の若年層の都市部への流出が加速したことで高まったと言われている。
 


市内でも空家が目立ってきている

 
この空家を活用し、お試し居住をしてもうらうことで、三浦市の魅力を知ってもらい、移住へと繋げるのが、トライアルステイの目的だ。

1週間では旅行気分で終わってしまう可能性があるが、2週間だと生活したという実感がわいてくる日数だという。

会社に行く。学校に行く。家事をするといった現在の生活スタイルを維持しながら、三崎や油壺、城ヶ島などの観光地にも気軽に行けるし、マリンスポーツやジョギングなどの趣味を楽しむこともできる。トライアルステイの期間を最長で2週間に設定してあるのは、そのためだ。

難波シニアスタッフによると、海の近くに住みたいと思っている人は多い。しかし、理想と現実は違う。関心はあるが不安に思っている人は大勢いる。
そういう人こそ、今回のトライアルステイで実際の生活を試してほしいと強調する。
 


自宅の目の前が海というもの三浦市では珍しくない

 


トライアルステイとはどんな内容か



三浦市初の試みであるトライアルステイは、どのように行われるのか。
プロジェクトに携わってきた三浦市役所政策部の尾山滋(おやま・しげる)さんと小沼萌絵(こぬま・もえ)さんに話を聞いた。
 


尾山さん(左)と小沼さん

 
市では、トライアルステイ実施に先立ち、市民に空家の提供を求め、三浦市のためになるなら、と10数軒の空家が提供された。

今回のトライアルステイでは7軒の空家が使われるが、選定にあたっては、三浦市の地域性を生かし、人気の高い海の近くの家が選ばれている。

  

三浦海岸、小網代、三崎など海に近い場所が選ばれている
 

トライアルステイの日程は、3回にわけて行われる。
 


日程は希望を出すことができる

 
期間中に1回、三浦市を知ってもらうためのイベントが開催される。
市内の見学ツアーや市民との交流などが計画されているが、まだ具体的な内容は決まっていない。

城ヶ島や小網代(こあじろ)の森、油壺など三浦市には人気の観光スポットも多く、楽しいイベントを現在、計画中だ。
 


北原白秋の詩でも知られる城ヶ島(提供:三浦市役所)
 

マリーナやマリンパークがある油壺(提供:三浦市役所)

 
今回の対象は、三浦市への移住を検討している方。ただし、未成年だけの応募はできない。定員は、各回7組の予定で、全体で20組ほどになると考えられている。

キニナルの投稿にあった「2週間で500円程度」だが、事務手数料や保証料、火災保険料などの諸経費は必要になるが、物件自体の賃貸料はかからない。
報道発表時に内容が確定していなかったために、誤った情報が独り歩きしたとのことだ。
 


トライアルステイに必要になる経費

 
生活するうえでキニナルものに家電があるが、冷蔵庫や電子レンジなど、必要な最低限の家電は、用意されている。ただ、寝具やリネン類、タオルなどは衛生上の問題があり、保健所からの要請で各自で用意することになっている。

また、三浦市内は交通の便が悪い地域もあるので、車や自転車などを用意したほうがいいかもしれない。

参加者の募集は、2015(平成27)年9月30日(水)から東京R不動産のウェブページで始まっている。締め切りは、10月20日(火)だ。
 


トライアルステイのアンケートページ(東京R不動産HPより)

 
応募者が多数の場合は、アンケートの回答内容によって決定される。
選定基準は公になっていないが、移住の意思の有無や、トライアルステイ自体の目的などが加味される可能性は高そうだ。

また、どの物件になるかも、アンケートの内容を踏まえ三浦市、東洋大学、東京R不動産が協議し、決定する。
取材時点で、既に40件以上の応募があり、トライアルステイへの期待と思いが寄せられている。
 


アンケートに寄せられたトライアルステイへの思い

 
子育て世代からシニア世代まで、年代もライフスタイルもさまざまな人たちが、三浦市での生活を楽しみにしている。