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上星川の街角、シールまみれの「謎アンケート」の正体は?

ココがキニナル!

上星川商店街に、ここ数カ月「上星川にパン屋ができたらいいと思う人はシールを貼ってください」という謎の張り紙が掲示されています。ほかの選択肢もなく何かの調査ではないようですが一体何?(食物繊維さん)

はまれぽ調査結果!

上星川商店街を活性化するプロジェクトの第1歩として美味しいパン屋さんを誘致するため、地域の人の声を聞くことを目的としたアンケートだった!

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ライター:大和田 敏子

上星川にパン屋ができたらいいと思う人はシールを貼ってください!?
シールを貼るだけなんて、かなりざっくりしたアンケートのように思えるが、一体、誰が何のために始めたものなのだろう。
まずは、現地に行って確かめてみることにした。

相鉄線上星川駅を出てすぐ・・・

 

 案内にしたがって上星川商店街へ


 目指す場所は、お花屋さんの向かいにあった


 シールがぎっしり貼ってある壁を発見!

 
よく見ると、紙は柱部分の2面にわたっている。片側(上の写真左)には・・・

 

 「上星川に美味しいパン屋さんがあったらうれしいですか?」と


もう1面、店の正面から見える側には・・・

 

 「上星川駅近に小児科と皮膚(ひふ)科があったらうれしいですか?」とあり・・・
 

 その下にはこんなポスターが!?


状況は投稿時から変化しているのかも知れない。
投稿にあった「パン屋さんアンケート」が終わり、パン屋さんができることが決まったらしい。そして、新たに「小児科&皮ふ科アンケート」が始まっているようだ。
詳細は不明だが、とりあえず付近を歩く人に話を聞いた。

 

 「アンケートには気づいてなかったけど、パン屋さんができたらうれしい!」


小児科と皮ふ科については、「孫たちも別のところに住んでいるので、特に必要性は感じない」とのこと。

 

 「パン屋さんができたらいいなと思ってシールを貼りました」


「皮ふ科はかかりつけのところがあるので、あまり興味がない」と話してくれた。
5~6人に話を伺ったが、ほとんどがこのアンケートを気に留めていて、シールを貼った人は半数ほど。

 

 取材中、シールを貼る子どももいた

 
しかし、なかには「何をやっているのかよく分からない。この商店街にない種類の店について聞いたら、ほしいと言うに決まっている。もっとほかのやり方を考えた方がいい」と話す方もいた。
後日、詳細を伺うために、このアンケートを実施しているグループ「上星川を考える会(仮)」に話を伺った。ちなみに、正式名はもっとカッコイイ団体名にと考えながら、現在のところ「(仮)」のまま来ているそうだ。


 

「上星川を考える会(仮)」結成の経緯は?

 
 
結成のきっかけを話してくれたのは、株式会社モリヤマHD事業部、チーフアドバイザーの荒川祐輔(あらかわ・ゆうすけ)さん。

 

 荒川さんは前職でも、地域に関わる仕事に就いていたという。


株式会社モリヤマは60年以上、上星川駅前で捺染工場を営んできたが、11年前に捺染事業を廃業して不動産業にシフトし、現在は主力事業として「満天の湯」を運営している。

 

 「満天の湯」は2005(平成17)年にオープン


開業から10年を経て、3代目である現社長は、今後の発展のためには、自社だけに集客力があるより「上星川っておもしろい街だよね、その中に満天の湯もある」という形になった方が良いと考えるようになったといい、荒川さんも街の活性化に向けて動き始めた。

 

 荒川さんは、2015年10月ころから商店街の人たちに声をかけて歩いた


そこで出会ったのが、オーダーメイドの家具・雑貨を販売する「真心MAGOKORO」のオープン準備中だった、株式会社VMD JAPANの代表取締役、天野進一(あまの・しんいち)さん。

 

 天野さんの本業はホームページ作成やウェブ解析など


2014(平成26)年から上星川に暮らす天野さんも、生まれたばかりの子どものためにも、地元を盛り上げたいと考えていた。荒川さんと意気投合し、一緒にやっていこうということになったという。

 

 実はシールが貼ってあったのは天野さんが運営する「真心(MAGOKORO)」(写真左)だった


荒川さんは、もともと知人だった、一級建築事務所「秋山立花」の代表で横浜国立大学常勤講師でもある秋山怜史(あきやま・さとし)さんにも相談を持ちかけた。

 

 秋山さんは、全国各地の地域の街づくりなどの情報に精通している


大学で街づくりに関連した授業を持っていることもあり、秋山さんも上星川の活性化に関心を持ち、一緒にやっていこうということになったそうだ。


 

パン屋さんアンケートの理由。 街の活性化への第1歩に


 
3人は、2015(平成27)年12月から月に1回勉強会を行うことにした。
事業者の高齢化、若い世代の商店街への無関心などの問題が挙がる中、「商店街は魅力があって毎日行きたくなることが大事!」という話になり、真っ先に天野さんから出たのが「パン屋さんがほしい!」という意見。天野家の家族会議では、毎晩のように「パン屋さんができたらいいよね」という話が出ていたそうで、これは天野家だけの希望ではないだろうということに。

 

 そこで、美味しいパン屋さん誘致プロジェクトスタート!


この時点では開店への道筋はできておらず、とりあえず、地元の人たちがいかにパン屋さんをほしいのか知ろうと始めたのがキニナルに投稿があったアンケートだった。ついでに、パン屋さんをやりたい人を呼び込もうと・・・

 

 パン屋さんを開店する人も募集! 街ぐるみで支援できる環境があることも明記


サポートできる人・会社などの裏付けもあり、パン屋さん経営のノウハウに関しても、実際に開店している店を視察し、アドバイザーになってもらえるようにするなど、環境を整えていた。

 

 シールを貼るだけというシンプルな方法でアンケート


上星川に住み、この商店街を通る人に対するアンケートなので、インターネットは適さないし、年配の方や小さい子どももシールを貼るだけで、意思を示すことができる。また、パン屋さんがほしくないと考える人は貼らなければいいだけなので、シンプルに“パン屋さんを必要とする人”の数が把握できると考えたため、このアンケート形式を採用した。

 

 アンケートは、「真心」前以外に、駅前の相鉄ローゼンにも設置


「狙いは、直接、街の人の意見を聞くこと。そのきっかけとして、アンケートがあった。誘致の際に“パン屋さんを必要とする人”がこれだけいると分かれば、開業できると思ってもらえる。“何をやっているのか分からない”と言われたことも、大切な意見として受け止め、街の人たちに理解してもらえるように進めていきたい」と天野さんは言う。

 

 積み木のヤスリ掛けなどの作業をあえて店の外で行い街の人と話をした

 
パン屋さんの話以外にも「カフェがあったらうれしい」「子育て世代が集まる場所がない」といった声をたくさん聞くことができたそうだ。また、周辺に若い世代が多く住むマンションもあることから、人通りは決して少なくないと感じたという。

2016年2月3日のアンケート開始から2週間ほどで2名がパン屋さんをやりたいと来店した。候補者と話をし、想いをともにして一緒にやっていける方ということで、そのうち1人を決定。パン屋さんを誘致する土地を貸してくれる可能性のある人も出てきており、実現に向けた話が進んでいた。

 

 4月にはシールが1000枚を超え、こちらのアンケートは終了


その後、土地のオーナーさんにも概ね承諾をもらい、約19坪の土地にビルを建て、1階をパン屋さん、2~3階を医療機関に、屋上を地域のイベントなどに活用できるスペースにしようという方向性が決まっていった。2016年12月着工、2017年8月オープンの予定で進めているという。

 

 イメージイラスト。人と人がつながる場にという想い


ここまで話を伺って、取材時に貼られていた「小児科&皮ふ科アンケート」のアンケートは、このビルに入る医療機関に関して、地域の声を聞くものだったと分かった。
4月からは横浜国立大学の学生5名が、このプロジェクトに参加。秋山さんが受け持っている「都市生活デザインスタジオ」という授業の一環としての参加だという。

 

 学生たちもミーティングに参加し、上星川について一緒に考えている


「地縁のない若い人たちが入ることで街が活性化するという意味もあるし、学生の目から上星川を見て、どういった魅力や意見が出てくるか楽しみ」と秋山さんは話す。また、「卒業後、地域の行政などの仕事に就く学生も多い。地域の課題解決を体験している子どもが、そうした職に就くことは地域にとってプラスになる」と学生たちの将来への期待も語った。