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ココがキニナル!

元町にある「大木ハム」がソーセージ発祥の地と聞いたんですが、本当ですか?たまに行列もしているし、どんなお肉屋さんなのかもキニナル(ボンレスさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

「大木ハム」の創業者・大木市蔵が日本にドイツ式加工食肉を広めた人物。現在も創業者の意思を受け継いで生産されていた

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2016年07月12日

ライター:楪 ゆう子

「大木ハム」の魅力と歴史に迫る

「ソーセージ」といえば「ドイツ」を思い浮かべる人が多いだろう。

それが、いつ、どうやって日本に渡ったのか? そして横浜を「日本のソーセージ発祥の地」とする根拠は?
 


今では日本でも当たり前の食べものとなったソーセージ


いろいろキニナルので、さっそく元町の「大木ハム」に向かった。正式な店名は「大木のハムとソーセージ」で、古くからある“ハマっ子おすすめの名店”とか。
 


元町・中華街駅下車 徒歩10分、JR石川町駅下車 徒歩8分ほど


1920(大正9)年にこの地で店をかまえてから、2016(平成28)年でナント創業96年。現在の店主は、大木さんではなく3代目の立花哲男(たちばな・てつお)さん(67︎歳)。写真掲載NGのため、いぶし銀のお姿をお見せできず残念だが、訪問取材に快く応じてくれた。
 


レトロな黄色い看板と店頭に止めてあるワンボックスカーが目印


23種類ものハム・ベーコン・ソーセージが


ちょうど店頭に入ってきた常連らしき奥様のイチオシは「手造りベーコン」。「スモークが効いていて、すごく美味しいのよ! ここで買うとその場でスライスしてくれるから、なおさらね」とのこと。

その場でスライス? オーダーが入ると、立花さんはガラスケースから大きなベーコンの塊を取り出した。
 


ミートスライサーでベーコンブロックをスライス


あたり一面にベーコンの香りが広がる(100グラム389円)


「加工肉は切りたてが一番おいしいんだよ。切ってから時間が経つと、どうしても風味が飛んじゃうからね」と立花さん。

機材にもこだわりがあり、店にあるミートスライサーは2台ともヨーロッパ製の大変高価なものとのこと。根っからの職人の立花さんは、生肉の解体作業も業者任せにせず、毎日自ら行っている。
 


歴史を感じさせる厨房


店で出している加工肉は、そのほとんどが宮城県にある工房から取り寄せているが、「焼き豚」「ベークドハム」「コンビーフ」「ローストビーフ」は立花さんが店で調理したもの。
 


焼き林檎が乗ったベークドハム(100グラム596円)


絶品と名高い手作りコンビーフ(100グラム500円)


ローストビーフ(100グラム690円)

  
特筆すべきは、毎日夕方までには売り切れてしまうという一番人気の「コンビーフ」!

「まぁ、食べてごらん」と立花さんがミートスライサーで塊から薄く切り分けてくれたのはこれ。
 


熟成させた生肉かしっとりしたハムのよう

 
こ、これがコンビーフ!? おいしすぎる!

 

コンビーフの概念を完全に覆されることうけあいである

 
口に入れたとたん、香りが鼻から上がって眼を抜け、全身が濃厚な牛脂の香りに包まれる。噛むとハムよりもずっと柔らかく上等な肉が一瞬でほぐれて、脂と一緒に舌の上でとろけてしまった。

作り方は、牛もも肉の塊を立花さんオリジナルによる「門外不出の漬け込み液」で3週間ほど漬け込み、中まで染み込ませた上で、2時間かけてボイル。
 


コンビーフも塊から切り分けている

 
遠く長野や伊豆からわざわざ買い求めに来るファンがいるほどの逸品なのである。

ここで、立花さんに、いよいよ本題の質問を。

「大木ハム」がソーセージを製造・販売した日本で最初のお店だというのは本当ですか?
 


あらびきソーセージ(100グラム268円)

 
「うん、初代がね。大木市蔵(おおき・いちぞう)さん」

立花さんのご実家は、創業1913(大正2)年の「立花牧場」という、かつて根岸にあった牧場だ。

当時、商品の貯蔵用に牧場の防空壕を貸していたことから、立花さんの祖父と大木ハムの創業者・大木市蔵氏は知り合いになり、立花さんが大木ハムにアルバイトで入ったのは20歳の時。そこから47年間店を守り続けてきた。

1937(昭和12)年に発行された大木ハムのパンフレットには、確かに「小店主は日本人として初めてソーセージの製造を始め」という一文がある。
 


「優良国産品 大木のハムとソーセージに就て」(大木ハム パンフレット)※クリックして拡大

 
続いて、創業当時の同店の様子を伺った。

「初代のころはかなり大きかったそうですよ。隣の隣、表通りから裏通りまでの土地全部が店だったんだから」

日本にハムやソーセージを食べる文化が普及していなかった当時、客は居留地に住む外国人がほとんど。戦後は進駐軍がお得意様で、従業員を100人ほども抱え、山手に膨大な量を配達していたのだとか。
 


日本の食肉加工技術の普及に貢献した大木市蔵氏

 
「やっぱり、当時から丁寧に手作りされていて、品質も良かったから」

それを今に受け継ぐのは立花さん。

「もう跡継ぎがいないので、この店は私で一応おしまいということになります。でも、大木式の造り方はあちこちに広がったし、この間は千葉の商工会の若いのも勉強しに来てくれたからね」

なんと残念な・・・!!

 

代々受け継がれてきたという貴重なテープカッター

 
では、創業者である大木市蔵氏とはいったいどんな人物だったのだろうか? 
 


「日本のハム・ソーセージの父」大木市蔵の生涯と育成した弟子たち

大木市蔵氏は1895(明治28)年、千葉県匝瑳郡東陽村(現:横芝光町)に生まれた。1910(明治43)年、親戚が経営する横浜中華街「江戸清」に、食肉加工見習いとして15歳で就職。
 


創業明治27年、現・ブタまんの江戸清本社

 
その修行中にドイツ人のソーセージ職人マーテン・ヘルツ氏に出会い、弟子入りしてドイツ式の食肉加工法を学ぶ。

第1次世界大戦勃発後、日本で商売ができなくなったマーテンの代わりに大木氏は1914年(大正3)年「合資会社サシズ屋商会」を設立。1917年(大正6)11月1日の「神奈川県畜産共進会」にて、日本初の国産ソーセージを出品した。
 


当時の貴重なサシズヤの記録(「中区わが街 中区地区沿革外史」より)

 
1920(大正9)年、25歳の時に「合名会社大木ハム製造商会」を設立、中区元町1丁目25番地に開店する。

 

最初の店舗の場所(「中区わが街 中区地区沿革外史」より)

 
しかし3年後に起きた関東大震災により、工房を元町5丁目203番地に移転。これが現在の「大木のハムとソーセージ」だ。

 

震災後に移動した店舗の場所(「中区わが街 中区地区沿革外史」より)

 
さらに同年、東京・銀座にドイツ式ソーセージ・ハム・ベーコン類の専門店をオープンさせている。
 


当時の屋号が入った貴重な手ぬぐい

 
第2次世界大戦終了後、大木氏は51歳で、たくさんの弟子を輩出した「大木ハム千葉工場(現:横芝光町宮川)」を設立。現プリマハム創業者の竹岸政則(たけぎし・まさのり)氏や、高崎ハム初代工場長の勝俣喜六(かつまた・きろく)氏も横浜時代の門下生だという。

以降、79歳でその生涯を終えるまで、食肉加工技術の普及や後進の技術者養成に励んだことから「日本のハム・ソーセージの父」と呼ばれるようになった。
 


大木市蔵氏は豚が余すところなく加工して食べることができることを教えた

 
以上から、「ソーセージ発祥の地」は横浜でいいように感じるが、調べると諸説あり、なかなか確証がもてない。
しかし、その答えは、国立国会図書館の貴重なマイクロフィルム資料から発見された。『肉食問題の解決とソーセージ(飯田吉英氏)』に以下の記述があったのだ(以下抜粋)。

「我國でソーセージを製造し始めたのは横浜在留の外人で、明治20年頃から漸次京濱間の内外人の間に売込まるるようになった。一般の人が着目する様になったのは全く最近の事實でこれは日独戦争後独逸俘虜の在留するものが製造を開始したることが大なる動機である」

 

「畜産と畜産工芸」第10巻11号「肉食問題の解決とソーセージ」

 
この記述によれば、ソーセージの製造が始まったのは、さらに過去に遡る1887(明治20)年の横浜となる。これが現在確認しうる限り一番古いソーセージ発祥についての記録だ。

それから後の「大木ハム」創業と、パンフレットの「小店主は日本人として初めてソーセージの製造を始め」という一文まで、見事につながっていく。
 


開港から157年が経過した横浜港

 
ソーセージの本格的な製造・販売が始まった場所は横浜であり、その製法を伝えたのはドイツ人の職人。

そして大木流による手造りの味を今に伝える銘ブランドは現役だ。立花さんのコメントにも登場した「千葉の商工会」とは、大木市蔵氏の故郷で「大木ハム千葉工場」があった千葉県横芝光町のこと。現在、ここで「復刻版 大木式ハム・ソーセージ」が製造・販売されているらしい。

これはキニナル!

今回は特別に横浜を飛び出して、千葉まで足をのばすことに。
 
 

 

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