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アピタ金沢文庫店で40年以上営業した「地元才能発掘書店」、岩下書店はまだ存在している?

ココがキニナル!

金沢文庫ユニー内に1972年から鎮座していた地元才能発掘書店「岩下書店」。アピタの建て替えに伴い遂に閉店してしまいました。閉店後、ついにホームページも消滅。リバイバルの可能性は無い?(うなぎさん)

はまれぽ調査結果!

実店舗はないが「有限会社岩下書店」として書店機能の一部は健在。現在は、横浜市中区を拠点に自費出版書の制作や、浮世絵の販売を行っている

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ライター:紀あさ

金沢文庫の岩下書店



総合スーパー「金沢文庫ユニーに1972年から鎮座していた」という「岩下書店」。まずはその歴史を刻んできた金沢文庫に降り立った。
 


京急線金沢文庫駅
 

「金沢文庫ユニー」は駅のそばにあり、1972(昭和47)年に開店、2009(平成21)年店名を「アピタ金沢文庫店」に変更。2014(平成26)年5月に建て替えのため閉店となった大型スーパーだ。

折しもこのアピタ金沢文庫店、2016年9月16日にリニューアルオープンした。現地の人が「岩下書店」の今を知っているかを尋ねてみよう。
 


アピタ金沢文庫店のご近所在住、かなちゃんとまなちゃんとお母さんたち
 

岩下書店を覚えているかを伺うと、子どもたちはきょとんとした顔。お母さんたちは「地元にまつわる本を多く置いていましたよね」と記憶にあるようだ。しかし閉店後どこに移動したかは知らないという。



岩下書店のゆくえを調べる


 
続いて、インターネットで「金沢文庫 岩下書店」検索をしてみる。
 


検索結果。金沢観光協会のサイトには書店紹介が残っていた
 

しかし紹介文中の岩下書店のURLはリンク切れ。投稿のように「ついにホームページも消滅」しているのか。

諦めずに検索結果をもう少々下まで見てみると・・・
 


「前身である岩下書店」「バザール金沢文庫内に岩下書店」というキニナル記述が!
 

この「地本問屋 耕書堂(じほんどんや こうしょどう)」に連絡をすると、岩下書店四代目の岩下雅紀(いわした・まさき)さんとお電話が繋がった。現在店舗はないというが、後日喫茶店でインタビューをさせていただくことに。



3代目と4代目親子、金沢文庫店のはじまり



待ち合わせはよく晴れた土曜日の横浜。雅紀さんとともに、父であり3代目の岩下寛治(いわした・かんじ)さんも同席してくれた。
 


3代目・岩下寛治さん(78歳、左)と、4代目・雅紀さん(44歳)
 

「現在父は引退しているのですが、金沢文庫店の話だと、父を思い出す人が多いかと」という雅紀さん。それから寛治さんが口を開き、歴史を話してくれた。

創業は1928(昭和3)年、静岡。寛治さんが若いころ、岩下書店はまだ静岡にあった。「首都圏に店を出したい」と周囲に相談したところ、出版取次店から金沢文庫ユニーを紹介され、1972(昭和47)年、ユニーの開店とともに金沢文庫に出店。
 


「静岡から上京すると、赤い電車が走っていて、それが京急でした」
 

初めて降り立った金沢文庫は「品川から各駅停車に乗って、雨が降っている日で、ずいぶんさみしいところにきてしまったな、という印象でした」という。

「私はあんまり商売熱心じゃなくて」と言うが、景気は右肩上がりの時代だった。
 


学習参考書フェアをすると
 


なんと、1日に辞書が200冊も売れたそう
 

ちなみに雅紀さんは岩下書店が金沢文庫に開店した年に生まれた。
 


「3月に静岡で生まれて、9月には金沢文庫に来ていました」
 

そんな岩下書店、実は最初から投稿にあるような地元・金沢区の地域に特化した「地元才能発掘書店」だったわけではない。きっかけはある日、お客さんが「本を置いてほしい」と持ってきた自費出版の自著。
 


2003(平成15)年に発刊された楠山永雄(くすやま・ながお)さんの『ぶらり金沢散歩道』
 

金沢区に焦点をあてた本で、歴史検証がしっかりしていた。一目見て寛治さんは「これは売れる!」と快諾。書籍を特定するための管理番号(ISBN)が付いていない本だったが、そこは個人商店の即断力。

店頭で販売を開始するといきなり一週間で200冊、その後も3000冊ほど売れた。これには著者の楠山さんも「そんなに売ってくれる本屋とは知りませんでした」と驚いたそう。

岩下書店は、これを機に「地元」に着目しはじめる。
 


「金沢って歴史があっておもしろいな、ってうちの息子さんが気付きまして」
 

そもそも金沢文庫は鎌倉時代の中ごろ、北条実時(ほうじょう・さねとき)が造った武家の文庫、金沢文庫(かねさわぶんこ)を由来とする。
 


1930(昭和5)年に復興された中世歴史博物館、神奈川県立金沢文庫は駅徒歩10分
 

ほかにも司馬遼太郎『街道をゆく』の中に数ページにわたり金沢文庫の記述があることなど、金沢文庫と本との関わりは多くある。それを見つけ、雅紀さんが毎週紹介しているうちに地元密着書店の特色が強くでてきた。