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実は三浦で作っていない? 名産「三浦ダイコン」の真相とは?

ココがキニナル!

三浦大根は1980年を境に作付けが激減し、実は三浦ではあまり三浦大根をつくっていないらしいですね。三浦大根を取り巻く現状が気になる。(紀洲の哲ちゃんさん)

はまれぽ調査結果!

三浦ダイコンの出荷量は三浦半島で生産するダイコンの1%。だが、正月用の食材として毎年、年末に首都圏に向け出荷し根強い人気を誇る

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ライター:やまだ ひさえ

三浦海岸の冬の風物詩といえば、これだ。
 


海岸を彩るダイコンのカーテン
 

毎年12月から翌年2月にかけて見られるダイコン干しの光景は、1992(平成4)年度に「かながわブランド」に登録された「三浦の浅づけたくあん・まいるど」を作るためのものだ。しかし、使われているのは、三浦ダイコンではないし青首ダイコンでもない。

どんな種類のダイコンなのか、生産している「松本農園」の松本幹夫(まつもと・みきお)さんに聞いてみた。
 


取材対応してくれた松本さん
 

松本さんによると、たくあんに使うダイコンは「白進(はくしん)」という種類で、首の部分まで白い白ダイコンの一種だ。
 


白進ダイコン
 

三浦市内では10軒の農家がたくあんを作っているが、全て白進ダイコンを使っている。糠漬けにしても、色がきれいで食感が良いダイコンだ。
 


風の具合によるが、4日ほど天日干しをする
 

海岸に干す理由は、常に風が吹いているために乾きが良く、また、気温が下がっても凍らないからだという。
 


糠漬けにして1日目。タルからはみ出している
 

この状態で10日間、漬け込む。
 


4日目になるとカサが減っている
 

完成品。発泡スチロールの箱に4本入りで2000円
 

味は甘め。べったら漬けに似ている
 

松本さんによると、「青首ダイコンは、糠漬けにするとクビの緑の部分の色が悪くなる」そうだ。また、「三浦ダイコンは繊維が柔らかいので、食感が悪く、浅づけのたくあんにはむかない」とのことだ。

浅づけたくあん「まいるど」は、12月から2月までの期間限定商品。松本さんの家では、この間に6万本のたくあんを出荷するが、全て、白進ダイコンで作ったものだ。

三浦ダイコンは作っていなのかという問いに、「自宅で食べる分だけです」という答えが返ってきた。



三浦ダイコンの現状を追う



三浦ダイコンの存在を確かめるために、京急線三浦海岸駅の前にある野菜の直売所をのぞいてみた。
 


地元農家が栽培している野菜を販売している
 


1本300円前後。青首ダイコンに比べると100円ほど割高
 

三浦ダイコンの現状について、三浦市農業協同組合営農部の澤村晃(さわむら・あきら)さんと冨田翔太(とみた・しょうた)さんが話を聞かせてくれた。
 


三浦市の農産物に精通している農協
 

澤村さん(右)と冨田さん
 

三浦半島におけるダイコン栽培の歴史は古く、同地域の郷土史である『相模風土記(さがみふどき)』には、江戸時代の寛永年間(かんえいねんかん:1624~1645年)から作られていたと記されている。

大正時代末期には、三浦半島の在来種である「高円坊(こうえんぼう)ダイコン」と「練馬(ねりま)ダイコン」を交配、三浦半島生まれのダイコンが誕生した。それが三浦ダイコンだ。
 


高円坊ダイコンは太くて小さい「ねずみ大根」の一種(JAながのHPより)
 

練馬ダイコン(練馬区役所HPより)
 

三浦ダイコンは2種類のダイコンの特徴が顕著にあらわれた、首の部分が細く、尻に向かって太くなる「中ぶくれ」という形の白ダイコンで、長さ約60cm、重さ約3kg、大きいものになるという8kgにもなる大きなものだ。
 


特徴的なフォルムの三浦ダイコン
 

1925(大正14)年に初めて東京市場に出荷され、「三浦ダイコン」の名前がつけられた。

繊維が柔らかく、色も美しい。煮ても、刺身のツマとしても重宝された三浦ダイコンは、長年にわたり冬ダイコンの王者として君臨してきた。
 


火を通すとダイコンの甘みが増す
 

しかし、予想もしない悲劇が三浦ダイコンを襲った。

1979(昭和54)年10月29日、大型台風20号が三浦半島を直撃。作付けが終わっていた三浦ダイコンも壊滅的な被害に見舞われた。
 


大型台風がダイコン畑を直撃した
 

三浦ダイコンは、種を植えてから収穫までに約100日かかる。

当時、年末の出荷に間に合わせるために、9月初旬に作付けが終わっていた。植え直すにしても年末商戦には間に合わない。さらに1月の後半になり寒さが厳しくなってくるとダイコンは成長が止まるため、特徴である大きなダイコンが収穫できなくなる。

打開策として農協が提案したのが、台風の後にまき直しをしても間に合う青首ダイコンだった。
 


三浦ダイコン(左3本)と青首ダイコン(神奈川県農業技術センターHPより)
 

三浦ダイコンに比べると、青首ダイコンは小ぶりで甘みが強い。

核家族化によるライフスタイルの変化によって、消費者のニーズが大きなダイコンよりも小さいものを、辛みのあるものより甘さを感じるものを好むようになったという背景もあり、ここ三浦でもわずか3年ほどで青首ダイコンが主流になっていった。

2010(平成22)年の統計を見ると、三浦市では779ヘクタール(779万平方メートル、横浜スタジアム約297個分)の畑でダイコンが栽培されているが、99%が青首ダイコンだ。
 


三浦市内でも「三浦ダイコン」の作付けは1%ほど
 

また、三浦ダイコンは青首ダイコンに比べ病気に弱い。澤村さんが、その実態を農協に隣接する神奈川県農業技術センターの畑で見せてくれた。
 


神奈川県農業技術センター三浦半島地区事務所
 

同センターでは三浦ダイコンも試験栽培されている。
 


三浦ダイコンは葉も大きい
 

葉と葉がこすれることでキズがつき、そこから病気になる。また、葉に寄生するアブラムシの被害も多い。
 


病気になり、葉が落ちてしまった三浦ダイコン
 

日照時間の不足も生育に支障をきたす。特に2016(平成28)年のように、作付後の9月に長雨が続くと、ダイコンにヒビが入る。
 


日照時間不足でヒビが入ったダイコン
 


大きくて重いので抜けずにわれることもある
 

病害虫に弱いことに加えて、重いこと。栽培の難しさと作業における重労働が、青首ダイコンへの移行に拍車をかけた要因だと澤村さんは話す。

三浦ダイコンの作付面積は約1%。7ヘクタールに満たないが、毎年、年末には三浦市農協と「JAよこすか葉山」が共同で横浜南部市場など首都圏に出荷している。2016(平成28)年は、12月24日、25日、26日の3日間だけ出荷する。
 


年末年始には三浦ダイコンが並ぶ
 

限定商品として予約が入るほど人気の高い三浦ダイコンだが、現状の生産量は横ばい状態だという。「今後、生産量が延びるかどうかは後継者次第です」とのことだ。