「患者さんファースト」
　
横浜市栄区桂台中（かつらだいなか）。昭和40年代後半から分譲された閑静な住宅地の中を、1台の色鮮やかなワゴン車が走っている。
　

富士山を背に、ピンクのフェイスにグリーンのボディーが輝く！

　
ワゴン車の持ち主は、その名も「オリーブ歯科」。2015（平成27）年5月に開院した歯科医院だ。
　

エントランスも鮮やか。ん？　ガンダム（しかも初代）・・・！？

　
色鮮やかなワゴン車は患者さん専用の無料送迎車だという。予約時間に合わせて自宅から病院までの送迎を行ってくれるのだ。
　
送迎車には患者さんだけでなく、付き添いの家族または友人も乗車できるという。ひとりで病院まで・・・そんな寂しさもなく通院できるのが嬉しい！　ちなみに、送迎可能なエリアは栄区ほぼ全域で、送迎バスは、車いすにも対応している。
　

ボタン一つでリフトが昇降
　

ステップは段差の少ないユニバーサルデザイン☆

　
ドライバーの成瀬貴司（なるせ・たかし）さんは、同院の開院から送迎バスのハンドルを握る。運転時に気を付けていることを聞くと、「お客様の安全が第一。バスの利用者は高齢者が多いので、スピードには特に気を遣う」と話す。
　

話好きの患者さんには、話し相手になることもしばしば

　
同院はJR根岸線「港南台駅」「本郷台駅」「大船駅」からともに約4kmと、交通環境に恵まれた立地とは言い難い。
　
それだけに自家用車を持たない人や高齢者を中心にした交通弱者にとっては、オリーブ歯科の送迎バスは、ありがたいサービスだと言える。
　

自宅から病院までほぼ歩かずに行くことができる

　
桂台地区にあるスーパーは、病院と併設する「イトーヨーカドー桂台店」のみ。地域に住んでいる住民にとっては、必ず訪れる「街のオアシス」なのだ。この辺りは整備された住宅街であるため、景観保全などの観点から自動販売機すら設置されていないのだ。
　

整備された住宅が立ち並ぶ

　
送迎車は診察時間に合わせて病院に到着する。診療時間は1人平均約30分でほぼ時間通り終わるが、1人当たりの迎えから送りまでの時間を1時間30分とっているという。
　
つまりは診療後の1時間、食事や買い物をしてから自宅に帰ることができる自由な時間が十分にあるのだ。
　

しかも、重い荷物は自宅の中まで運んでくれるんです！

　
送迎車には同院の井上直樹（いのうえ・なおき）院長の顔写真もプリントされていて、近隣の方に「バスの先生ですよね」と声をかけられることもあるそうだ。
　

車体にドーンと井上院長

　
「写真を撮ったのが2年前なんですけど、それから10kgも太っちゃって・・・。この辺の皆さんには顔を知られているので、うっかり鼻もほじれないですよ～」と笑う井上院長。
　

自身の顔が街中を走っているのは「・・・正直、恥ずかしいですっ」

　
そんな井上院長だが、患者さんの話になると柔和な笑顔から一転。「常に考えているのは、患者さんのこと。『患者さんファースト』という視点です」と話す。
　

患者さんの思いを最優先する治療

　
「専門はない」という井上院長だが、言い換えればそれは「オールマイティーに患者さんを診察できる」ということでもある。
　
「病院は技術を披露する、歯科医の自己満足の場ではないんです。患者さんがどういう治療をしてほしいのか、徹底的に話し合って納得してもらってから初めて診療を行うようにしています」そんな強い信念が井上院長にはある。
　

「どんなに忙しくても、どんな患者さんでも診察するようにしています」