横浜寿町のドヤ街には今も日雇い求人はあるの?素人が面接を受けてみた
ココがキニナル!
前記事では寿町の現状を調査。今でも労働者の街としての名残は残っているようである。だが実際のところ日雇い仕事は残っているのだろうか。実際に面接を受けて調査した(ライター・小林たかしのキニナル)
はまれぽ調査結果!
現在は世帯の8割が生活保護受給世帯という福祉の街へと姿を変えた寿町だが、依然として街中にある張り紙や公共の職業あっせん所には日雇い労働の求人が残っていた
ライター:小林 たかし
横浜スタジアムや横浜中華街など、横浜の中心地と言われる場所からほど近くにあるのが寿地区だ。
労働者の街とも言われてきた寿地区だが、近年では福祉の街へ変化を遂げつつある。高齢者や生活保護受給者の数が増えているのだ。
寿地区ほど近くにある横浜中華街
そんな寿地区は果たして今でも労働者の街として機能しているのであろうか。前記事で書いたように私は2日間寿町に滞在中。調査のために全くの素人でも日雇いの仕事にありつけるかどうかチャレンジしてみることにした。
目立つデイサービス、福祉の街寿町
まず仕事を探す前に寿町をうろうろしてみることに。町を歩くと目につくのが、高齢者の多さだ。
町を歩く人々の顔触れは実に多様。でも共通点は、皆さん高齢者ということ。
そのためか、街にはデイサービスの情報も多い。
健康的な食事が特徴的
そして寿町=ドヤ街のイメージにある「日雇い」ではなく、アルバイトや正社員の介護職求人を多く見かける。
ラジオ体操やボランティア募集などの文言が目立つ
街中の掲示板などでは求人だけではなく、ボランティアを募集する内容の張り紙も少なくない。
とはいえ仕事を探さなくては取材にならない。職探しと言えばハローワークということで、関内側にあるハローワークに行ってみることにした(寿町で長らく職業あっせんを行ってきた寿労働センターとは別。寿町のランドマークともいえた寿労働センターだが、現在は関内側の複合施設「かながわ労働プラザ」の1階に場所を移し、営業している)。
ハローワークは図書館や診療所を併設した建物の2階にある。中を見てみると求職者は少なくとても静かだ。どちらかといえば、施設内にある図書館や娯楽室を利用する高齢者の方が多い。
関内側にある施設の外観。ハローワークは別に入り口が設けられている
図書館ではボランティアの方と談笑しているご老人の姿が見られ、非常にほのぼのとした雰囲気だ。
寿町のうわさでよく聞く、「女の人は一人では街に行くな」「タクシーは中に入るな」などと言われていた物騒な雰囲気はあまり感じられない。
今でもこの町で日雇いの求人は見つかるのか、少し不安になってきた。
街中で日雇い求人を発見
だが、町の中心部に足を踏み入れると様相が変わってきた。「日払い」とうたった求人が簡易宿泊所(以下ドヤ)の入り口や飲み屋の外壁にちらほら張られているのだ。
飲み屋につながる路地
どれも給料は交通費込みで日給1万円くらい。細かな仕事の内容は書いておらず、労働時間もわからない・・・と危険なにおいがプンプンするものが多い。連絡先も書いてあるが、正直電話をしたくない。
飲み屋に張られた求人。赤く急募と書かれている
そんな中、一軒のドヤの入り口でこんな張り紙を見かけた。なんと直接面接をしているらしい。対面なので他の求人よりも怖くはない。「ここでなら働けるかもしれない」そんな思いが私の脳裏をよぎった。
太いマーカーで書かれている。他の求人よりも内容が細かく親切な求人だ
午後5時30分~午後6時30分と時間が指定されていたので、2時間ほど滞在先であるドヤで待機することにした。
ドヤでひと騒動
ドヤの一室で所在なくしていると、にわかに外が騒がしくなってきた。「吉村さん(仮名)どうしたの!」そんな声が聞こえる。
外に顔を出してみると、私の前の部屋に滞在している男性がトイレの個室でうずくまっている。
どうやらトイレでしゃがんでいたら、そのまま動けなくなってしまったらしい。ドヤの管理人が慌ただしく救急車を呼ぼうとするが、吉村さんは「大丈夫です」と下を向いたまま、その手を遮る。
ドヤのトイレに張られていた張り紙
結局吉村さんはドヤの管理人や私たちに支えられ何とか立ち上がると、壁伝いに歩きながら滞在している部屋へと戻っていった。
寿町には高齢者が多い。同じフロアには吉村さんと同世代の男性や、歩行器なしには歩けない高齢の女性も滞在していた。
同じくトイレに合った張り紙
はたしてこんな現状で、日雇いの求人は実際にあるのか。ただ、昔からある張り紙をそのままにしていただけではないのか。騒動の後、一抹の不安が頭をよぎった。