横浜市林市長が「カジノを含むIR誘致」を表明! その会見の様子は?
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結局、カジノ構想ってどうなったの?(だいこさんのキニナル)
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横浜市の林文子市長は8月22日の定例会見で、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を正式に表明した。この日、林市長との面会を求めIR誘致反対派の市民が市役所に集まったが、市長は現れなかった。
ライター:池田 恵美子
カジノ誘致に舵を切った横浜市
2019(令和元)年8月20日、朝刊を広げると、1面トップに「横浜市 カジノ誘致へ 山下ふ頭候補 市民反対強く」(東京新聞)の大見出しが飛び込んできた。2年前の市長選で「カジノを含むIR誘致は白紙」の立場だった林文子(はやし・ふみこ)市長が、ここにきて「IR誘致」に舵を切ったということか。その真意とは・・・。
翌日、横浜市政策局秘書課報道担当に、IR誘致を表明するという林市長の定例会見の取材申し込みの電話を入れた。
電話口の女性は、「林市長定例会見への出席は市政記者クラブの幹事社に聞かないと答えられない。今回、会見への申し込みが多く、当日、抽選が行われる予定で当たらなければ、中には入れません」と話した。
定例会見は、22日。ともかく、IR誘致の真相を調査すべく市役所に向かうことにした。内心、くじ運の悪い筆者は当たるはずもないだろうなと思いつつ・・・。
8月22日12時半過ぎ、関内駅に着くと、IR誘致反対派の市民が、「林市長のカジノ誘致は反対です」を訴えて、人だかりができていた。
関内駅前で「横浜カジノ反対」を訴える市民団体
12時40分過ぎに横浜市庁舎2階の報道課に行くと、筆者が一番乗りで、その後、計8人のメディア関係者(記者)が、1階の応接室メディア控室に集まった。
IRを担当する政策局
メディア控室には集まったのは記者クラブに属さない8人
職員の話では、8人の内2人の記者はすでに会見を取材できるということで、6人で抽選を行った。会見に参加できるのは5人という説明を受けたが、「1人だけ排除するのではなく全員会見に入れるようにしてほしい」という記者側からの要望を受け、全員参加できることになった。報道担当者から「質問は市政記者のみ、記者たちの写真は撮らないように」などのお達しを受け、会見室へ行く。
記者・カメラマンの人数は70人ほどか、テーブル席と丸椅子が用意されていた。記者クラブ外の私達記者は後ろのオレンジ色の丸椅子に座るように指定された。
ちなみに、市政記者とは記者クラブに属している記者のこと。記者クラブは、マスコミの上部団体、一般社団法人日本新聞協会加盟の新聞社・通信社・放送局により構成され、中央省庁・国会・政党・地方自治体などに置かれている。加盟外のメディアやフリーランスジャーナリストの記者会見への参加は、ネット時代の今日にあっても、拒否されることがある。
市役所2階には記者クラブ関係者が使用する市政記者室がある
統合型リゾート(IR)とは
林市長の会見の模様を伝える前に、IRについて簡単に触れておく。
統合型リゾート(Integrated Resort、略称:IR)は、カジノを含めた、国際会議場やホテル、エンターテインメント施設などを一体整備した巨大集客施設を指す。経済効果や雇用創出が期待できるが、一方で、治安の悪化やギャンブル依存症への懸念が指摘されている。
2018(平成30)年7月、国会にてIR整備法が成立した。同法は全国で最大3ヶ所を上限としてIRを設置することができ、2020年中にも基本方針が決定される見通しだ。日本人が利用する場合、カジノへの入場回数は週3回、月10回までで、入場料は6000円に設定。2019年4月には、入場制限などギャンブル依存症対策に関する基本計画も閣議決定された。
これを受け、現在、IR誘致を表明している自治体は、大阪府・大阪市、和歌山県、長崎県で、北海道、東京都、千葉市も検討中とか。ここに参戦したのが、横浜市である。
林市長、カジノを含むIRの誘致を正式表明
14時2分に会見室に登場した林文子市長は、早口でこう話し始めた。
「皆さま、こんにちは。本日のテーマは一件、IRの実現に向けてについて、ご説明をさせていただきます。IRについてはこれまで、横浜の将来のために何が必要かを見極め、また、市民の方々の心配やご懸念にもしっかりとお答えするために、さまざまな観点から調査・検討を重ねて参りました。このたび、これまでの横浜市における調査・分析の結果や、国の動向などを踏まえ、IR実現に向けて本格的な検討、準備を進めることにいたしました」
スクリーンと資料を見ながら説明する林市長の口調は早口
かつてはIRに前向きな姿勢を垣間見せていた林横浜市長が、2年前の市長選以降は、「IRは白紙」と繰り返し、慎重に検討する姿勢を示してきた。
では、なぜ「白紙」からカジノを含むIR施設誘致に転じたのか。記者からのたび重なる質問に、IRの誘致へと決断したのは「7月末」と答え、その理由に「横浜市の人口減少社会における経済発展」を挙げ、こう続けた。
「横浜市の20年30年先を見据えなければならない。私たちの子ども世代においても将来にわたり成長発展を続けていくために、横浜においてIRを実現する必要があるという結論に達したわけでございます」
「IRを実現する必要があるという結論に達した」と話す林市長
さらに、「IR誘致に関して住民投票をするのか」という記者の質問に対しては、「住民投票はするつもりはない」と断言した。
会見が進むにつれて、カジノを含むIR施設を推進していくという林市長の強い姿勢が感じられた。
そして林市長は、IR施設の立地場所に、都心からのアクセスもいい横浜港の山下ふ頭(中区、47ヘクタール)を整備し、2020年代後半の開業を目指すことも公表した。
IR施設予定地は山下ふ頭
2020年代後半の開業を目指す予定(横浜市の資料)
また、9月2日から始まる市議会定例会に、誘致実現に向けた専門的な調査分析、ギャンブル依存症の実態調査などの費用として計2億6000万円の補正予算案を提出する。可決されれば、誘致に向けた準備を本格化させるという。
IR施設への年間訪問客数は、最大で4000万人を見込み(うち日本人が約7割)、IRの経済波及効果については、建設時は7500億~1兆2000億円、開業後は年6300億~1兆円に上るとの試算も公表した。
カジノを含むIR施設は、横浜市の財政改善のための切り札になり得るだろうか。