一箱古本市から生まれた古書店「たけうま書房」

店名の由来は、「自分の名前『篤哉』の『篤』から」と、稲垣さん

「この場所へは、お店を出すべくして出した、という感じですね」
2012（平成24）年12月、住吉町にオープンした古書店「たけうま書房」の店主・稲垣篤哉さんは、20代の頃から「ジャック＆ベティ」や「日劇」などで映画に親しみ、また、「試聴室その2」に赴いては交友関係を築いてきたという。

「これからもっと書籍を充実させていく予定」の店舗内に陳列するのは、現在約1500冊。
特に、映画や音楽に関する書籍がメインの本棚を占める。
　

映画関連書籍。評伝・自伝、映画評論など
　

音楽関連書籍。ロックからブラックミュージックまで

趣味として古本市に参加し始めたのは2007（平成19）年のこと。本格的に古書店経営の道に進もうと決意したのは2012（平成24）年の春のことだった。

同店は、もともとは谷根千で発祥した「一箱古本市」をルーツとする古書店。
店舗の規模が、１箱のダンボールから、約52平方メートルという大きさに広がったことについて「若干の戸惑いも感じる」という。

ジャンルの充実化を図るため、古本市仲間である知人の協力を得て、委託販売コーナーである「ミニミニ古本市＠たけうま書房」（2月半ばまで）を設けるなど、「より多くの方が来てくれるような」店舗作りを進めている。
　

「ミニミニ古本市＠たけうま書房」のコーナー。
「文庫善哉」「やまがら文庫」「ちのり文庫」「mondobooks」の書籍が、「たけうま書房」の本棚を彩る

書籍の価値を見定めるための専門的知識の習得が肝になるという古書店経営の世界。定休日は「組合の活動に参加し、大量の本をさばき、価値について勉強している」という。

そんな多忙な日々の中で、「まだバタバタしていて、具体的なことは進められていない」としながらも、「出張カフェを頼んで期間限定のブックカフェにしてみたり、ミュージシャンを呼んでアコースティックライブを開催したり」など、アイディア溢れる試みをいくつか思案しているという。

「でも、まずは、看板を設置しないといけませんね」と笑いながら、看板のサンプルを取り出した。
繊細な線で描かれたモチーフは、稲垣さん自身の物腰の柔らかい雰囲気と、とてもよくマッチしていた。
　

シマウマのオブジェと、本に関するミニコミ「BOOK5」（トマソン社／500円）

好きだった古書の収集と古本市への参加、映画館にライブハウス通い。
この界わいは古書店の激戦区ともいえるが、稲垣さんの個性から生まれる企画案により、独自の形態の古書店が出来上がりつつある。
　

店内には女性向けの書籍や、可愛らしいディスプレイも並ぶ（イラスト：ナリタノゾミ）

なお、自身のルーツである「一箱古本市」も、「続けていきたい」とのことだ。

取材を終えて

個性的な店舗の多い黄金町界わい。徐々にマップを充実させていきたい（地図制作：ナリタノゾミ）

なお、今回の取材にあたり、さまざまな方から情報を提供していただいたものの、残念ながら取り上げることのできなかった店舗がいくつかあった。
今後、機会を得て取材していきたいと思う。


―終わり―

　
MUNCHIES
所在地／横浜市中区末吉町2-28 1F E号室
営業時間／11:00～22:00（金曜・土曜日・・・11:00～25:00)
定休日／月曜日
※現在は横浜市中区黄金町2-10 森下ビル 2Fに移転

酒房ぴー
所在地／横浜市中区初音町1-6　中山ビル101
営業時間／17:00～25:00
定休日／隔週火曜日

たけうま書房
所在地／横浜市中区末吉町4-47　末吉ショッピングセンター2階
営業時間／13:00～20:00
定休日／月・火曜日