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横浜で最も古い1902年創業の銘菓「敷嶋あられ」の歴史とハマっ子に愛される味の秘密を徹底レポート!

ココがキニナル!

元祖? 横浜銘菓 敷嶋あられが気になります。横浜高島屋にお店がありますが、横浜で一番古い あられ屋さんだそうです。老舗を是非取材してください。(yakisabazushiさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

「嵯峨乃家本店」は創業1902年。横浜で一番古いあられ屋さんは、代々続く機械を大事に使い、手間ひまかけて、昔ながらの製法を守っていた

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ライター:ムラクシサヨコ

南太田駅から嵯峨乃家本店へ



横浜で一番古いというお煎餅屋さん、敷嶋あられ「嵯峨乃家本店」を訪ねて、京急南太田駅へ。駅前は人もまばら。ゆったりのんびりした閑静な住宅地だ。
 


5分ほど歩くと、敷嶋あられの看板を発見。辿り着いた店の外観は意外にモダンなデザイン
 

店で迎えてくれたのは4代目の小野田伸行(おのだ・のぶゆき)さん。現在、3代目である父親と共に店の暖簾を守っている。早速、話を伺った。
 


4代目の小野田さん。店に代々受け継がれた味を守っている
 

小野田さんによると、「創業は1902(明治35)年で、同業者の一覧などを調べたところ横浜で一番古い煎餅屋のようです。私の曽祖父・小野田安次郎(おのだ・やすじろう)が始めました。曽祖父は京都の嵯峨野で『嵯峨』という旅館を経営していたのですが、それをたたんで東京に出てあられ屋を始め、その後横浜・福富町に移り、この店を始めました」とのこと。

創業当初は京都風のあられがなかなか受け入れられず苦労したそうだが、大正時代になると横浜松坂屋(当時は野澤屋百貨店)に納入が決まり、従業員も増えて急成長。昭和初期には、あられ屋だけでなく、「サボイア」という飲食店も開き、俳優の上原謙(うえはら・けん)とも親交があったという。
 


関東大震災後に完成した鉄筋4階・一部5階建ての野澤屋
 

ところが、戦争によって、店の状況は一転。2代目が出征し、店は休業を余儀なくされた。その後、戦災で店が全焼。復員した2代目は、店をやめる決意をしたという。

「祖父は、一度は別の職業に就くことに決めたのですが、回りの方々から、あられ屋を再開してほしいというお声をいただき、やはり店をやろうということにしたそうです。福富町の店は焼け出されたので現在この店舗がある場所で再開しました。再開に際して、長く工場で腕を振るってくれた金井さんという職人の力がどうしても必要だったのですが、戦争で行方不明になっていました。祖父は金井さんを探しまわりました」
 


嵯峨乃家ののれんを守るには、職人・金井さんの力が必要だった
 

横浜は空襲で焼け野原に。今のように情報手段がない時代に、職人・金井さんは生死も分からない状況だったと思われるが、2代目が見つけ出し、ふたたび工場に戻ってくれることになったという。金井さんは2代目、3代目に献身的な協力をして、嵯峨乃家本店の技を伝えた。金井さん亡き今も、4代目がその味をしっかり守っている。
 


1935(昭和10)年ごろの店舗。2代目が写っている
 

それでは、昔ながらの製法が守られているという工場に、潜入! 店舗のすぐ隣が工場だ。



年季の入った機械で手間ひまかける



小野田さんによると、「今はお米を粉に挽いたものを使うところが多いのですが、うちではお米屋さんから米を仕入れて、蒸してつくところから作っています。米は季節ごとに水分量などが微妙に変化します。米と水の量によってできあがりが違ってくるんですね。年間通してまったく同じではなく、微妙に違いが出てしまうところもあるかもしれません。それでも、それが自然のものなんです」
 


煎る前の段階のもの。この中に米の味がぎゅっと凝縮している
 

嵯峨乃家本店のあられの作り方は、簡単に言うと、蒸した米をつき、形にして乾燥させ、それを煎って、しょうゆをつけるという流れ。60年以上使い込んだ煎り機で生地を煎りあげる。
 


これが煎あられになる前の状態。これを煎って出来上がる
 

このトレイに生地を置いて加熱する
 

この突起にあられがぶつかってひっくり返り、均一に熱が回る
 

しょうゆは小豆島産の生しょうゆをはじめ、複数使用。ブレンドして、コークスと鉄の羽釜で炊き、砂糖を入れて炊き上げ、最後に葛を入れてとろみをつける。「原料はしょうゆと米だから単純。うまさは原料と心の込め方」なのだという。
 


不思議な形の機械。「昔からある機械をずっと使っています」とのこと
 

あられの種類によって、乾燥の日数や火加減などは変わってくる。この一連の作業は昔ながらの製法で、手間と時間がかかり、最近の大きな工場ではやらないようなことなのだとか。

見学させていただいたときは作業終了後だったが、稼働中はかなりの熱が出るという。今の時期でも室内は30度、真夏だと40度近くまでなり、大変なのだそう。できあがったあられは次々と一斗缶につめられ、少し寝かせた後、パッケージングされる。
 


しょうゆが丸みを帯びる=「枯れる」という。枯れたあられがおいしいのだとか
 

「出来上がったあられは、出来立てよりも時間がたったものがおいしいんです。時間が経つにつれて、しょうゆが生地となじんでいき、丸みを帯びた味になります。私たちは、これを『枯れる』といいます」

「『しっかり、しょうゆの味をつけて枯れるのを待つ―』これが私たちが守っているやり方です」

最近は全体的に、薄味が好まれることもあって、昔よりはやや薄味にしているというが、製法そのものは昔から変えていないという。