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馬車道の東京藝大、なぜ「東京藝大」なのに横浜にある?

ココがキニナル!

馬車道にある東京藝術大学大学院映像研究科は「東京」 藝大なのに、なぜ横浜に?地価の問題?それから、具体的にどのような研究をしているのか、作品なども見てみたいです。(かにゃさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

芸術による活性化を図る横浜市が東京藝術大学大学院映像研究科を誘致した。3つの専攻があり、それぞれ実践的なカリキュラム内容となっている

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ライター:松崎 辰彦

横浜にある東京藝術大学大学院



みなとみらい線馬車道駅。7番出口のすぐそばにあるのが東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎である。


馬車道本校舎


「東京藝術大学」


重厚感ある堂々たる建築物にさすが藝大と唸っていると、同大大学院映像研究科専門員の久保田勇(くぼた・いさむ)さんが「ここは昔、富士銀行の建物でした。現在、『横浜市歴史的建造物』の指定を受けています」と教えてくれた。


久保田勇さん。真摯にご対応いただいた


かつて金庫室だった部屋。現在は機材庫として使用


そのほか映写設備のある講義室


「藝大大学院映像研究科は2005(平成17)年の誕生時から、ここで活動しています」と久保田さん。東京から“移転”したのではなくここ横浜が生誕地なのである。

藝大こと東京藝術大学はいずれも官立の旧制専門学校である「東京美術学校」と「東京音楽学校」が1949(昭和24)年に統合されて誕生した国立大学である。キャンパスは東京都台東区上野公園内、茨城県取手市、神奈川県横浜市、東京都足立区千住に所在しているが、大部分は上野公園内に集中している。

そうした中で、横浜にある藝大大学院映像研究科は学部をもたない独立大学院である。
なぜ学部ではなく大学院? という疑問も湧くが、学部ほどの規模ではなく、少数の本当に現場に出る覚悟と才能に満ちた人材のみを対象に、ということであろう。

藝大大学院映像研究科の校舎は横浜市内に全部で3つ。1つ目は2005(平成17)年に馬車道に誕生した。続いて、翌年の2006(平成18)年に新港ふ頭に、2008(平成20)年万国橋にそれぞれ校舎が現れた。


新港校舎。2016年4月に横浜中華街へ移転(画像提供:東京藝術大学)


万国橋校舎


「なぜ“東京藝術大学”が横浜市にあるかと言えば、横浜市側の熱心な誘致によるものです。横浜市は映像も含む芸術文化に非常に深い理解を持ち、藝大大学院と協力して芸術面からの地域活性化を展開しています」

横浜市は「文化芸術創造都市」として自らを位置づけ、その具体的推進として「創造都市政策」を掲げ、アーティストやクリエーター集(つど)う街を目指している。藝大誘致もその一環であった(後述のインタビュー参照)。

校舎に関して藝大側は横浜市に相応の賃料を払っており、投稿者の言う「地価の問題」ではなく、あくまで横浜市の芸術への理解、協力的な姿勢が藝大大学院映像研究科が横浜に拠点を構える理由となったとのことである。



映画・メディア映像・アニメーション──映像研究科の三つの分野



「映像研究科には〈映画〉〈メディア映像〉〈アニメーション〉の三つの専攻があります」

開校時に、馬車道校舎は映画専攻、新港校舎はメディア映像専攻、そして万国橋校舎はアニメーション専攻とそれぞれ本拠地が分けられた。


機材が無造作に置かれている。
アナログフィルム用の機材も保管されているとのこと


〈映画専攻〉の定員数は32人。国際的にも通用する物語性のある映像作品を創造するクリエーターや、高度な専門技術や芸術的感性を併せ持つ映画制作技術者の養成を目標としている。

「監督領域」「脚本領域」「プロデュース領域」「撮影照明領域」「美術領域」「サウンドデザイン領域」「編集領域」の各領域に細分化されており、学生はそれぞれ自分の領域を選択し、専門性を深めるとともにほかの領域についても一通り経験して基礎的な知識を身につける。

そのカリキュラムはきわめて実践的。1年次の夏には夏期実習、その後にドキュメンタリー実習、2年次には春期実習、最後は修了制作と息つく間もなく“映画を作ることはどういうことか”を体験する。講師に指導され実際に映画を制作するが、初めは講師のアシスタント的な位置づけで、徐々に主導権が受け渡され、最後には学生たちだけで1本の映画を撮り上げる。

久保田さんは言う。「日本の映像系の大学院のほとんどは、研究に特化しています。これに対して『東京藝術大学は創作に特化した大学であり、大学院の学生でも制作をやらねばならない。芸術のトップエリートを育成する』と映像研究科の創設に尽力した関係者から伺っています」


映画専攻のカリキュラム(画像提供:東京藝術大学)*クリックして拡大


実習と平行して専門分野のゼミナールや映画技術論、脚本論など講義も盛りだくさんで、まさに映画漬けの2年間となる。

個性ある映像を創る〈メディア映像専攻〉の定員数は16人。映像を使用したメディア表現のプロを養成する。“従来のメディアやジャンルにはない先鋭的な芸術表現やプロジェクト実践を探求する場であり、メディアを用いてより多様な芸術表現を目指そうとする学生を歓迎する”とのこと。若干分かりにくい分野だが、映像ならではの自由な表現を駆使できる人材を養成するのが目的である。


メディア映像専攻の学生による作品。より自由な発想と確かな技術が問われる


こちらも実習中心。1年次には前期に演習と成果発表、後期にも成果発表がある。2年次には修了制作が要求され、中間審査会をへて最終審査会で成果を問われる。


メディア映像専攻のカリキュラム(画像提供:東京藝術大学)*クリックして拡大


日本のお家芸たるアニメの未来を担う〈アニメーション専攻〉の定員数は16人。

「アニメーション専攻では、自己の作品の質への理解、文化的・産業的な位置づけなど、作品に対する客観的な視点を持ち、大きな射程で進むべき方向性を示すことのできる『リーダー』となりうる人材の養成をめざしています。
脚本、背景画、人物画などアニメのさまざまな分担をすべて一人でできるカリキュラムとなっています。一人ですべてやれるので、応用力が身につきます」と久保田さん。

1年次は基礎的な技法を習得する「特別演習」を経て、「1年次制作上映会」を目標に制作が進行する。2年次はすべて「修了制作」に費やされ、最後の「修了制作展」で発表される。


アニメーション専攻のカリキュラム(画像提供:東京藝術大学)*クリックして拡大


こちらも現場で即戦力となるだけの力を身につけることが目標である。