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横浜で唯一の納豆職人がつくる「おとめ納豆」と「横浜ハッピー納豆」ってどんな納豆なの?

横浜で唯一の納豆職人がつくる「おとめ納豆」と「横浜ハッピー納豆」ってどんな納豆なの?

ココがキニナル!

横浜で唯一の納豆職人がいる「おとめ納豆中村五郎商店」と、ここで製造されている「横浜ハッピー納豆」。小売店では販売されておらず、どのような納豆なのか気になる(ねこぼくさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

おとめ納豆で有名な中村五郎商店の中村弘さんが山梨県道志村大豆を使い、横浜ビール元社長太田さんの発案から「横浜ハッピー納豆」を製造。週に約120個製造し「太田ハッピープランニング」で販売。

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ライター:久保 仁美



まず、おとめ納豆とは?





外へ出かけなくても買える納豆の通信販売を探していた矢先に、はまれぽで「おとめ納豆の中村五郎商店」と「横浜ハッピー納豆」についてのキニナル投稿を見つけて、取材に立候補!

はまれぽ編集部から結果の返事がくる前に、待てなかった筆者は早々と中村五郎商店のAmazon販売サイトを見つけると、購入が可能な「おとめ納豆」を注文してみた。

納豆職人である中村弘(なかむら・ひろし)さんから直接にすぐ丁寧な返信メールが来て、代金を入金すると数日で品物が届けられた。
 



スーパーで見かけることが少なくなった三角の包み! 


楽しみに待っていたので、開封して、早速試食をスタート。
大豆が大きい、匂いが強い、量が多い(一般的な市販パックの2倍ほど)、タレが入ってないと思いながら一口食べてみて、「ザ・納豆だ!」と思った。

納豆の匂いが部屋じゅうに充満して、口に入れると、とにかく風味が強く存在感がある。市販のモノとは全く違う!食材の美味しさとはこれだ!



納豆の匂いが強い! 大豆の風味に、鮮度の良さも感じられたおとめ納豆


フェイスブックの正式「おとめ納豆」のページによると、

「おとめ納豆は横浜市神奈川区の半径数十km圏内で商いをさせて戴いております。創業以来守り続けてる、ろう紙と松経木が醸す昭和の味」

「創業昭和25年より変わらぬデザインパッケージと匠の技。3代にわたる定番商品を密かに横浜で守り続けてきました。ろう紙と松経木で大豆を包む製法で熟練の技がいる手作り商品です。」とのこと。
 
つまりは、70年受け継がれてきた秘伝の味を筆者は食したのだ。実に感慨深い!

その頃、はまれぽ編集部から「取材をぜひお願いします!」との返信が。

喜びとともに、再び納豆職人の中村さんのもとへ正式に取材のお願いをすることにした。
納豆はおいしいだけでなく、体にも良いとされる食品だ。日本人の元気の素と言ってもいいのではないだろうか。

元気のない人に、少しでも楽しい話題をお届けしたい!そんな使命感もあり、胸を躍らせ、電話を急いだ。すると、「現在は取材をお断りしている」との回答が。ならば!と、何かわかりそうな販売所を訪ねてみることにした。




おとめ納豆の小売販売所でみたものは…






川崎市の中原区上平間にある関豆腐店


「おとめ納豆」は、神奈川県横浜の中村五郎商店で製造販売されており、横浜市で唯一の納豆職人・中村さんが作っている。筆者はAmazonサイトで購入したが、その他、神奈川県の6か所でも買うことができる。その中でも最初に訪ねたのが関豆腐店。

そこで目のあたりにした光景は、古きよき日本を思わせるものだった。
店を訪ねていた中年女性が「お財布を忘れちゃったわ」というと、店番の女性は「あら、お勘定は今度、ここの前を通った時ではいいわよ」というではないか。

電子マネーやクレジット決済が当たり前になっていく中で、いまどき珍しい。昭和時代にはよく目にしたのかもしれないが…。接客がひと段落したのを見計らって、取材をお願いすると快く承諾していただけた。




店番を任されていた亀山 貴子(かめやま・たかこ)さん


「コロナの影響で多く(のお店)が閉まっていますからね。(営業して)少しでも近所のお客さんに喜んでいただけるなら…」と営業の経緯を口にされた。

「おとめ納豆?ありますよ!納豆を作っている中村さんは夜中の3時には起きて、豆を丁寧に選ばれていますよ」と、製造へのこだわりを一つ知ることとなった。



関豆腐店ではろ紙・松経木ではなく、パックに入ったおとめ納豆を発売されていた



市販のパックの大きさからするとタテへ2倍伸びた大きさだ


次に訪ねたのが、通称「ハマのアメ横」といわれる保土ヶ谷区洪福寺松原商店街にある京町食品店。


客足が途絶えない京町食品店


代表の小池弥生(こいけ・やよい)さんにお話を伺うことができた。

「顔出し? NGですよ」と笑いながらも、気さくにいろんなご質問に答えていただいた。

「ご近所にあった和光豆腐店が高齢化で店を畳むことになり、そちらで取り扱っていたおとめ納豆をこちらで売る流れに。納豆を特集したTV番組が昨年10月頃に流れたおかげで、納豆は品薄状態が続いています。だからね、おとめ納豆が数の制限なく入荷できるのもありがたいですよね」。



市販の納豆とともに、たくさん並べられていたおとめ納豆


小池さんは続けて「ここの商店街は(他と比べると)人通りが途絶えず、一部から叩かれているみたいですけど、私どもは大型店(スーパー)だけでは回らないところ(役割)を把握して、お客様に喜ばれることを目指しています。儲けだけではない、お役に立つことが大事です」と商売に対する心得と誇りを口にされた。

筆者には、同じ女性である小池さんの凛とされた表情が眩しくて仕方なかった。


次は、保土ケ谷区境木にある八百笑。谷津倉芳和(やつくら・よしかず)さんにお話を伺った。


谷津倉さんも惚れ込んだ「おとめ納豆」を店先にきれいに並べて写真撮影


「松原商店街に行ったときに京町食品店でおとめ納豆に出会って。食べたら、むちゃくちゃおいしくて。作っているのが中村さんだと知って、突撃しましたよ。『自分のお店で、おとめ納豆を売らせてください』とね」。

自身が惚れ込んだモノを人に売る行為は一つの幸せではないだろうか。ガタイの良さとは反比例してお茶目で、どことなく筆者と“同じ臭い”を感じていたら、「実は一時は競輪選手を目指したこともあるんですよ」と過去の告白を聞いて、競輪記者を長年やっていた筆者はなるほど!と勝手に納得。残念ながらその夢は叶わなかったそうだ。

八百屋を始めた経緯は「もう果物や野菜が好きなんですよね。俺の漬けた漬物もおいしいですから!」と誇らしげ。

「それでも始めた頃はいつ潰れるかといったそんな状態が続き…。転機はやきいもが急激に売り上げを伸ばしてくれて。納豆目当てのお客さんもいるし、今では何とかやっています。41歳、独身!どうぞよろしくお願いします」と、恋人募集まで。終始笑いの絶えない取材となった。

4軒目は、中区住吉町にある街中マルシェ「驛(うまや)テラス」。



横浜ハッピー納豆誕生と大きく関係する仲里一郎(ナカザト イチロウ)さん


横浜ビールのお店「驛(うまや)の食卓」(中区住吉町)の一階テラス(火・金)で野菜をメインに販売している仲里さんは10年前に脱サラして、農家の思いを伝えるために地域の野菜をメインに扱うことに。

「横浜に縁のある横浜で作られた商品で、地産地消を考えていた時に、おとめ納豆を知人に紹介されたのです。知人を介したにも関わらず、中村五郎丸商店へ取引を頼みにいったら断られましてね…。(苦笑)話すと長いですよ。食の仲間たちの輪は一言では済みません」

「『横浜ハッピー納豆』の材料である大豆が、なぜ山梨県道志村産になったのかはご存じですか?」と問われて、やっと横浜ハッピー納豆も知る人にたどり着いた。

おとめ納豆の小売店は地域に根付いたお店ばかりだった。「地域で商売をしていくことがどんなことか」といったお話を伺いながら、それぞれの店主のこだわりや先代から引き継いできた商売魂といったものが、「おとめ納豆」を呼びよせて販売に至った不思議な縁を感じずにはいられなかった。

横浜ハッピー納豆の誕生秘話は、はたしてどんなものか、興味が深まるばかりだ。




「横浜ハッピー納豆」とは




おとめ納豆が中国の満州大豆を使用しているのに対して、横浜ハッピー納豆は山梨県道志村の在来種大豆で作られている。実は横浜と道志村は明治30年に道志川から取水をはじめて以来、固い絆で結ばれているのだ。



横浜市の水源地である山梨県の道志村



横浜市と道志村の導水経路(水カフェどうしHPより抜粋)


山梨県の大豆で名称に「“横浜”ハッピー納豆」と謳うのには一瞬疑問符も付いたが、横浜の職人が作っていて、横浜の水源地で育った大豆ならば納得せざるを得ない。


「驛(うまや)テラス」の仲里さんは脱サラする前に建設会社に勤めていた関係で、横浜ビール元社長太田久士さんと知り合った。

そのご縁で脱サラ後のやりたいことを太田さんへ相談した結果、横浜ビールが経営するお店の一角で「野菜を売る」ことになったそうだ。

そして、横浜の市役所に勤めていた方が定年して、間伐などに悩む山梨県道志村の復興に取り組まれており、ある日その方が知り合いである仲里さんへ「道志村の復興のため、道志村のモノを使って何かできないか」と話を持ち掛けてきたそうだ。

脱サラ直後だった仲里さんは「荷が重い」と感じて、また太田さんへ相談したところ、二つ返事で「わかった、アイディアがある!」と、横浜ビールの社員とともに太田さん自らも道志村へ何度も足を運び開拓にも一役買われたそうだ。

横浜ビールでも16年10月に「道志の湧水仕込」というビールが販売されいる。その太田さんが道志大豆を、納豆職人の中村さんへ勧めてできたのが「横浜ハッピー納豆」である。



ついに登場「横浜ハッピー納豆」



「横浜ハッピー納豆」は中村五郎商店で製造されて、販売は東京世田谷区の「太田ハッピープランニング」が行っている。その販売者こそが元横浜ビール社長の太田さんだ。



「太田ハッピープランニング」食のプロデューサー代表の太田さん


祖師谷大蔵にある、太田さんが“落ち着く”という老舗の喫茶店「ニシキヤパーラー」へ。
太田さんは「横浜ビールを2018年10月に退社。食を通して街をハッピーにしたい!飲食のあるべき姿をもっと自由に伝えたい!」と起業。

そんな思いを強くして、作り上げたのが横浜ハッピー納豆だ。



探し求めていた『横浜ハッピー納豆』!


「納豆はスーパーで3パック80円とかで売られていて、この価格では作る側も売る側もハッピーになっていない!」。山梨県の道志村のボランティア活動へ取り組まれたこともあり、道志村の大豆で納豆を作ることを、以前から顔見知りであった中村さんへ提案。

「中村さんが乗り気でなかったため、熱く説得しましたよ。今の世の中について問いかけるように、消費のあり方だったり。職人を絶やしてはいけない!と訴えて。適正価格、390円(税込)で1パックを売るから。その値段を下げないから!」と力説を重ねたそうだ。

ようやくタテに首をふった中村さんは今では横浜ハッピー納豆を作って、毎週火曜日と金曜日に太田さんの手元へ。最近は製造数も安定して、週に120~130個ほど販売されているそうだ。

「お金だけが基準になってしまって、大事なものが見えなくなった。文化レベルも低くなり、(飲食でもどこでも)効率よくいかに作るかと、そんなことばかり…」と、口から出てくるのは日本の憂いばかり。

「昔は外食ってワクワクする『特別』なことだったのに。この喫茶店で感じるようなゆったりとくつろぐ感じでね、そして本物を味合う」。タイミングよく出てきたケーキセットを食べながらも、思いは止まらない。




ケーキセットと絵になる太田さん


「コロナウイルスによって一旦経済活動が止まったことで、みなさんに考える時間が増えた。不謹慎な言い方になるが、それはいいこと、必要なことだと思う」。


「横浜ハッピー納豆」と「美しい国」というチーズとのセット売りも


「ハッピー納豆の次には、雑味がないハッピーチーズ。そして、横浜醬油さんとのハッピージェラード」と展開して「横浜というストーリー性のある街で作って、それをたくさんの方が食べてハッピーになるように。」

その思いで地域に密着した食品の企画から、「納豆は発酵が進むにつれて、白いつぶつぶとしたアミノ酸成分の結晶チロシンがでるため、配送も大事になる」と配送まで自ら行われている。

道志村への大豆の仕入れも、もちろん太田さんだ。車でも決して近い距離ではない。



道志村まで大豆を買い付けにきた太田さんと道志村の山口さん


足しげく道志村に通って、農家レストランつみ草屋を経営する山口智勝(やまぐち・ちしょう)さんのもとで大豆を買い付ける。そして、道志村のたくさんの人々と信頼関係を築いてきた。

太田さんが大豆の仕入れを行い、道志村役場の住民健康課 課長の佐藤太清(さとう・たいせい)さんのもとへ納豆をお届けする日に筆者も同行させていただいた時の一枚だ。



道志村役場の前で佐藤さんと太田さん


佐藤さんは、横浜ハッピー納豆のリニューアルされる包装紙に押された印鑑をデザインられた人物でもある。
「太田さんが横浜ビールの社長時代から、道志村は大変にお世話になっております」と信頼を寄せられているご様子だった。

今回のように、注文が入ったところへ太田さんは出来上がった納豆を届ける。
すべてが「合理的」を目指す風潮の中で、逆にアナログ的な対面式こそが、人が生きていく中で一番大事なことであることを教えるかのように。



おもむろにペンをとってメモを書き出した太田さん



太田さんのメモ書き


そして、太田さんはピラミッドの図を描き、一番下から「家族、街、誇り」、「誠実」、そして次に「信用、信頼」。一番上の段が「仕事」。このメモについては多くは語られなかったが、下の段が満たされてこそ、上の段へステップアップできると思われ、「横浜ビール時代にも、社員にずっと教えてきた」ときっぱり。

太田さんご自身は、きっと「信用、信頼」までを横浜ビールできっちりと築かれたのだろう。最上階の「仕事」イコール「ハッピーをプランニングする」ことを叶えるためには「いまのスタイル」がベストだと考えられたのではないかと、筆者は密かに思った。



一粒一粒の豆が大きい横浜ハッピー納豆


太田さんと別れて帰宅すると、待望の横浜ハッピー納豆をすぐさま食べた。

口にした瞬間「納豆だけど、大豆だ」と思った。納豆の大豆の大きさは、小粒中粒大粒とあり、おとめ納豆は小から中粒の間ぐらい。横浜ハッピー納豆は大粒。

クセが強いおとめ納豆に比べて、横浜ハッピー納豆はまめまめしいという表現が一番合っていると思った。



大豆の風味が強く、粘りもしっかりと出る横浜ハッピー納豆


そういえば太田さんが「納豆は大粒より小粒が人気。だけど、大粒は食べ慣れると病みつきになる」とも言われていて、まさにそんな感じがした。「どんな食べ方をしてもいい。自由に」という太田さんの言葉を思い出して、オムレツの中に入れてケチャップで食べたら、それまた美味!だった。

2つの納豆を食べて、あとは横浜唯一といわれる納豆職人に会えることを祈るばかり。
そしてついに、朗報が舞い込んだ。



取材許可が出た!職人、中村さんとご対面





何度かメールなどでやり取りをしていた中村さんから、ついに取材許可が下りた。今回は中村五郎商店への訪問ではなかったのだが、段取りよく待ち合わせ場所も予約していただいており、恐縮するばかりだった。



待ち合わせた神奈川区二ツ谷町の「横浜マルニカフェダイニング」


中村さんイコール「頑固職人」といったイメージが頭にあった筆者は、少し緊張した。


横浜唯一の納豆職人・中村さんが素敵な笑顔で取材に答えてくれた


中村さんは、2代目で父親の貞夫さんから中村五郎商店を引き継いだ。納豆菌にとって良いとされるろう紙、使用する水に大豆、そして製法にこだわる職人だ。

老舗の味を守り抜いている中村さんは、お会いする前に筆者へ「『大豆と満州の話』(大和新聞社)の記事を読んできてください」とおっしゃった。大豆の始まりや満州大豆が日本へ流通するようになった歴史の話だ。

日本が中国の土地に作った満州という国で、当時、満州の支店に異動になったある商社マンが、荒れ果てた土地でも大豆なら作れると研究を重ねて、大豆の栽培に踏み切る。

そして、品種改良へ試行錯誤の末、効率的な大豆の大量生産に成功。同時にヨーロッパにも販路を作って、年間500万トンの大豆を生産。当時の満州を最大の大豆生産国に発展させたという。



突如、おとめ納豆の包装裏面を見せられた


「おとめ納豆を、いきなりしらないスーパーに売りにいっても売れないですよ。これ(納豆の包装裏面)をみて、なぜかわかりますか」と問われた。すでにおとめ納豆を食べていた筆者には、味、価格(約110円~130円)、限定された小売という希少的な面でも魅力しか感じていなかったので、予習の甲斐もなく頭を抱えてしまった。

筆者がギブアップするのを見兼ねた中村さんは、「多くの人が国産にこだわるから。中国産と書いてあるだけで却下されますよ」と答えてくれた。
ついつい筆者は「コロナ禍で輸入がストップ(制限)されて、日本は中国をはじめ、いかに外国に依存しているかわかったのに…」と零してしまった。

中村さんはそれに同意するかのように「おとめ納豆の大豆は中国産(満州大豆)にこだわっています。その納豆こそ日本で最初に普及したものです。自分は歴史的な納豆を作っていると自負していますから。何度かいろんな大豆も試したが、この豆だからこそ出る風味がある」と強調。

職人気質の中村さんは母親がご病気で倒れて、ご自身も顔面マヒに悩まされて一時は休業も余儀なくされた。その上、常温でも殺菌作用があり、風味も増すこだわりの包み紙、ろう紙の生産が減るなど悩みが絶えない。

「そんなときですかね。太田さんが熱心に説得に来たのは。『横浜ハッピー納豆390円』を提案された時は、高くて売れるかなと思う反面、その価格設定が嬉しいというかね。作り手側の気持ちをわかってくれているというかね。だけど、それができるのも、太田さんが横浜ビールの元社長で、市長などにも顔が利くなど人脈がすごいからですよ」と、尊敬の念を抱かれているのもわかった。



おとめ納豆と神奈川産小松菜を使った「かながわ丼」


「わかってくれる人にしか、おとめ納豆を扱って欲しくない」と言った話から、好きな芸能人、科学では証明できない不思議な話にまで及んだ。

「夜中の2時に起きて、今日は納豆を作っていました。この仕事を始めてから、遊んだことはほとんどありません」。
その言葉だけでも「職人を続けること」「先代の味を引き継ぐこと」がいかに大変かを察するには十分だった。

「大変だけど、神奈川のある小学校で学びのスローガンを『納豆』と掲げた学年があり、うちに工場見学にきたことがあったのです。それから、子供たちにファンレターをもらったんですよ」と、嬉しそうに語られた。

続けて、「京町食品店へ行ったときに、おとめ納豆しか食べない」というお客さんと遭遇してね、作り続けなければいけないなー」と、しみじみ。

築100年の呉服屋「ぬのや」を改装したマルニカフェダイニングも、中村さんや太田さんと志が同じようで地元産の食品、野菜の取り扱いがあった。注文した「かながわ丼」は、おとめ納豆とシャキシャキの神奈川県産小松菜が絶妙なコンビネーションでとてもおいしく、人気の理由がわかった。



マルニ代表の河西元(かわにし・はじめ/右)さんと中村さん


今回、中村五郎商店への訪問は叶わなかった。だが、中村さんが作る納豆の周りには、魅力的な人が溢れていた。小売店で見てきたものは、地域に根付いた生き方であったり、地域をハッピーにすることから関わったすべての人たちが幸せに導かれるような心温まるものばかりだった。


作り手中村さんと、売り手の太田さんで納豆について語り合う(画像提供:太田さん)




取材を終えて





現在は一人で納豆作りをしている中村弘さん。中村さんの名刺に書かれた肩書は、「三角経木職人」だ。豆選びなど製造のすべての工程をされて、おとめ納豆の配送から談取りまですべてを丁寧にこなされている。週に300から400個製造される「おとめ納豆」は、ろう紙に満州大豆、製法とこだわり抜いて作られた納豆だ。

道志大豆を使った「横浜ハッピー納豆」は、横浜ビールの元社長でもある太田久士さんの発案から試行錯誤して、先代から製造の技を受け継いだ中村さんの“腕”で作られた。そして、2人の強い「思い」が納豆へと伝わり、一度食べた人は病みつきになる。

コロナウイルスのパンデミックで、外出自粛が続き、私たちには考える時間が増えた。希薄になった人間関係を見直したり、外食がとんでもなく楽しい時間だったことを再確認できたはずだ。

視点が変わったときに見える風景がある。「幸せにしてほしい」と他力本願ではなく、「たくさんの人を幸せにしたい」と思う中村さんや太田さんの生きざまを見ていると、「ハッピーはプランニングできる」ことがわかった。

そういえば、中村さんと太田さんが手を組んで作った納豆は、日本人の心を彷彿させるような粘り強さがあった。


―終わり―



取材協力


中村五郎商店
おとめ納豆の販売所
http://home.netyou.jp/99/otome710/

太田ハッピープランニング
住所/東京都世田谷祖師谷1-25-20 スターハイツ祖師々谷大蔵102号
https://profile.ameba.jp/ameba/umayablo/

京町食品店
住所/神奈川県横浜市保土ヶ谷宮田町1-5-4
電話/045-332-3211
営業時間/9:00~19:00
定休日/なし

関豆腐店
住所/神奈川県川崎市中原区1700
電話/044-511-9398
営業時間/9:00~19:00
定休日/日曜、祝日

八百笑
住所/神奈川県横浜市保土ヶ谷区権太坂1-52-5

ニシキヤパーラー
住所/東京都世田谷区祖師谷3-32-3 NN協同ビル1F
電話/03-3482-0482
営業時間/8:30~19:00
定休日/木曜

驛(うまや)テラス
住所/神奈川県横浜市中区住吉町6-68-1 横浜関内地所ビル1階テラス
営業時間/11:00~15:00
定休日/月・水・木・土・日

横浜マルニカフェダイニング
住所/神奈川県横浜市神奈川区二ツ谷町6-3
電話/045-322-1712
営業時間/11:00~17:00
定休日/日曜・祝日不定休
URL:https://yokohama-marunicafe.com/free/nunoya


参考資料

横浜市の水源地道志情報館 水カフェどうし
http://www.cafe-doshi.jp/history/

大和新聞社「大豆と満州の話」
http://www2.yamatopress.com/beautifuljapanstory/8.html




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  • 9/12現在中村五郎商店のホームページにはアクセスできない、Amazonでは販売停止中、再入荷の予定立たずとなっておりますが、どうしたのでしょうか?小売店で現物を購入して試食しましたが記者が書いているほど市販品と比べて秀でているとは感じませんでした。中国産の大豆を使用していることも今のご時世では不利ですね。国産以外にもアメリカ産やカナダ産の大豆もある中でそこは
    ご主人のこだわりなのでしょうか。横浜ハッピー納豆に至ってはあまりの高価格設定に驚きました。横浜愛の強い人が買ってくれるのでしょうか。私も横浜市に固定資産税を納めている立場で地元愛も強い方だと思いますが、さすがに購入はためらわれます。

  • 2016年にはまれぽさんで紹介された西区の納豆製造販売店「ハマ食品」さんが閉店されたのが残念です。家が近いこともあり店頭で購入していました。現在は記事中にもある京町屋さんで中村五郎商店さんのおとめ納豆を購入しています。今後も食べられると嬉しいですね。個人的にはハマ食品さんの豆がホクホクしていて匂いが薄い納豆が大好きですが、納豆臭の強いおとめ納豆も納豆らしくて好きです。

  • マルニカフェのおとめ納豆を使用した「神奈川丼」は、シウマイ弁当と同様、周期的に食べたくなります。昨日も食べてきました。やっぱり美味しかったです。地元神奈川区でおとめ納豆が買えないのは、いささか寂しい気がします。

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