横浜駅西口を出て帷子川を渡ればすぐそこに、慌ただしい日常とは別の時間が音楽とともに流れている場所がある。
　
　
　
横浜駅から歩いてすぐ
　

横浜駅西口を出てパルナード通りを歩いていくとまもなく帷子川を渡る
　

渡ったら相鉄ムービルの手前を川に沿って左に曲がるとすぐに見えてくる
　

レストラン＆バー「STOVE’S（ストーブス）」である

　
以前にも前を通るたびにいい雰囲気だなと思っていたり、友人から「西横浜に住んでいたころよく行っていた」という話を聞いていたりした店である。
　
STOVE’Sのオーナーである佐布仁之（さふ・ひとし）さんは、ムービルの3階にあるライブハウス「THUMBS UP（サムズ・アップ）」のオーナーでもあるということで、THUMBS UPで話を伺うことにした。
　
　
　
THUMBS UPにて
　

ライブハウスのショーウインドーに並ぶビザールギターの数々にのっけから垂涎
　

店内に入ると何だかもう、いてもたってもいられない雰囲気が広がっていた
　

ライブハウスについて聞きたい衝動を抑えきれずまずはサムズアップについて紹介

　
すべては29年前の1987（昭和62）年、西区浅間町に佐布さんがオープンしたBuddy（バディ）というバーから始まる。その後1994（平成6）年に現在の場所にSTOVE’Sをオープン。さらに1998（平成10）にTHUMBS UPをオープンした。
　
THUMBS UPにはこれまで、憂歌団やボ・ガンボスなど伝説的なバンドが出演してきた。現在も岡林信康（おかばやし・のぶやす）、泉谷しげる（いずみや・しげる）、ムッシュかまやつ（むっしゅ・かまやつ）、吉田美奈子（よしだ・みなこ）、CHABOこと仲井戸麗市（なかいど・れいち）や土屋公平（つちや・こうへい）ら日本の大衆音楽史において欠かすことのできない素晴らしいミュージシャンたちがたびたび出演している。
　

エントランスで吉田美奈子（vo.）河合代介（かわい・だいすけ）（org.）
沼澤尚（ぬまざわ・たかし）（dr.）のサインを見つけ興奮

　
そのほかにもLeyona（レヨナ）やCaravan（キャラバン）などの世代や、マリア・マルダーやオールマン・ブラザーズ・バンドのメンバーでもあったレス・デューデックなど、海外のミュージシャンも愛用するライブハウスである。
　
THUMBS UPは、スタンディングの客席で1ドリンクのプラスチックカップを握りしめて音楽に集中する日本の一般的なライブハウスとは異なる。食事やお酒を楽しみながらくつろいで音楽を楽しむことができる、いってみればアメリカのバー＆ライブハウス的空間が広がっている。客席との距離も近いというか距離は存在しない。
　

海外のミュージシャンにとってはとても居心地のよいステージなのだろう

　
ビブレ前の広場でジャグ・バンドフェスティバルを開催したときはこのステージにもミュージシャンたちが立ったという。
　
STOVE’Sで22年、THUMBS UPで18年、横浜駅西口で美味しい料理とお酒と音楽を提供してきた佐布さんは、近年はハロウィーンイベントや夏祭りのほか、アマチュアバンドのコンテストなどを通じて地域貢献にも携わるようになったという。
　

「いつの間にかこの街で長い店になっちゃったからね」と佐布さん
 

西口の活性化につながる地域活動なども行っている

 
それからあと一つだけ。ライブハウスで演奏をしようというとき、日本では課せられるチケットのノルマが若いミュージシャンたちを苦しめるが、THUMBS UPではブッキングで出演するとき、出演料はチケットの売上で変動するが、ノルマはない。この部分もあらゆる出演者を「アーティスト」としてリスペクトする欧米諸国の考え方に近い。
 
横浜駅のすぐ近くにこんなに素敵なライブハウスがあるとは。もっと知られるべきだしこれからもずっとあってほしい場所である。
 

ビールサーバーのハンドル一つ取っても気が利いていて最高だ
　

エントランスに貼ってあるポスターにはほとんど本人のサインが入っている