全国で1校だけ! 横浜の「ハンコ職人専門学校」ってどんなとこ?
ココがキニナル!
日本で唯一のハンコ職人の学校、神奈川県印章高等職業訓練校について調べて下さい。(ときさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
横浜印章事業共同組合によって設立された職業訓練校。日本全国から生徒たちを迎え入れ、日々、技の習得と研鑽を学んでいる。
ライター:細野 誠治
ハンコにまつわるエトセトラ
タンスの隅や金庫の中、大切なものをしまう場所に必ずあるといっていい判子(ハンコ)。成人した日本人なら、誰もが持っているだろう大切なモノ。
最も身近な職人の技、判子
そんな判子を作る職人の訓練校が横浜にあるそうだ。どうして横浜なのか、その実態は? 職人から弟子へ、伝導の現場を覗いてみた。
京急線・上大岡駅北口から歩いて数分の所に教室はあった
所在の雑居ビルを訪れると、そこは宅建協会の会議室だった。
こちらが訓練校のドア。どうして?
教室内(?)の様子
応対頂いた青山尚文氏。当校の指導員で、上大岡で青山印房を経営されている
青山氏のほか、この日は3名の先生が指導を行っていた。皆、横浜近郊で印章店を営んでいる現役の職人さんたちだ。
磯子区杉田「竹山堂印房」の森本龍作氏
小田原市「彫助(ほりすけ)」の和田清博氏。息子さんは現在、訓練校の2年生
平塚「東曜(とうよう)印房」の水嶋祥貴氏
―なぜ教室が宅建協会なんだろう? 到着早々、そんな疑問を持った筆者。すると・・・。「場所の確保が難しいので。土日だけだと家賃の面でも大変ですから」と、青山氏。
訓練校の授業は週末の土日のみ。そこで週末だけ、使われていない宅建協会の会議室を間借りしているそう (職人の育成に賛同する宅建協会・横浜南部支部さん、グッジョブ!)。
間借りであるため、指導に必要な道具や備品は毎回、青山氏がリヤカーでこの場に持参をしているという。
隅に置かれたリヤカー。志を運んでいる
学校の名前は「神奈川県印章高等職業訓練校」で、始まりは1967(昭和42)年。当初は横浜印章事業共同組合に加盟する各事業主が、それぞれの雇用者に対して「後継者育成と技術の継承」を目的に、職業訓練を行う「事業内職業訓練校」として発足した。
また、この年は印鑑の“機械彫り”が世に出てきた年でもある。
「組合として機械彫りへの危機感があった」という。当時の組合長だった大熊道言(みちこと)氏と、青山氏の父である青山正義氏らが音頭を取ってのスタートだった。
教程は2年間。50分の授業を8時限。午前9時から夜6時までと、かなりの濃密さ。学習内容も幅広く、道具の作成や印刻を学ぶ実地はもちろん、書道や印の歴史、法律を学ぶ学科などさまざま。
定員は一学年10人までで現在は2年生が2名、1年生が4名の計6名が学んでいる。生徒らの出身地は様々で、ほとんどの生徒の実家が印章店を営んでいる。家業の大切な跡継ぎたちなのだ。
彼らは平日、判子漬けの日々を送るべく、訓練校から紹介を受けた印章店でのアルバイトをしている者が多い。
横浜の地で、跡継ぎたちが技を磨く
判子職人の技は、親から子へと伝承されるものだと思っていたけど、違うのだろうか?
青山氏は言う。「教えることが難しいんです。職人は仕事を抱えていますから。別に親が子に教えても構わないんです。でも職人ひとり独りがクセを持っているんです。ここでは基本を教えています。実家に帰ったら、それぞれのやり方でやってもいいよって言っています」と。
「あとは、やっぱり修行ではないですが、“他人の窯の飯を食って来い”という親心があるんですね」
“可愛い子には旅をさせろ”か・・・。修行をしている横浜の地が、どうか美しく映っていてほしいな。
訓練校のパンフレット「技を学び、技を伝え、明日を拓く」
―なぜ横浜に?
「講習会といったものは、全国に沢山あるんですよ」と青山氏。(それでも月に1~2回開催される程度だとも。だが、厚生労働省から訓練校として認可を受けたものは、ここ横浜にしかないという。
理由は・・・「(学校として)儲からない(教える者が)時間がとれない。そして、明確な指導方針を打ち出すことが難しい」。
だから、ほかの場所ではできにくいのか。
職人技の伝承のガイドライン。確かに難しいことだと思う。
難しい。でも、やるんだ、という出発
機械彫りの出現以降、判子の主流は手彫りから機械掘りへ。それでも大切な実印などは職人が精魂込めて作ったものが使われている。
なぜか? 理由は簡単。
機械彫りされた文字は均一で、書類の偽造が容易いという。だが手彫り印には、ひとつとして同じものはないということ。
手彫り印には同じものがない
職人の養成には時間も費用も掛かる。この貴重な技術を残すためには「訓練校」よりも都道府県から補助金が出る「職業訓練法人」がいいと、法人化したのが1976(昭和51年)。これによって、現在のように県から補助金が交付されるようになった。(神奈川県、グッジョブ!)
教室の真中に、水を含ませた砥石があった