タクシーでトラブル? 神奈川区泉町と泉区和泉町が存在する理由とは?
ココがキニナル!
「泉区」が「和泉町」で「泉町」は「神奈川区」。この情況が、横浜市内を走るタクシーのトラブルの元に。横浜市内に泉町と和泉町が存在する理由、和泉町がある泉区が和泉区でない理由を調べて。(mirrorさん)
はまれぽ調査結果!
神奈川区に泉町ができた昭和7年当時、和泉村はまだ横浜市ではなかったので問題なかった。そして昭和61年、既存の町名は使えなかったため泉区誕生。
ライター:永田 ミナミ
なるほどむずかしい
「泉区」に「和泉町」があって「神奈川区」に「泉町」があるというのは、なるほどむずかしい問題である。
うっかり誤解が生じたら、こんなに遠くまで賃走してしまう
「和泉町」に住んでいる人は、タクシーに乗り込んだときに「《わいずみ》のほうの、泉区の和泉町まで」と念を押し、「泉町」に住んでいる人は「泉区じゃなくて、神奈川区のほうの泉町まで」と泉区の可能性を否定してからシートにもたれ、おもむろ携帯を取り出したりしているのだろうか。
誤解が生じても、気づけばすぐに「あ、こっちじゃなくて」と訂正もできるが、疲れて寝てしまったりしたら大変である。「あれ、ああ、こっちの泉町/和泉町じゃないんですよ」「わあ、すみません。お代はいりませんから和泉町/泉町に戻ります。本当にすみません」というやりとりと、そのあと車内を満たす重苦しい空気を想像すると胸が苦しくなる。
あるいはもっと怒気に満ちたやりとりだってあるかもしれないが、それはもう想像するのさえ躊躇する。などと思いつつ、一般社団法人神奈川県タクシー協会に問い合わせてみた。
すると、両町はかなり離れているのでそういったトラブルは聞いたことがないという回答
トラブルがないというのは何よりだが「地名は土地の記憶である」というタモさんの言葉にもとづいて考えれば、やはりそれぞれの名前には何かしら由縁があるはずである。
それぞれの事情
神奈川区泉町については『横浜市町名沿革誌』に記載されていた。
つまり、もともと青木町だった地域の一部を1932(昭和7)年に新たに「泉町」としたのである。町名の由来は「佳名(よい名。めでたい名)」をとったというシンプルなものである。
春の雨に濡れた神奈川区の泉町歩道橋
そして泉町は0.031平方キロととても小さな町である
神奈川区と泉区は23.59平方kmと23.56平方kmとほとんど同じだが、泉区和泉町の6.414平方kmと比べると神奈川区泉町は0.031平方kmととてもこぢんまりとしている。
そんな泉町にも中央があって、実際この写真のあたりが中央で
通りをはさんだ両側に450メートルほど続くのが神奈川区泉町である。0.031平方kmで長さ450メートルとすれば幅は69メートル。中間を片側2車線の道路が走っていることを考えると道の両側20メートルずつほどということになるだろうか。
小さいながら泉町交差点も泉町バス停も泉町中央バス停もあるぬかりない町
『横浜市町名沿革誌』に泉区の町名沿革も載っていればよかったのだが、この資料が発行されたのは1939(昭和14)年。泉区の和泉町を含む地域が戸塚区として横浜市に編入されたのも奇しくも同じ1939年。というわけで『横浜市町名沿革誌』に「和泉町」についての記載はないのであった。ちなみに別資料『横浜の町名』も泉町の名は「佳名を採った」という同様の記述であった。
歴史の長さで見てみると、横浜市に「和泉町」がある泉区が誕生したのは1986(昭和61)年なので2016年で区制開始30年。一方「泉町」がある神奈川区が誕生したのは1889(明治22)年なので2016年で区制開始127年。
区の歴史の長さでいえば神奈川区のほうが120年以上長いことになるが、しかし町名の歴史の長さとなると事情が違ってくる。