京急線の新駅名を子どもだけに任せるとはけしからん？

　
「三崎マグ口」「京急リラッ久里浜」「北斗の拳立大学」など、期間限定とはいえイベントの度に駅名をぶっ飛んだ駅名に変えてしまう京急電鉄から、変わった企画が発表されたことをご存知の方も多いだろう。
小学生、中学生限定で、全駅を対象とした駅名変更案を募集する企画だ。「実際に駅名を変更する」という事ではなさそうだが「京急全駅の新しい名前を考えてみよう」という企画はまさに前代未聞ではないか。

なぜ全駅？なぜ小中学生のみ？

既に大人の鉄道大好きはまれぽライターの若林だって、駅名案を考えたいのに！
納得がいかない若林はさっそく京急電鉄にこの企画の経緯を聞いてみた。
　
　
　

「わたしたち、ぼくたちのわがまち駅名募集」とは

　
京急電鉄で実施された「わたしたち、ぼくたちのわがまち駅名募集」は、京急電鉄の創立120周年記念事業の一つ。京急線内の泉岳寺を除く全72駅を対象に、新しい駅名案を募集する、というものだ。
その応募資格は小学生および中学生のみとなっており、駅名案を送った人の中から抽選で京急電鉄よりプレゼントが贈られる予定らしい。
募集期間は2018（平成30）年9月23日から10月10日までで、すでに募集は終了している。

募集要項によると、他社線との乗換駅や、京急沿線で、一般的に有名な施設等への最寄り駅については、提案自体は受け付けるものの、実際に変更される予定はないとのこと。
例えば、乗換駅は品川や横浜、京急鶴見など。鮫洲（さめず）、弘明寺（ぐみょうじ）、安針塚（あんじんづか）など、有名施設などへの最寄り駅は、どんなに素晴らしい新駅名案が送られてきたとしても、実際に変更されることはない。
　

子どもたちの楽しげなイラストのポスターが掲出されていた（現在募集は終了）

　
最近の京急電鉄はとてもユニークな企画を数多く打ち出しているが、この企画は特に物議を醸しているようで、はまれぽ編集部に送られたキニナル投稿の時点ですでに反対している人もいた。
京急電鉄にはどのような意図があって今回の企画を実施したのだろうか？

想像をしていても仕方がない、ということではまれぽ編集部ではいつもお世話になっている、京急電鉄広報部報道課に、率直な疑問をぶつけてみた。
　
　
　

なぜ子どもたちだけに参加資格を絞ったの？

　
京急電鉄によれば、この企画を始めたきっかけは「京急大師線立体交差事業」により、産業道路駅の駅名変更が予定されていること。そして記念すべき京急電鉄創立120周年の記念事業として、沿線活性化の一翼を担う企画を目的として実施したそう。

参加資格を小・中学生に限定したのは、沿線の次世代を担う子どもたちに自分の住んでいる町や沿線について深く知ってもらい、それらの声を広く集めるためだという。

確かに駅名を考えるために、子どもたちは各駅の周辺やエリアの情報を調べ、駅名を考えるだろう。そうする事で自然と自分の住んでいるエリアが学習できるという訳だ。実際に駅名が変わる確率の高い駅名の事業に合わせた、夢のある企画である。

もし本当に自分の考えた駅名が採用されるとすれば、本人にとってはこれほどうれしいことはないだろう。自分の考案した駅名をきっかけに、その町のことをもっと好きになるに違いない。
　

産業道路駅前にて。この駅はすでに駅名変更が決定されている

　
具体的にどんな駅名案が寄せられているかはご回答いただけなかったが、子どもたちは駅の周辺施設や歴史を調べ、真剣に送ってくれたらしい。
その数、なんと1119件！たくさんの子どもたちがこれほど多くの駅名案を送ってくれていたとは、23歳で大人の若林、ちょっぴり感激である。
　
　
　

実際に駅名は変更されるのか？

　
さて、一番キニナルのは、実際に駅名を変更するのかどうかという事だ。慣れ親しんだ駅名が簡単に変えられてしまうのは、在住者にとっても、利用者にとっても、そして周辺企業の方にとっても困惑してしまう。企業の場合は「最寄り駅」を明記した企業サイトや会社案内も変更しなければならないのだから！

これに関してはまずご安心いただきたい。

「一度に全駅の駅名を変更する」と心配している方も多いようだが、駅名変更の対象駅は数駅程度にとどまる予定。
今回の企画は、単に全駅を対象に「アイディアを募集」したもので、京急ではきちんと駅名変更のリスクについても考えている。

今後、実際に駅名変更が行われる場合でも、寄せられた提案と利用者からの意見を両方参考にしつつ、社内会議で慎重に検討を重ねて決定していくとのことだ。
　
　
　

駅名が変わるかもしれない事を、京急沿線ユーザーは知っているのか？

　
これだけ大規模な募集企画を行えば、京急線利用者にも広く知られ、駅名変更についての議論がされているかもしれない・・・若林は京急沿線をまわり、意見を聞いてみることにした。駅名案提出の対象は子どもたちだけだけど、大人の皆さんも新駅名を考えたかったかもしれない！