老舗のノレンを洋風がなびかせる、はま旅Vol.80「石川町編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第80回は、女学生の街・石川町で見つけた、和洋折衷の港町文化を巡る旅。
ライター:河野 哲弥
女学生という意味のリセンヌ小路(中通り商店街)
石川商店街と平行して一歩東側に展開するのが、石川町南口駅前中通り商店街、通称「リセンヌ小路」である。
落ち着いた雰囲気の中、個性が光る店が多い
こちらの商店街には、各マスコミでもたびたび紹介されている洋食レストラン、「美松」がある。時は昼時、老舗の味を堪能してみるのも悪くない。
地元校出身の女子アナもたびたび訪れるという、同店外観
マヨネーズやドレッシング、各種ソースに至るまで全て手作り
石川町駅の開業よりも数年前、1960(昭和35)年にオープンしたという同店。常時約40種を誇る豊富な洋食メニューと、毎日深夜までかけて仕込むというオール手作りの味が、人気の秘密なのだとか。
オーナーシェフである平野幹弥さんの父親は、戦前・戦後に活躍した伝説的シェフ、海老沼幸七氏に師事していたそうだ。日本の洋食の元祖ともいえる当時の味を、同店では楽しむことができる。
生涯現役で頑張ると話す、平野さん
これが目当てのお客さんも多い「オムライス(サラダ・スープ付)」1200円
一口食べて分かるのは、保存料などを使っていない、体になじむ優しい味であること。
「昔からのファンも多いので、手抜きは一切できない。常に全力でお客様をお迎えしている」と、平野さんは話す。登下校中に立ち入りが禁止されている女学生にとっても、「卒業したら、いつか美松へ行ってみたい」と、あこがれの対象になっているようだ。
美松のすぐそばにある、「Peace Flower Market & NATURAL FOOD’S Co.」
店内では、こんな姿も
美松を出ると、はす向かいにある、鮮やかなグリーンが目に入った。
2009(平成21)年にオープンしたという、生花と焼き菓子を扱うカフェ「Peace Flower Market & NATURAL FOOD’S Co.」に立ち寄ると、店内ではフラワーアレンジメント教室が開催されていた。参加していた生徒さんにお話を伺うと、「先生のセンスがいいのと選べる花の種類が多いので、見た目にも精神的にも、貴重な潤いを得ている」とのこと。
「ハロウィン向けの飾り付けも人気」と、佐布ゆう子先生
(上・右)マフィンとスコーンのセット、紅茶かコーヒーが選べて850円
(左)ハロウィンフラワーアレンジ例1800円から
さて、そんな「リセンヌ小路」だが、はたしてどのような意味なのだろうか。
街の人によれば、戦後から続くミートショップがあるので、そこの人なら詳しいのではという。場所を教えてもらってうかがってみると、今では肉屋直営のレストランになっていた。
同店「肉屋の肉料理 みずむら」の代表、水村嘉宏さんに「リセンヌ小路」の由来をたずねてみると、ちょうど2000年になるころ、町内の有志による公募によって名付けられたとのこと。
国産和牛がお手頃価格で楽しめる「みずむら」外観
広々とした店内は、「Secret Space」という貸し切り対応も可能
このとき採用されたのが、同商店街の風物詩ともなっている、女学生という意味の「リセンヌ」案。もともと幅の狭い道だったこともあり、「リセンヌ小路(こみち)」と命名されたそうだ。
では、リセンヌたちの通学経路に沿って、丘の上に登ってみよう。フェリス女学院の南側を通って、西洋館の並ぶ山手地区へ向かってみた。