老舗のノレンを洋風がなびかせる、はま旅Vol.80「石川町編」
ココがキニナル!
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第80回は、女学生の街・石川町で見つけた、和洋折衷の港町文化を巡る旅。
ライター:河野 哲弥
西洋館の家具修理からはじまった、「横浜家具」の歴史
山手イタリア山庭園から横浜外国人墓地へ抜ける山手本通り沿いには、各西洋館をはじめとし、海外の軍隊が駐留していた頃の異国文化が香る、独特の建物が並んでいる。
フェリス女学院外観
こちらは、ブラフ18番館
荘厳な雰囲気の、山手カトリック教会
時は昼過ぎ、下校姿の女学生も徐々に見かけられる時間になってきた。そんな中、フェリス女学院から中央大学横浜山手校に向けて歩いていると、一軒の個人宅と見間違ってしまいそうな、蓮華草元町工房という家具のショールームがあった。どんなところなのか、お邪魔してみることに。
右側にある看板がなければ、まるで普通の民家
店内に一歩入ると、「横浜家具」の数々が展示されている
同工房のBOSSを名乗る内田さんによれば、もともと元町や山手には、西洋館の家具を修理する家具職人が集まっていたのだとか。現在元町にあるクラフトマンショップストリートも、そんな職人たちにとってのメッカであったらしい。
内田さんは、こうした優れた技術を後世に残そうと、同工房で後継者を育成し、家具作りの伝統を守っているそうだ。
自分も職人の1人だったと話す、内田BOSS
図面を描き起こすところから始まる、オーダー家具の一例
こうして生まれたのが、「横浜(元町)家具」といわれるハマブランドである。その最大の特徴は、1つの家具を、すべて1人の職人の手で作りあげていくことにある。また、複雑な曲面も、やすりなどを用いずカンナによって仕上げていくのだとか。場合によっては、専用のカンナを作るところから、家具製作が始まるという。
山手に建つ西洋館のほとんどの家具は、内田さんをはじめとする職人によって、今も当時の姿を残している。なお、外交官の家ほか13の西洋館では10月28日(日)、「魔法の丘ハロウィン」と題した、スタンプラリーを企画している。機会があればイベントに参加し、横浜家具の神髄に触れてみて欲しい。
四代続く美人女将が守る、老舗の味
地蔵坂を降り、南側から石川町駅前に戻ってくると、こちら側にはひらがな商店街があった。そして、ひときわ人だかりのある和菓子店が目を引いた。
石川町駅すぐ脇にある、金米堂本店外観
一番左が3代目金子郁枝さん、中央が4代目金子弘美さん
1892(明治25)年創業、約120年続く和菓子の老舗金米堂本店は、4代に渡って女の子ばかりが生まれるという、珍しい家系の持ち主だ。だから、ご主人は代々入り婿ということになる。ちなみに4代目の弘美さんには、現在2人の娘さんがいる。伝説は脈々と受け継がれているようだ。
焼き印を押すところから袋詰めまで、すべて手作業で和菓子が作られていく
同店一番の人気商品、「梅どら焼」260円
国産の白インゲンを使用したアンの中に青梅の甘露煮を乗せた「梅どら焼」は、くどくない甘さと爽やかな梅の酸味が上品な、女性らしさを感じさせる逸品。出来たてもさることながら、1日置いた「戻り」と呼ばれる状態になると、しっとり感が増して、さらにおいしくなるのだとか。
さらに、同店で使われている水は、スペースシャトルで採用されている「逆浸透膜方式」でろ過されているそうだ。生活用水の排水を飲み水にすることができるほど、不純物や雑菌を取り除くことができる、NASAの最新技術。これにより、素材の持ち味が、より引き立ってくるとのこと。
異国文化を貪欲に吸収してきた、下町のたくましさ
意外と懐が深く、いろいろな引き出しを持っていた石川町。古くから続く老舗にも、どこかでわずかに「洋」が香っていた。そこには、港から上陸した異国文化に常に塗り替えられていった歴史が、少なからず関係しているのだろう。ある意味、最も横浜らしさを感じた、今回の「はま旅」だった。
■今回のはま旅「石川町」周辺
(googleマップより)
・「甘味処 いろり」横浜市中区石川町1-1
・「結城屋靴店」横浜市中区石川町1-13
・「洋食の美松」横浜市中区石川町1-19
・「Peace Flower Market & NATURAL FOOD’S Co.」横浜市中区石川町1-13-12
・「肉屋の肉料理 みずむら」横浜市中区石川町1-13
・「蓮華草元町工房」横浜市中区山手町26-10
・「金米堂本店」横浜市中区石川町2-60
― 終わり ―
うなぎいぬさん
2012年10月12日 13時38分
逆浸透「幕」→「膜」が正しいと思います。揚げ足を取るようですみませんが。