開通見込みがなく放置されている、戸塚区の巨大マンション群の下のトンネルは今後どうなる?
ココがキニナル!
東戸塚近くのマンション「フォートンの国」の下のトンネルは、いつ開業するのでしょうか。片側2車線のトンネルですが前後がほぼ手つかずで廃墟化しています。(katsuya30jpさん/コウだよさん)
はまれぽ調査結果!
計画道路・桜木東戸塚線のトンネルである。計画道路建設の一環としてではなく、上品農土地区画整理事業の一環として作られた。開通は今のところ未定
ライター:小方 サダオ
周辺住民はどう思っている?
未完成の状態のトンネルについて周辺住民の方はどのように思っているのだろうか?
まずはマンションの前で幼稚園の送迎バスを待っていた女性にお話を伺った。
「ここには10年前に来ました。車利用者にはトンネルはあったら便利だと思います」
トンネルの上から道路の建設予定地をのぞむ
「このトンネルの出口付近になる反対側の名瀬町には、新戸塚病院があり、そこに行くには便利ですが、東戸塚駅東口に病院があるので問題はないです。それよりもトンネルが出来ると名瀬幼稚園にすぐに行けるので便利ですね。送迎バスは大回りをしてここまで来ています」
「こちら側半分だけが出来上がっているようですね。インターネット上にトンネル探検の様子を載せている人がいるので知りました」とのこと。
名瀬幼稚園の送迎バス
またトンネル付近で働くHさんに伺うと「トンネルの中にホームレスなどが住みついたら嫌ですね。この場所で夜勤をしているときにそのような人を見かけたりしたら怖く感じます。またトンネルの中に水が溜まって湿地帯みたいになっていますね」と答えてくれた。
トンネルの中に水が溜まっている
次に少し離れた団地に住む男性に伺うと「私は40年前からここに住んでいるよ。あのマンションのあたりは昔は山だったんだ。20年ほど前にブルドーザーで山をならしたりしているのを覚えてるよ。あのあたりの開発に関して地元からは特に反対はなかったけれど、近くにある宗教団体だけは反対したね」とのこと。
上から見たトンネルの入り口
また住宅地内の地元の方に伺うと「あれは区画整理の段階で出来たトンネルです。道路に関してはうるさくなりそうなので、出来ないでほしいです」と答えてくれた。
なぜトンネルへと導くはずの道路の姿ははっきりしないにもかかわらず、トンネルの入り口部分だけが完成しているのだろうか? また前出の「区画整理で出来たトンネル」という意味が分からず、キニナッた。
横浜市道路局・建設課に事情を確認
そこでこのトンネルと道路建設に関して事情を伺うために、横浜市道路局・建設課を訪れた。
横浜市道路局・建設課
建設課担当係長・麻生さん(左)と担当者2名
担当係長の麻生さんに問題のトンネルに関して伺うと「それは『権太坂和泉線(国道1号線の横浜市保土ケ谷区狩場町・権太坂と環状4号線の横浜市泉区和泉町・上飯田町広中塚交差点を結ぶ都市計画道路)』の、戸塚区上品濃にあるトンネル部分です」とのこと。
権太坂(青い矢印)と上飯田町広中塚交差点(赤い矢印)を結ぶ権太坂和泉線。
ピンクの矢印はトンネル
なぜトンネルが一部だけ出来上がっているのかを伺うと「まずこの地域に関してですが、1986(昭和61)年2月から2004(平成16)年11月まで東戸塚上品農土地区画整理事業という区画整理が行われました」
「まず土地区画整理事業について説明いたしますと、道路、公園、河川などの公共施設を整備・改善をし、土地の区画を整え、宅地利用の増進を図る事業のことになります」
土地区画整理前と後の比較図
「例えば港北ニュータウンなどがそうですが、都市として有効的に使いやすいように、山などを造成して、住宅や商業施設を建築する際に利用しやすい土地の区画に整えるのです」
「土地区画整理事業を進めるにあたっては、良好な住宅地造成を目的に、土地所有者が組合を設立し、地権者(土地の所有権、または借地権などの使用収益権を有する者)からその権利に応じて少しずつ公共施設用地として土地を提供してもらいます」
「事業後においては、宅地の面積は従前に比べ小さくなりますが、都市計画道路や公園などの公共施設が整備・改善され、土地の区画が整うことにより、地権者は利用価値の高い宅地を得ることができます」
土地区画整理後に宅地総価額が少なくなる場合は、地主に対して金銭による補償を行う
JR東戸塚駅周辺の土地区画整理図。ピンクの矢印がトンネルのある場所
「トンネルが一部だけ出来ている理由に関しては、土地区画整理事業の際に、その範囲内に都市計画道路・権太坂和泉線があったため、その部分を土地の区画整理事業のなかで、先行して建設することにしたからです」
「この区間は周辺の地形から、トンネル構造となりますが、道路の事業化がまだなので、土地区画整理事業の地区外に位置する部分には着手することができませんでした。しかし地区内においては、周囲にマンションが建つ計画があり、建った後でトンネルの工事を始めると、問題が生じる可能性があったため、トンネルの部分だけをつくってもらうことになりました。
「このトンネルは、区画整理の範囲内で止まっているため、入り口から140メートルまで出来上がっています。このような状況になったのは珍しく、横浜でここだけかもしれません。」
「また市の指導・出資のもと、当時の組合が施工したものですが、組合は解散していて、関係書類も破棄されているので、これ以上の詳しいことは分からないと思います」と答えてくれた。
土地区画整理の範囲と計画道路のトンネル部分が重なり、地区内のトンネルを先行して作ることになった
次に権太坂和泉線の建設計画に関して伺うと「1966(昭和41)年12月に都市計画決定された道路です。権太坂から名瀬道路までの区間は、都市計画決定はされていますが、事業化はされていません」
権太坂(青い矢印)から名瀬道路(緑の矢印)までは事業化はされていない
「権太坂和泉線の整備については、事業化した後、地元の方々の意見を聞き、土地の取得など行っていきます。しかし整備の優先度が低いと思われるため、これからどのタイミングで事業化になるかは未定です」
「当初は、道路のネットワーク上の必要性から都市計画決定されましたが、現在ではほかに完成した道路との関係などで、整備する時期は未定です」とのこと。
次にトンネルの未完成部分に関して伺うと「都市計画道路の未完成部分に関しては、残り全てがトンネルの構造になるのか、一部地上に出てくるのかは、詳細な現地測量及び設計などがされていないので、現時点では確かなことは言えません」とのこと。
山の谷間に道路が通っている(青い矢印)
出来上がっている部分の維持・管理に関して伺うと「トンネル内の排水や周辺の草刈などを行うなど、一年に一度ほど中に入り管理をしています。また、マンションの住民の方々から水溜まりにボウフラが湧くのではと心配され、水抜きを依頼されることがあります」と答えてくれた。
定期的にトンネルの中の水抜きを行っているという
計画道路の建設としてではなく、土地の区画整理の一事業としてトンネル建設を行ったのだという。
するともしこの道路建設が事業化されなくなった場合、土地区画整理の組合は意味のないトンネルを作らされたことになるのではないだろうか?
さらに詳しいことを調べるために、再び現地を訪れた。