【横浜の名建築】重要文化財 神奈川県歴史博物館
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第6回は、神奈川県立歴史博物館。創建時には、世界有数の為替銀行だったこの建物は、それにふさわしい威厳と堅牢さでさまざまなものを守っていた。
ライター:吉澤 由美子
最大の特長 ドームとコリント式大オーダー(複数階をつらぬく柱)
(続き)
関東大震災でドームは焼失したが、1967年に復元。
再建時は赤銅色だったドームは月日を経て緑青を吹き、落ち着いた色となっている。
魚のようなものはドルフィン。西洋建築では、海に関連した場所によく使われる意匠だ。
イルカとは思えない不気味な姿。手前は波を思わせるデザイン
ウロコがあるためか、火伏せの意味を持つシャチホコだと勘違いされることもあるらしい。
横から見たドルフィンはよりシャチホコ似?(画像提供:神奈川県立歴史博物館)
もうひとつの特長は、独特の立体感を生み出す、規則的かつ密に配されたコリント式大オーダー。
端にある大オーダーは2本を重ねた間に小ぶりの柱装飾がある
コリント式とは、上部にアカンサス(地中海オオアザミ)という植物の葉とツルをあしらった装飾のある柱のこと。
正面入り口とドームの間にある三角ペディメント(破風)の複雑さがコリント式の飾りと連動し、スカイラインに近い場所をぐるりと華やかに彩っている。
歴史エピソード
この建物を設計したのは、大蔵省などで数多くの官庁建築を手がけた明治時代を代表する建築家のひとり、妻木頼黄(つまきよりなか)。
妻木頼黄のライバルに、日本銀行本店を設計した建築家であり、建築学会会長も務めた辰野金吾がいる。
日本銀行と横浜正金銀行。日本を代表する2つの銀行の建物が、このふたりによって造られたということに、なにか因縁を感じる。
正面をやや上から望むと、ドームの大きさが際立つ(画像提供:神奈川県立歴史博物館)
どちらの銀行も、堅牢かつ重厚な姿だが、銃眼があると伝えられる威圧的な日本銀行に比べ、この建物はどこか優雅で繊細だ。
博物館になったことで内部見学が可能に
ドームの真下にあるのが正面入口。
一見、石造のように見えるこの建物だが、実際は、「補強煉瓦造・石造」。
煉瓦メインで補強に鉄材が使われ、外側にかなりの厚みの石がはってあるという構造だ。
正面の階段から入口を見上げる。格式を意識させる角度だ
中に入ると、天井の照明にステンドグラスがはまっている。
このステンドグラスは平成7年の改修でつけられたもの