ロウソクとレトルトカレー
前田ハヤト(30)
あの日、あの時間、僕は家にいた。当時付き合っていた彼女と、遅めの昼ご飯を食べていた。彼女が作ってくれたチャーハンだ。ダイニングテーブルに大きな中華鍋と2枚の取り皿を並べ、向かい合っていた。
突然、背後のテレビがブツッと切れた。何事かと思う間もなく、次いで大きな揺れが襲ってきた。わけも分からず、必死でテーブルと中華鍋を押さえていた記憶がある。
僕の住んでいた地区は、翌日の朝まで停電が続いた。日が落ちる前に外へ出ると、警察官が手信号で交通整理をしていた。人はまばらで、空気がひんやりと冷たかった。
近くのコンビニに入ると、床がモップ掛けされた跡があり、少しべたついていた。陳列棚にはほとんど商品がなかった。店員は電卓を使い、手作業で会計をしていた。僕たちは食パンを買った。
その夜、ロウソクを灯して過ごした。ガスと水道は使えたので、レトルトカレーを湯煎して温めた。コンビニで買った食パンとレトルトカレー。ロウソクの心許ない明かりの中で食べたその味を、今でも覚えている。
やさしい明かりの中で過ごしたあの時間。肩を寄せ合って見つめた灯の温もり。ほんのり甘かったカレー。
あの日から、9年が経った。
突然、背後のテレビがブツッと切れた。何事かと思う間もなく、次いで大きな揺れが襲ってきた。わけも分からず、必死でテーブルと中華鍋を押さえていた記憶がある。
僕の住んでいた地区は、翌日の朝まで停電が続いた。日が落ちる前に外へ出ると、警察官が手信号で交通整理をしていた。人はまばらで、空気がひんやりと冷たかった。
近くのコンビニに入ると、床がモップ掛けされた跡があり、少しべたついていた。陳列棚にはほとんど商品がなかった。店員は電卓を使い、手作業で会計をしていた。僕たちは食パンを買った。
その夜、ロウソクを灯して過ごした。ガスと水道は使えたので、レトルトカレーを湯煎して温めた。コンビニで買った食パンとレトルトカレー。ロウソクの心許ない明かりの中で食べたその味を、今でも覚えている。
やさしい明かりの中で過ごしたあの時間。肩を寄せ合って見つめた灯の温もり。ほんのり甘かったカレー。
あの日から、9年が経った。