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24年越しの肩たたき券

齋藤浩介(29)

 先日久しぶりに父に会った。田奈の実家には、近いにもかかわらずなかなか帰っていなかった。社会人になってからは年に一度、正月に帰るだけになっている。

 決して不仲なわけではない。でも、いつからだろうか、気づいたときには言葉を交わすことがほとんどなくなっていた。父も父で、あまり子どもに積極的に関与する人間ではなかった。休日にどこかに連れて行ってもらった記憶など数えるほどしかない。

 今回の帰省でも、特に何を話すわけでもなく皆でおせちをつまんでいた。しかし食後、お酒の入った父がおもむろに座を立って、収納棚の引き出しの奥から一枚の紙切れを取り出した。

「これ、今使ってもいいか」

 その紙切れには、「かたたたきけん」と拙い文字が書かれていた。幼稚園の頃、私が父の日に贈ったものだった。

 父は体が大きい。若い頃は柔道で鍛え、警察官として38年立派に勤め上げた人間だ。だが、その背中は今、なんとも弱々しく頼りなかった。記憶の中の父はもっと肉付きがよく、力強かった。

 思いがけないことの連続に私は驚いた。少し寂しくもなった。でも、すっかり小さくなってしまった父の背中に、改めて偉大さも感じた出来事だった。また近々、帰ろうと思う。

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