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借りにくくなる? 横浜市立図書館が結んだ相互利用協定は市民にとって得?

ココがキニナル!

2017年3月から横浜市民でも川崎・鎌倉・藤沢・大和の各市の図書館での本の貸出が可能になりました。この結果、人気本の貸し出し状況がどのように変化するのか気になります。(boyoさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

横浜市民の読書環境の利便性向上を目的に導入。他市市民はリクエストや取り寄せができず人気本の貸出に影響はない上、他市にも魅力的な図書館多数

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ライター:松崎 辰彦

横浜市立図書館が協定を結んだ・・・本が借りにくくなる?



2017(平成29)年2月21日、横浜市中央図書館から「横浜市は、隣接4市(川崎市・鎌倉市・藤沢市・大和市)と図書館の『相互利用に関する協定』を2月20日までに締結しました」との発表があった。

相互利用に関する協定とは、協定を結んだ各々の自治体の居住者が、相手側の自治体内にある図書館で蔵書を借りることが可能になるということである。

 

横浜市は4つの隣接市(黄色)と協定を結んだ
 

これにより横浜市民は、その市に在勤・在学でなくても上記4市の図書館で図書を借りることができるようになり、同時に横浜市立図書館での4市市民への図書貸出も可能になった。

これまで横浜市の市立図書館は、こうした協定を他市と結ぶことなく運営されてきた。

その理由は“現在の利用対象者だけでも資料提供が十分とは言えない状況であり、他市とこうした協定を結んだ場合、横浜市立図書館への利用が集中する可能性があるため慎重に検討を進めていく”などという説明がなされてきた。つまり横浜市民だけでも、需要に供給が追いつかないというわけであった。

 

それならなぜ今その協定を結んだのだろう?
 

今回の措置は横浜市市民にとって果たして歓迎すべきものであろうか。キニナル投稿者も懸念しているベストセラーの争奪戦など、考えられるのではないか。
横浜市民にとって他市の図書館を訪問するメリットはあるのだろうか?



検討のきっかけは横浜市民の声


 
「(導入の目的は)横浜市民の読書環境の利便性の向上です。市境に住んでいる方などは、隣の市の図書館の方が近い場合もあります。これまであまり図書館を利用していなくても、近くにあれば利用する、という方もいらっしゃると思います」

こう説明するのは横浜市中央図書館企画運営課の堀内牧子(ほりうち・まきこ)企画調整係長。
野毛にある横浜市中央図書館でお話を伺った。

 

よろしくお願いします
 

左から横浜市中央図書館企画運営課沖間俊明(おきま・としあき)課長、同堀内係長、同高橋宏子(たかはし・ひろこ)さん。

「横浜市立図書館規則では、横浜市に在住か、在勤・在学でないと図書の貸出ができないという規定がありました。それを改正して準備が整ったのが、この3月ということです」

当初は他市市民への貸出は難しいと考えていた横浜市立図書館だが、横浜市民の「ほかの市の本も借りたい」という声が増えてきたこともあり、2014(平成26)年ごろから隣接市と相互利用の協定を結ぶ検討を始めた。そして、今年2017(平成29)年に実現したとのことである。

「この協定により、多くの横浜市民の方が、他市の図書館を利用できるようになりました。また、他市の市民の方にも、横浜市立図書館をご利用いただいています」

 

中央図書館には多くの利用者がある
 

他4市の市民が横浜の図書館で借りることのできる冊数、日数は横浜市民と同じ条件。

「他市との相互協定を検討した時点で、たしかに貸出が追いつかないのではという懸念がありました。そこで導入されたのが本の予約(その館にない図書を別の館から取り寄せること、図書購入のリクエストも含む)制限です。他市の方は横浜市立図書館では本の予約ができないことになっています。同様に横浜市民の方も他市の図書館では本の取り寄せ、リクエストなどの予約はできません」

「この措置によって貸出状況は現状が維持されるという予測がなされ相互貸出制度の導入に踏み切ることができましたし、事実現在まで貸出状況に大きな変化は生じていません」

横浜市立図書館の本は、飽くまで横浜市民優先。他市の図書館も同様ということである。

 

全国でもトップクラス、約170万冊の蔵書がある横浜市中央図書館
 

人気本やベストセラーには予約が集中するものだが、やはりある種の限定をしなければいつまでたっても本が手元に来ないことになる。本の取り寄せ、リクエストも同様で、サービス対象を限定することはスムーズな運営のためにも必要なことと、説明された。

なお図書館情報システムの改修に、特に費用は要さなかったとのことである。

今後については「ほかの隣接市とも協定の締結に向けて調整を進めていきたいです」と堀内さん。現時点では、とにかく広報に務めてこうした制度ができたことを横浜内外市民に知らせたいと強調した。



他市民にとっても今回の協定はメリットが大きい



それでは今回の協定の相手となる他市の見方はどうであろうか。その一つである川崎市立中原図書館利用サービス係の紺野敦(こんの・あつし)係長にお話をうかがった。

 

中原図書館前に立つ紺野係長
 

「今回の協定は川崎市民には非常にメリットが大きいと言えるでしょう。これまで横浜市さんには図書館の相互利用を提案してきましたが、このたびようやく実現できました」と喜びの声が聞けた。

また、同館は広く市民の生涯学習を支えるとともに、地元の文化を支える拠点でもあるという考えから、これまでにも他市の方や横浜市民にも図書の貸出を認めてきた。

 

川崎市の郷土史なども多くある
 

「横浜市民の方は、これからぜひ川崎市の図書館にお越しいただき、本を借りていただければと思います」と紺野係長。

ここでこのたびの措置で横浜市民が貸借可能になる図書館全館を見てみよう。

 

画像を見て分かるように、27館も利用できる図書館が増えた
 

相互利用の制度のメリットが多いのは分かったが、そもそも他市の図書館に出向く機会がなければその恩恵を得ることはできない。蔵書数がトップクラスの「横浜市中央図書館」がある横浜市民にとって、他市の図書館に訪れるきっかけがもう一押しほしいところ。

そこで、協定を結んだ隣接市の中から個性的な図書館や「神奈川県内最新」の図書館など横浜市民でも行ってみたくなるような図書館を探してみた。