「かわさき名産品」にも選ばれた川崎名物「追分まんじゅう」、大ヒットに結びついた秘話とは?
ココがキニナル!
川崎の多摩川菓子店の「追分まんじゅう」は安くて美味しくて大人気で、川崎名物だと思います。他で見ないタイプのおまんじゅうなので、誕生秘話をインタビューして下さい。(タロー先生さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
発売当初は「福福まんぢゅう」。繁華街などへ行商を続けるうちに、独特の食感がクチコミで広まり、いつしか「追分まんじゅう」と呼ばれるようになった
ライター:河野 哲弥
50年以上続く、ロングセラーの秘密を探る
「食感がもっちりしていて、一度食べるとクセになる」
そんな声を聞くことができるのは、JR鶴見線「浜川崎駅」からほぼ真北に歩くこと約18分、「追分交差点」の近くに位置する多摩川菓子店。同店の看板商品である「追分まんじゅう」は、1956(昭和31)年の創業とほぼ同時に売り出され、以来、約半世紀にわたり人気を集めている。
買い物客の流れが絶えない、同店外観の様子
手のひらサイズの「追分まんじゅう」(税込み1個120円)
この商品、一般社団法人川崎市観光協会が認定する「かわさき名産品」にも選ばれ、今では営業時間9時間内で1日1000個ほどが買い求められているという。平均すると、約30秒に1個のペース。まさに飛ぶように売れていく計算だが、大ヒットの秘密はどこにあるのだろうか。お彼岸を間近に控え、涼風そよぐ秋晴れの中、同店を訪れてみた。
国産の原材料にこだわった素朴な風味
店内で待っていてくださったのは、2代目にあたる多摩川菓子店のご主人、木村茂(きむらしげる)さん。その奥では、3人の息子さんたちが、ちょうど「追分まんじゅう」を作っていた。
作業服に身を固める木村さん
約2秒に1個のスピードで成形されていく同商品
蒸し上げると、直径にして約倍の大きさになる
「今では機械で製造していますが、かつては一つ一つが手作業でした。店頭でいきなり50個と言われ、パニックになったこともありますね」と、往時の思い出を語る木村さん。まずは食べてみてくださいとのことで、できたてを頂くことになった。
あんこがぎっしりつまっている
驚いたのは、フォークを沈めていくときの柔らかさ、そして、つぶれずに元通りの姿に戻っていくしなやかさである。続いて一口。なるほど、店頭で利用客が口にしていたように、「食感がもっちり」している。
木村さんによれば、その秘密は、北海道産の厳選された小麦にあるそうだ。一般の小麦粉だとコシが強すぎて、「フワモチ」にはならないらしい。そのもっちりとしたまんじゅうが、手や包装紙にくっついてしまうことから、きな粉をかけるという工夫を思いついたのだとか。
きな粉が湿らないよう、注文されてから振りかける
もちろん、きな粉の原料である大豆、アンに使われる小豆や砂糖なども含め、材料はすべて国産品というこだわり。発売当初は外国産のものを使用していたが、より良い品質を追求し、少しずつ改良を加えてきたという。
一方で、材料を変えたことにより風味などが劇的に変わってしまうと、ファンの期待を裏切ることにもつながりかねない。創業時からほとんど変えていないという価格も含め、そこには、味を守りながら改良し続ける、老舗ならで苦労が垣間見える。