JR辻堂駅北側の丘陵地に広がる湘南ライフタウン。ここにモノレール計画があったという。

　

　藤沢市西部と茅ヶ崎市堤地区にまたがるニュータウン
　

　西部土地区画整理事業区域図 （藤沢市HPより）

藤沢市遠藤の湘南ライフタウンのバスターミナル付近で、モノレール計画を知っているか聞いてみた。

「聞いたことないッスね。自分、大学入学で引っ越してきてまだ2年ですし」（20代・男性）

　

　水曜午後3時・・・残念ながらあまり人がいない

「メインストリートがまだ舗装されていないころから住んでいるけど、モノレールなんて聞いたことがないわ」（70代・女性）

「モノレールじゃなくて相鉄線が湘南台から延びるって聞いたような」
「違う違う、延びるのは横浜市営地下鉄ブルーラインでしょ！？　SFC（慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス）の前に大きな病院ができて、駅ができるんだよ」
「え！？（混乱）」（40代・ママ友グループ）

・・・諸説あり。
個人的に聞いたことがある噂だったが、広く共有されているわけではないらしい。


　

噂の真相！「藤沢モノレール計画」はなかった

　

　噂の真相を求めて、藤沢市役所へ

「湘南ライフタウンへのモノレール計画というものは、藤沢市としては一切立ち上げたことがありません」

お話しいただいたのは、藤沢市役所都市建築部都市計画課の小泉康理（こいずみ・やすのり）課長補佐。

　

　お話いただく小泉課長補佐のうしろ姿

「実在しないモノレール計画がなぜ噂されるようになったのかは不明です。宅地開発に関わっていた企業の広告などにそのような内容が盛り込まれたのかもしれません」

将来的な利便性向上を見越して物件購入を決めた新規住民の期待が、噂という形で表れたのだろうか。

宅地開発とはいつごろだったのだろう？ ここで少し湘南ライフタウンの歴史を振り返っておこう。

おさらい、湘南ライフタウンって？

昭和30年代の高度経済成長を受けて、進行しつつあった都市のスプロール化、つまり無秩序な乱開発を防ぐため、藤沢市（当初は一部茅ヶ崎市）が手がけた区画整理事業によって生まれた街が湘南ライフタウンだ。

　

　事業前の航空写真。農地と住居が点在（藤沢市HPより）
　

　事業後。農地を残しつつ計画道路と整理区画が並ぶ （藤沢市HPより）
　

1967（昭和42）年、藤沢市は「西部開発事務局」を設置、1972（昭和47）年に「藤沢市都市計画事業西部土地区画整理事業」としての認可を受けて計画に着手した。茅ヶ崎市から事務委託を受けた部分を合わせて事業面積は380ヘクタール（横浜スタジアム145個分）弱、このエリアに現在では3万数千人が暮らしている。

　

　のどかそのものの街並みが・・・ （藤沢市HPより）
　

　事業によって近代的に生まれ変わった（藤沢市HPより）

都市と農村の共生を目指して開発地内の農家560戸をすべて残した設計は建築家の故・黒川紀章氏によるもので、1987（昭和62）年には「かながわのまちなみ100選」に選定されている。

　

　高齢者から若年層まで共生するため、高層住宅から・・・
　

　一戸建て （藤沢市HPより）
　

　低層集合住宅まで、多彩な住宅が並ぶ

　

バスが似合う街・湘南ライフタウン

　
湘南ライフタウンから最寄駅である辻堂駅、もしくは湘南台駅、善行駅までは、徒歩でのアクセスが難しく、公共バスの利用がメインだ。

　

　大通り沿いはひっきりなしにバスが行き交う
　

そのため、主要道路である「けやき通り（都市計画道路辻堂駅遠藤線）」を中心にしたルートを運行するバス便は実に豊富。辻堂駅までのバス便は1日に片道約280本、午前7時から8時のピーク時にはなんと1時間に40本を超えるバス便が運行されている。

　

　この路線だけで平日午前7時台には22本ものバスが！

しかし、これだけの本数があっても、住民に交通への不満は残るようだ。

愛犬をお散歩中のJSさんは「特に雨が降って道路が渋滞すると、バスは時間が読めなくなります。子どもの通学などを考えると、時間が確定している交通手段はほしい」とおっしゃっていた。

　

　JSさんの愛犬たち。お散歩中にスマン

ご友人とウオーキング中のご婦人には、「辻堂駅北口に『テラスモール湘南』ができてから、道路渋滞が激しくて。土日祝日などは、バスの運転手さんも『ここで下車して駅まで歩かれたほうが早いですよ』なんておっしゃるんですよ」と話していた。

　

　辻堂駅付近ではバスの後ろにまたバスという光景も
　

　辻堂駅北口付近は交通が集中しがち（藤沢市HPより）
　

　特に休日の「テラスモール渋滞」は住民の悩みの種
　

確かにライフタウンにはバスが似合う。しかし、
バスは「時間が読めない」のがネックなのだ。