モノレールの噂の出どころは「ガイドウェイバス」？

　
こうしたバスのデメリットについて、藤沢市はどう考えてきただろう？

「確かにバスのみでは定時性の確保が難しく、速達性が低くなります。こうした問題を解消するため、1974（昭和49）年ごろから、新交通システム導入の検討が始まりました」

　

　小泉課長補佐のお話は続く
　　

「具体的に検討されたのが『ガイドウェイバス』。ドライバーによる運転と、専用軌道での自動高速運転を併用したハイブリッドバスです」

　

　市街地では専用軌道を走行　※

実際に国内で運行している「ガイドウェイバス」に、愛知県名古屋市北東部を走る「ゆとりーとライン」がある。名古屋市、名古屋鉄道、ジェイアール東海バスなどが出資する第三セクター会社・名古屋ガイドウェイバスの運営するもので、2001（平成13）年に開通した。

　

　この姿、ちょっとモノレールっぽくもある？　※
　

　この計画がモノレールと勘違いされたのかも！？　※
　　

「事業のあり方として、行政主体、民営、第三セクターなどさまざまな形が検討されました。このエリアでバス運行を手がける神奈川中央交通さんも含め、2000（平成12）年ごろまで25年以上の長い時間をかけて費用や区間などの検討がなされたのです」

「当時予定された事業資本は約10億円、建築費を含めると100億円を超える規模の予算が必要という試算もあり、事業の採算性にも疑問符が残りました。最終的に、『ガイドウェイバス』導入について、検討の選択肢から除くという議会報告がなされたのは2006（平成18）年のことです」


　

LRTの噂は一体どこから？

　
では、最近になって聞かれるようになったというLRT（ライトレールトランジット：次世代型路面電車システム）導入の噂の出どころはどこなのだろう？

「辻堂駅北口の再開発である湘南C-X（シークロス）開発が進むなかで、2006（平成18）年以降、新たな交通システムとして連節バスやLRTなどの可能性についての模索が始まっているのは事実です。2030年を見据えた中長期的な交通施策として、2014（平成26）年3月に策定された『藤沢市交通マスタープラン』にも、『（仮）新南北軸線』、つまり湘南ライフタウンと JR辻堂駅を結ぶ新たな交通システム導入の検討は盛り込まれています」

　

　地域別施策に「新たな交通システム導入」とある （藤沢市HPより）

「大庭隧道（おおばずいどう）中央部にスペースが確保されているほか、現状の道路幅員で単線軌道を敷くことも可能ではあります」

　

　大庭隧道中央には確かに余剰スペースが
　

　けやき通りに関しては幅員に余裕もありそうだ
　

　でも・・・坂道だらけですよ？
　　

「確かに現状の道路斜度ではLRTが走ることは難しく、また、中間駅近くの用地確保といった問題もあるのも事実。すぐにというわけにはいきませんが、新たな交通システムの検討は続けていきます」

　

　東西南北、坂、坂、坂！　ライフタウンは坂の街

「また、中短期的な計画として、すでに湘南台方面に導入している連節バスや、急行バスの導入などの検討を進めています。こうした方法でバスを効率的に運行することは、駅周辺の道路渋滞緩和にも有効です。また、基幹路線沿いではないエリアにお住まいの方の利便性向上のために、利用者の要求に合わせて運行するデマンドバス、乗合タクシーなどの地域交通の整備に向けて検討しています」

　

　短期中期長期、さまざまな視点が交通施策には必要

ちなみに、湘南台駅からは、慶應大学SFCを経由して新幹線新駅誘致を進める寒川町倉見地区までの約8kmを結ぶ相鉄いずみ野線延伸計画が構想されており、SFCまでの約3kmは第１期区間として検討がなされている。

　

　秋葉台公園付近とSFC前の2駅新設で検討中 （藤沢市HPより）

相模鉄道株式会社 経営管理部によると、「神奈川県、藤沢市、寒川町、慶應大学と弊社で協議会を設立し、実現に向けた検討を進めています。整備主体と営業主体を分離する、いわゆる上下分離方式だけでは採算性の確保が難しく、公的資金など無利子資金の調達や運行経費の圧縮が必要であるという結論が出され、現在は神奈川県を中心に検討している段階です」

「実現には多くの課題があり、早期整備は困難な状況ではありますが、今後も引き続き、実現に向けた検討を進めたいと考えています」とのことだった。　

すぐには難しいかもしれないが、新たな公共交通といずみ野線延伸、両者が実現すると、湘南ライフタウンの利便性は大きく向上しそうだ。


　

取材を終えて

　
冒頭街の声にあった「SFC前に大きな病院」の計画があるのは事実。2015（平成27）年9月、2017年秋の医療法人社団健育会「湘南藤沢記念病院」開設が発表された。

情報は人の口を通るごとに少しずつ形を変え、いつの間にか事実と異なる噂となって広がることもあるということを、今回の取材では痛感した。

交通にまつわる情報は、生活に大きく関わるものだけに人々の関心も高く、話題になることが多いことから、噂も多岐に渡ったのかもしれない。いずれにせよ、新たな交通網の実現は楽しみだ。

　
―終わり―
　

＜参考＞
名古屋ガイドウェイバス株式会社「ゆとりーとライン」
記事中の※画像は名古屋ガイドウェイバス株式会社ゆとりーとラインHPより引用