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自生地の開発事業で天然の「三浦メダカ」って絶滅してしまったの?

ココがキニナル!

京急の三崎口駅周辺の開発事業の際、三浦メダカの生息地の「三戸地区・北川」が埋め立てられました。油壷マリンパークで飼育しているようですが、もう天然物の三浦メダカは絶滅してしまった?(まさしさん)

はまれぽ調査結果!

京急電鉄が三浦市内に所有するビオトープで暮らしているメダカがいる。稚魚も確認でき、メダカが生きていく上で必要な環境が整いつつある

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ライター:田中 大輔

三浦メダカの唯一の自生地であった三浦市初声町三戸(はっせまちみと)地区にあった北川湿地は、2010(平成22)年4月に始まった京急電鉄による開発事業で消滅してしまった。

住みかを失った三浦メダカたちは、キニナルにある京急油壺マリンパークなど、いくつかの施設で飼育が行われているため、絶滅はしていない。
 


マリンパークでは飼育されている
 

しかし、「自然環境の中で暮らす三浦メダカ」はもう残っていないのだろうか、という今回のキニナル。神奈川県のレッドデータブックでは「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種」とされている、三浦市の野生メダカの状況を取材した。



三浦メダカってどんなメダカ?



その前に、そもそも「三浦メダカ」とはどんなメダカなのか、という話を少しだけ。

現在の分類では、単に「メダカ」という種名の魚はおらず、日本にいる野生のメダカは「ミナミメダカ」と「キタノメダカ」の2種に分けられている。

2012(平成24)年以前は両方、一緒くたに「メダカ」とされていたので、知らない人も多いだろう。関東地方に生息しているのは、このうちの「ミナミメダカ」の方だ。
 


ミナミメダカ。どこにいたメダカかは後ほど
 

話題の三浦メダカも種としてはミナミメダカで、「三浦メダカ」という独立した種は存在しない。同様に、横浜メダカや藤沢メダカなどの地名を冠したメダカもミナミメダカだ。じゃあ何が違うのか、と言うと、その違いは遺伝子レベルの話になる。

これはメダカや魚類に限ったことではないが、同じ種の動物であっても離れた地域に住んでいると、遺伝的な特性が変化することがある。

見た目にはなんの違いも見当たらないけれど、遺伝子を分析すると、その場所に住んでいる個体たちだけにある「三浦らしさ」や「横浜らしさ」を持ったメダカが見つかるというわけ。
 


こちらが横浜メダカ。見た目には普通のミナミメダカ
 

こういった地域ごとのグループを難しい言葉では「地域個体群」と呼ぶため、「三浦市のミナミメダカ地域個体群」というのが三浦メダカの正体ということになるのだ。

ちなみに、小学校の授業などに登場する黄色がかったメダカは「ヒメダカ」というメダカで、人の手が入ったものだ。
 


学校やペットショップでよく見るのはこのヒメダカ(Wikimedia Commons)
 

また、野生メダカのことを俗に「クロメダカ」と呼ぶが、これはホッキョクグマを一般にシロクマと呼ぶのと同じこと。ただし、品種改良によって人為的により黒い色を出した「クロメダカ」もいるので注意が必要だ。



絶滅してない! 三浦メダカは池の中



さて、三浦メダカを取り巻く現状に話を戻そう。結論から言うと、野生環境に生きる三浦メダカは絶滅していない。
 


草の陰からコンニチハ。野生環境で暮らす三浦メダカ登場
 

前述の通り、2010年に始まった開発事業によって、三浦メダカの自生地だった北川湿地はなくなってしまった。開発事業の是非についてここでは触れないが、北川湿地にメダカが住めなくなってしまったことは事実だ。
 


赤丸のあたりが「北川湿地」と呼ばれていた場所(Googleマップより)
 

とは言え、京急だって何も考えずに動植物の住みかを人間用に造り変えているわけではない。

一般にはあまり知られていないが、京急では北川付近の所有地をビオトープ(=生物が住みやすいように環境を整えた空間)として整備して、北川生まれの動物たちを引っ越しさせることで保全する取り組みを行っている。

現在、そのビオトープは復元のデータを取る段階にあるため、一般には公開されていない。そのため詳細な場所も秘密ということで、悪しからず。
 


緑にあふれるビオトープ。池などが点在している
 

今回は、2017(平成29)年5月中旬に行われたビオトープでの調査に同行させてもらい、野生の三浦メダカたちの現状を追った。

調査の参加者は、神奈川県水産技術センター内水面試験場、三浦メダカの会、そして京急から現地の管理を委託されている新日本開発工業株式会社の三者。内水面試験場は、県水産技術センターの組織で淡水域に関する研究を行っている試験場だ。
 


相模原市にある同試験場(ホームページより)
 

この調査には主任研究員である勝呂尚之(すぐろ・なおゆき)さんらが参加。勝呂さんは京急が保全活動に伴い立ち上げた専門家委員会にも名を連ねる水産学のエキスパートだ。

三浦メダカの会は、三浦の魚を知る会を母体に持つ団体で、2000(平成12)年に北川の開発計画が持ち上がった際に専門家とともに調査を行い、その後三浦メダカの会として、三浦市内の野生メダカの保全や啓蒙を行っている。今回は同会から西垣さんら複数のメンバーが参加した。