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自生地の開発事業で天然の「三浦メダカ」って絶滅してしまったの?

ココがキニナル!

京急の三崎口駅周辺の開発事業の際、三浦メダカの生息地の「三戸地区・北川」が埋め立てられました。油壷マリンパークで飼育しているようですが、もう天然物の三浦メダカは絶滅してしまった?(まさしさん)

はまれぽ調査結果!

京急電鉄が三浦市内に所有するビオトープで暮らしているメダカがいる。稚魚も確認でき、メダカが生きていく上で必要な環境が整いつつある

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ライター:田中 大輔

メダカもエビもウナギも!



調査は、ビオトープ内にある複数の池や沢などの水場で生物を採集し、生息数やサイズを測定するという内容だ。

参加者たちは足元から胸辺りまでを覆う長靴、通称「胴長」を装備して、水場で網を振るった。勝呂さんは「メダカは30匹くらい捕れるといいね」と言い残し、池へ。
 


 

網ですくって、動物たちを探していく
 

もちろんメダカだけを探しているわけではなく、同じ池で暮らす多様な動物たちを調査していく。

例えば、エビの仲間。陸側の池にはミゾレヌマエビなどがいるし、海に近い水場ではテッポウエビが見つかるなど、いろいろな種類のエビが住んでいる様子。なじみの深いところでは、食材としても利用されるテナガエビの姿も。
 


から揚げでおなじみのテナガエビ。この日は2匹捕れた
 

ほかにもスミウキゴリなどのハゼの仲間やウナギ、カニ、ホタルの幼虫のエサとなる巻貝であるカワニナなど、多種多様な生物が網にかかってくる。
 


こちらはウナギ。蒲焼きにするあのウナギだ
 

海に近い場所ではハマガニ(中央の大きいカニ)も見つかった
 

水の中だけでなく、周囲には鳥や昆虫、この日は姿を現さなかったがタヌキなどのほ乳類も生息しているそうだ。
 


アサヒナカワトンボも姿を見せる
 

網にかかったヤゴ。ギンヤンマのヤゴとのこと
 

は虫類も。こちらはカナヘビ
 

そして、今回一番会いたかった三浦メダカたちも、その姿を見せてくれた。
 


これが三浦メダカ。体長3cm弱くらいのサイズ
 


池を泳ぐメダカは見つけるのも、撮影するのも一苦労
 

調査の行われた5月はメダカの繁殖期が始まった辺り。成魚だけでなく、ふ化したばかりの赤ちゃんメダカも捕獲された。
 


赤丸の中にいるのが稚魚。ふ化したばかりだそうだ
 

必ずしも、「大人のメダカが暮らしていける環境」イコール「自然に繁殖が行われる環境」ではないので、赤ちゃんがいるというのはメダカが生きていく上で適切な環境が整ってきているという意味でもある。

ちなみに、この稚魚は小さすぎて網ではすくえない。
 


水中をじっと見つめる勝呂さん
 

勝呂さんはこのサイズの赤ちゃんを、池の中を覗いて肉眼で発見し、ゆっくりじっくりと手ですくうのだから、いやはや職人技と言ったところ。



生き残る「野生メダカ」



4時間ほど行われた今回の調査では、全部で21匹のメダカが捕獲された。また、成魚とは別に、20匹前後の稚魚も発見。

捕まえた生き物は、数や大きさ、重さなどを測定してデータを取った後、基本的にはもともといた場所へリリースされていった。
 


今回捕まえたメダカ、全21匹
 

メダカだけでなく、すべての生物のデータを計測
 

採集の後は、しっかり記録を残していく
 

調査の指揮を執った勝呂さんは、「目標だった30匹には届かなかったけど、稚魚も見られたし問題はないでしょう」と笑顔。多様性の高い環境であるため、「メダカだけが爆発的に増えることはない」そうで、全体のバランスの中で安定した数を維持していくのが理想的なんだそうだ。

ただ、三浦メダカは数が少なくなってしまっているので、「保険として、このビオトープにメダカだけが住む池も作ろうかと思っている」と勝呂さんは言う。
 


ほかの動物と池で同居するメダカ。全体のバランスが大切
 

今回見つかった三浦メダカたちは、北川で暮らしていた野生メダカの子孫に当たる。内水面試験場やメダカの会が北川で採集・飼育し、2013(平成25)年ごろから複数回に分けて放流したメダカの血を引く個体たちだ。

また、池を含め、周囲の環境そのものも人が手をくわえて整備を行っている。

「保全はただ放っておけばいいわけではない。人の手による維持管理が不可欠」と言う勝呂さんは、「例えば、植物が増えて池が浅くなりすぎたら、メダカやほかの生物にとっていい環境は維持できない」と保全の難しさを話す。
 


自然が多いのはいいこと。でも、ほったらかしにもできない
 

飼育下を経ていることや、人が環境を整えていることを持って「野生ではない」という人もいるかもしれない。確かに、何をもって野生というかは難しいし、この場所が三浦メダカの自生地でないことは事実だ。

しかし、勝呂さんは「野生の状態と言っていい」と胸を張る。

言ってみれば、トキやコウノトリを野生に戻す取り組みと同じことが行われているわけだ。三浦メダカを守る意思と知識、技術のある人たちの手による再導入という形で、メダカたちは自然環境の中で生活を送っているというのが現状なのだ。



取材を終えて



現在は非公開の管理地となっているこのビオトープ。勝呂さんは、「いずれは一般の人にも見てもらいたい」と話す。「5年とか10年くらいして、もう大丈夫だなとなったら、観察会をしたり、子どもたちに採集をさせたりしたい」と将来の理想像を夢見ている。

もともとの故郷は失ってしまった三浦メダカたちだが、新しい住みかは用意され、新しい生活が始まっている。こういった取り組みが功を奏して、いつか再び三浦メダカが「その辺にいる魚」に戻れる日がやって来るのかもしれない。


―終わり―
 

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