【横浜の名建築】横浜市指定有形文化財 横浜地方気象台
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第5回は、横浜地方気象台。当時最先端のモダンな外観デザインと、レトロで優しい室内に、気象に関するたくさんの機能が詰まった魅力的な建物だった。
ライター:吉澤 由美子
機能性と居心地のよさ
(続き)
そして、本庁舎の大きな魅力のひとつは、シャープな外観とあたたかみのある内部のギャップ。
小さな受付窓が左右についた玄関扉を開けると、室内の概要がひとめで見て取れる。
外壁に対して45度の角度がそれだけ広い視野をもたらしている。
右手には、事務室などがある。こちらは2階
玄関より左手は階段と展示室。2階の玄関上は応接室
内部は木の床、一枚板の分厚い階段の踏み板、エレガントな曲線を描く手すりと、優しい印象だ。
クールな外観と、優しい室内。間にある玄関扉が直線と曲線の装飾を持っていることで、正反対のイメージをうまく橋渡ししている。
シンプルなデザインを組み合わせることで、統一感を持たせている
単純に機能本位というだけではなく、心地よく過ごせる場所として配慮した設計は、各所に見て取れる。
たとえば階段の手すりの複雑な形状。実際に降りるとき、手を添わせると安心感のある角度で、理にかなった設計だとわかる。
有機的な息遣いを感じる手すりの形状
階段の親柱は、玄関柱の基部と似た幾何学的な意匠がほどこされ、ここにも内外のイメージを違和感なくつなぐ工夫が隠されている。
アールのついた階段の梁。天井が高いので圧迫感がない
創建当時の面影を忠実に再現した旧応接室
旧応接室は、ライト回りの天井部分に直線でアールデコ調の装飾。
つる草を思わせるアールヌーボー調のライトがアクセント