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鎌倉や横浜在住の仏像や仏画を作る仏師さんってどんな人?

ココがキニナル!

鎌倉で仏像や仏画を作っている仏師さんの取材をお願いします。 (小鳩さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

鎌倉で活躍する仏師の菅原千恵さん、横浜で活躍するアーティストの高杉嵯知さんをご紹介。お二人とも個性ある仕事をされている。

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ライター:松崎 辰彦

願望がかなえられるように



そんな菅原さんだが、仏像には自分なりの思い入れがあるそうである。
「これは私の心がけていることなんですが、立像の場合、必ず片足を前に出すようにしています。それは、この仏像を拝する人の願望が受け入れられ、かなえられることを願ってです」

仏像に手を合わせるとき、私たち凡夫は多くの場合、何がしかの願望を抱いている。
(いい就職先が見つかりますように)
(志望する学校に合格しますように)
(ステキな彼氏が見つかりますように)
こうした私たちの願いを、仏様が自ら身を乗り出して受け入れて下さるよう、片足を前に出すようにしているのだという。
 


片足が出ている


「仏像には基本的なルールがありますが、それを守ればあとは作り手の美的な好みの問題になります。それからお坊さんからのリクエストもあり、それも勘案します」
失礼ながら、仏師という感じがしない菅原さん。

「ほとんど皆さん、そういいます(苦笑)。それで部屋に入れて、ここにある仏像をお見せすると『えっ!』と驚かれます」
もとより今の時代、仏師は一般的な職業ではないようである。

「私も、自分の職業を人にいうときに困るときがあります。“ブッシ(仏師)”といってもわからないでしょうから『仏像作ってます』というときもあります」
こうした菅原さんのもとから「嫁入り」した仏像は、日本各地で多くの人びとの信仰を集めている。



不思議な出会いで“お嫁入り”



そんなお寺の一つが、横浜市神奈川区にある浄土真宗「倶生山(ぐしょうさん)なごみ庵」。外形は普通の民家だが、2012(平成24)年に菅原さんが創作した阿弥陀仏を迎えた。
 


なごみ庵
 

菅原さん作 阿弥陀如来


「入仏式(新しいご本尊をお迎えする儀式)ではこの狭い本堂に36人が集まり、床が抜けるのではないかと心配しました」
住職の浦上哲也(うらかみ・てつや)さんは回想する。
 


浦上哲也住職


「前に勤めていたお寺から独立し、自分で本尊を持ちたいと思ってインターネットで仏師を捜しました。一人の方に目星をつけて、よし、いよいよ電話しようと思っていた矢先、見ず知らずの女性から電話を受けたのです」
何気なく受け取った電話だったが、話の内容はなかなか深刻だった。

「人生相談のようなことを持ちかけられ、こちらもそれに長時間応対しました。後日、寺にお見えになり、あらためてお話をしたのですが、最後に『どんなお仕事をされていますか?』と聞いたところ『仏師です』というのでビックリしました。それが菅原さんで、お宅を伺って今まで彫られた仏様を拝見して、本尊制作をお願いすることにしました」

浄土真宗では“運命”といったことはあまりいわないのですが、この出会いにはさすがに驚きましたと語る。
 


穏やかな表情の仏様


入仏式も終え、多くの人が手を合わせる中で、本尊も「仏様らしくなってきた」という。
「お寺の仏像は、人が手を合わせる気持ちを受け止めていくのかな、と思います」
背後の光背は、浦上さんの手作り。ステンドグラス教室に通い、ご自分で作られたとのことである。
 


光背の広がりが神々しい


「菅原さんは法話会にも来てくださります。ご自分で彫られた御本尊に手を合わされるのは、どんなお気持ちでしょうね(笑)」
若々しいお寺に生まれた新本尊は、まさにお寺とともに成長しているようである。
 


人びとの心を受け止める仏様
 

住職夫妻




人びとの潜在意識で作り出した観音様



もう一人、鎌倉で活躍する仏画師というリクエストだが、美術館、仏具店などに問い合わせてもなかなかそうした人物に到達できなかった。それで今回は横浜で活躍する一人のアーティストをご紹介したい。
これから注目する女性は仏画師ではなく、観音画家と呼ばれている。彼女の描く観音画はきわめて個性的で、多くの注目を浴びている。その不思議な世界を、覗いてみよう。

みなとみらい線馬車道駅から歩いて数分。そこにあるのはかつて日本郵船の倉庫だった「BankART Studio NYK(バンカートスタジオ)」と呼ばれる白い建物である。ここは横浜市が推進している文化芸術創造の実験プログラムの中心地である。
 


こちらが「BankART Studio NY」


絵画やダンスなど多くのアーティストが創造性を発揮しているこの中で、高杉嵯知(さち)さんはみずからのスペースを確保し「Sachi庵」として訪れる人を迎えている。
 


高杉嵯知さん


周囲にあるのは彼女の筆から生まれた数多くの観音画。あまりに自由で、命ある女性のように生々しい。

「この観音様は、21世紀に生きる私たちが潜在意識で作り出した観音様です。私は観音を描くときは何も考えませんし、感情もありません。描き終わるまで、私自身どんな絵になるかわかりません」と高杉さんはほほえむ。