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川崎市のJFE敷地内、不法占拠の家屋群の正体は?

ココがキニナル!

川崎市池上町がキニナル!時代に取り残されたようなこの一角はJFEスチールという会社の土地を不法に占拠した住宅地だと聞いたが調査して!(マイクハマーさん)

はまれぽ調査結果!

JFEスチールという工場の敷地内に、違法に建てられた住宅群。工場と住民との間で定期的に話し合いの場などが設けられるが、いまだに解決していない。

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ライター:小方 サダオ

川崎市に話を伺う

次に行政としてはこの問題に、どのように対応しているのだろうか?

まずは川崎市の臨海部国際戦略室の担当者に伺うと「市としては放っておけない問題ですが、土地所有者と占拠者との民間同士の問題が大前提ですが、市としては間に入り、解決するように検討してまいりました」と答えてくれた。

次に川崎市が作成した、「池上町住環境整備に関する現況調査」の資料に関わった方を探すと、後出の飯塚正良(いいづか・まさよし)議員より、川崎市の「まちづくり局 登戸区画整理事務所」の担当者を紹介していただいた。
 


川崎市役所

 
そこでこの担当者にお話を伺った。

まずは「池上町住環境整備に関する現況調査」という資料と2010(平成22)年~2011(平成23)年の状況に関して伺うと「この資料は、当時(1995〈平成7〉年度)まちづくり局が作成したものと思われます。当時(2010〈平成22〉年)から総合企画局で担当しておりました当地区につきましては、JFEスチールが主導で、行政としてはそのサポート役として、立会い調査や勉強会を行いました」

「川崎市は、今まで長期にわたってこの池上町の問題に取り組んできました。職場の先輩の話によると『解決に向かいそうな機運が高まる時があるものの、住民が同じ意見でまとまらず、具体的に展開が難しい』といっていました」
 


池上町の貨物線の通る高架下

 
「上下水道、緊急車両が入れる道の整備などのためにも区画整理などを行うと良いのですが、それには土地の所有者や住民の意見の一致が必要なのです。しかし、お互いの土地の区分がはっきりせず、隣地の境界がはっきりしない、など権利関係が輻輳(ふくそう)しているためそれが難しくなっているようです」

「また区画整理などを行うと、公道の幅を広く確保するため、従前の土地よりも狭くなってしまう可能性があり、それを嫌がる住民もいるのかもしれません」

「土地の所有者は人がいなくなった廃屋に対しては、立ち退いて家屋まで処分してくれた土地には、これ以上新たな住居などを増やさせないようにバリケードを張ったりして対処しています」と答えてくれた。
 


池上町内の「JFEスチール管理地」と書かれたバリケード

 
行政として、この問題の進展に関して、思うことを伺うと「土地の所有者のJFEスチールに対して、短的に住民に売る結論を出さないようにお願いしています。その場合、もし住民に『このままで良い』と主張されると、整備された街づくりは期待できないからです。『住民の合意を得て区画整理などを行える方向に持っていって欲しい』とお願いしていて、土地の所有者は理解を示しており、粘り強くこの問題に取り組んでくれています」と答えてくれた。

次にJFEスチールに話を伺うと、担当者は「住民の方たちが、賃貸契約がなくJFEスチールの土地に住まわれていることは認識しております。今までに住民の方たちとの話し合いの場を持ってまいりましたが、特にトラブルはありません」と答えてくれた。



飯塚議員に話を伺う



さらに池上町の問題に長年取り組んできた、飯塚正良市議会議員の事務所でお話を伺った。
 


池上町の問題に取り組んできた、飯塚議員

 
「これは70年以上解決していない問題です。戦後2人目の伊藤三郎市長は『池上町の問題が解決しないと川崎の戦後は終わらない』と尽力しました。私は議員歴25年目に入りますが、ライフワークとしてずっと長い間、この問題に関わってきています」

「この街の土地の地権者は当時の日本鋼管で、固定資産税も日本鋼管が払ってきました。
過去をさかのぼると在日韓国・朝鮮人の『不法占拠だ』といった問題になりますが、約10年前に問題解決への動きがありました。戦後補償などの人権運動を導いた「在日の父」と呼ばれる、在日大韓基督教会川崎教会名誉牧師、李仁夏(イインハ)牧師が中心となり、地権者から売却してもらい権利変換を図ろうと、地権者と共通のテーブルで話し合いがもたれました。しかし李牧師が亡くなり、その後は進展がなくなってしまいました」

「李牧師は現状をどうするか、という姿勢で問題解決を図りました。亡くなる直前まで『最低限下水道を整備し上水道を太くしてほしい』と願っていました」
 


飯塚議員の事務所

 
「戦後は『違法占拠』などの張り紙を日本鋼管側が貼ったりしていましたが、歴史的背景もあり、住民側も強かったようです。また歴史的事実からすると、胸を張って家賃を払えと言えなかったのでしょう」

「現地の状況は、一部には下水道が通っておらず、上水道も池上町の市道から細い管で通ってるだけで、みんなが水道を使うと、水が出てこなくなったりします。住環境として問題があります。もちろん土地の所有者の関係が合法でしたら整備をすることができるのですが、地権者が許可しないと、上下水道の整備などはできません。しかし市は、定期的に航空写真などを使って新しくできた家屋の調査をし、家に対しては家屋税金を取っています」
 


定住外国人の政治参加に向けて取り組んだ飯塚議員を取材した、社会新報の記事

 
「2002(平成14)年に川崎製鉄と日本鋼管が合併したのですが、日本鋼管としてはこの課題を解決して合併を迎えたかったのですが、解決には至りませんでした」と答えてくれた。

李牧師が支持された理由について「池上町には韓国籍の人と朝鮮籍の人が住んでいますが、在日のための民族団体として、韓国人には『大韓民国民団』。朝鮮人には『在日本朝鮮人総連合会』がありますが、統一した受け皿がありません。しかし李牧師は宗教家であったため、中立的にどちらの民族とも話ができたのでしょう」と答えてくれた。
 


川崎区浜町にある在日本朝鮮人総連合会の事務所

 
池上町の岸壁には落書きがあり、これに関して伺うと「40年ほど前に池上町に住んでいた、『海の荒くれ者』と呼ばれたMという人が書いたものです。当時の伊東市長に対して勝手な言いがかりをつけたりしていたときのものです」とのこと。
 


40年ほど前に書かれた岸壁の落書
 

市長に対する抗議と思われる

 
ところで池上町がよくロケ地に使われる、という話に関して伺うと「以前私は池上町の人たちと『日活フィルムライブラリー』まで行き、池上町を舞台にした葉山良二主演の『地図のない町』という映画を見ました。昔のままの町の姿を見た住民の長老からは、『なつかしい』と声が上がっていました」

「また木村拓哉主演の『GOOD LUCK!!』では屋形船“つり幸”がロケ地で使われていました。当時は見物の若い女の子たちが集まってパニックになっていましたね。さらに2014(平成26)年『小川町セレナーデ』という映画が、川崎市内でロケが行われました。池上町のコインランドリーも使われていました」
 


映画『小川町セレナーデ』のロケで使われたコインランドリー

 
「この町には昔ながらの『貧しくてもお互い助け合う』という人情味のある雰囲気を持っているのかもしれませんね」と答えてくれた。