【横浜の名建築】旧柳下邸
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第28回は、豪商が贅を尽くした旧柳下邸。大正時代に建てられた和洋折衷の邸宅は、丁寧に暮らしていた頃の古きよき日本を追体験できる貴重な建物だった
ライター:吉澤 由美子
居室として作られた西館 贅沢な接客用の東館 (続き)
広縁の先には3つの居間。奥の居間の横には内玄関がある。
内玄関とその隣の居間は戦後に増築されたもの。
その頃は窓の外に根岸湾が広がった眺めのいい部屋だったらしい。
斜めの桟が部屋の印象を引き締める
広縁を回り込んだ先に増築された居間と内玄関
西館と東館の間には中庭があり、渡り廊下が中心を通っている。
東館は、茶室としても使われていた仏間や、客間2つと表玄関がある接客用の場所。
仏間の横は北の中庭。畳に茶道のための炉が切ってある
書院造りの客間は、床の間の床板に松の一枚板が使われている。
贅を尽くしつつも華美ではないあたりに豪商の底力を感じる。
見事な床柱、天井など見どころが多い書院造りの客間
この東館には客用便所もあるが、この床もまたケヤキの一枚板。
幅広のケヤキをトイレの床板に使うという大胆さ
表玄関は、床のタイルや靴脱ぎの巨大な石などが目を惹く。
脇に置かれた縦長の台は、「立ち火鉢」
二階建ての洋館 廊下でつながった蔵
表玄関の隣に作られている洋館は、関東大震災後に増築されたもの。
日本家屋に小さな洋館を付属させる建築様式は、大正から昭和初期に全国的に広まった。
洋館の1階部分は床が畳で和風の抽斗がついた作り付けの家具があり、窓より上は完全な洋風になっている。
西洋式の部屋に畳というのは、明治時代によく見られた組み合わせ
壁の白さがまぶしい洋館の階段
2階は床も板張りで本格的な洋間になっている。
3面の窓が明るい光を室内にあふれさせている