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約3億円の債務超過を抱える神奈川フィルはどうなるの?

ココがキニナル!

神奈川フィルが存続の危機だそうですが、なぜ約3億円の債務超過になってしまったの?/県は予算を復活させないのか。また、横浜市としても検討しないのでしょうか。(tsurumi230さん、satomiさん)

はまれぽ調査結果!

債務超過は過去の赤字経営が積み重なったもの。現在はほぼ単年度で黒字化。ブルーダル基金で寄付を募りながら精力的に活動を続けている。

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ライター:吉川 ゆこ

地域に愛される神奈川フィルハーモニー管弦楽団



神奈川フィルハーモニー管弦楽団(以下神奈川フィル)は昭和45年に発足した神奈川県内唯一のプロオーケストラである。
演奏会に行ったことがある人も多いと思うが、横浜市の小学校を卒業した人ならば「みんなのオーケストラ」という体験演奏会や、横浜みなとみらいホールで開催されている「夢コンサート」(鑑賞教室)で神奈川フィルの演奏を耳にしたことがあるのではないだろうか。
 


子どもたちも楽器に触れ演奏する「みんなのオーケストラ」
 

常任指揮者の金聖響(キム・セイキョウ)氏も熱心に指導


“地域に密着した音楽文化の創造”を使命と考えている神奈川フィルは年間150~200回程の演奏活動を行っているが、その1/3はこうした地域の子どもたちを対象とした体験演奏会や鑑賞教室なのだ。これは未来を担う子どもたちに創造力や感性を磨く「感動の種まき」として10年以上続けている。

神奈川県および横浜市にとっても馴染み深いだけに、約3億円の債務超過(負債の総額が資産の総額を上回った状態)を抱え存続の危機にあるというニュースが流れたとき(平成23年)は大きな話題となった。
いったいどうなっているのだろうか?神奈川フィルの事務局で話を伺った。
 


中区にある神奈川フィルの事務所へ



債務超過は今までの積み重ね



まずこれまでの経緯と現状を説明したい。
神奈川フィルは平成4年度から続いていた赤字経営が積み重なった結果、平成11年度までに約5億円の債務超過を抱えた(平成11年度は3041万5000円の赤字)。しかし、震災の影響を受けた22年度(1985万7000円の赤字)など多少の変動はあるものの、人件費削減などで対応しながら平成16年度(8348万4000円の当期利益)以降はほぼ黒字化を達成している。
平成22年度の債務超過は約3億円。債務超過も減ってきている。

「海外のオーケストラの例を見ても、演奏などから得る収益だけで運営されているところはほとんどありません。その多くは国や地域からの補助金、そしてサポーターたちからの寄付で運営費をまかなっているのが現状です」と広報の田賀さん。
ちなみに平成22年度の収入は6億6974万8000円で、その内の約半分は事業収入(チケット収入等)、残りの半分は補助金や寄付金だ。
 


迎えてくれたのは田賀さん(左)と中崎さん



神奈川県と横浜市の補助はどうなっているの?



昨年2月には「がんばれ!神奈フィル 応援団」が発足し、現在は前松沢県知事に代わり黒岩県知事が団長を務めている。平成22年度は2億500万円。平成23年度の補助金は1億9500万円と、ここ数年減額されているが平成24年度は同額を維持している。

林横浜市長は副団長だが、横浜市に関しても20年以上も前から補助金(平成23年度は3000万円)を出してきた。しかし神奈川県も横浜市も事業費が減っているので神奈川フィルに支出される総額としては減額傾向にあるのが現状だそうだ。

「補助金が減るのは痛手ではありますが、社会情勢から財政はどこも苦しい。ですから補助金だけに頼らないで自立していく経営を行なわなければいけないと思っています。改めて楽団のあり方を見直すきっかけにもなりました」と田賀さんは前向きだ。

では、補助金だけに頼らない経営・意識改革には何が必要なのかを重ねて聞いてみた。
「まず大切なことは、お客様に感動を届けるとともに、愛されるオーケストラを目指すことであり、そのためには演奏のクオリティを高め、地域に密着した音楽文化創造とマーケティング戦略や資金調達など収益を高め、総合的に経営基盤を強化していくことです。団員たちの士気もとても高いので、いい方向に向かっていけるでしょう」

定期演奏会の入場率も年々増えているという。平成23年度は83%。5年前の平成18年度は60%だった。定期会員も5年前は約930人だったが、平成23年度には約1240人に増えた。成果が出ているようにも感じる。