東京都と比べてなぜこんなにも差があるの!? 横浜市の小児医療費助成の詳細に迫る!
ココがキニナル!
東京都は中学生までの子どもは医療費全額無料だそうです。それに比べ、横浜市は所得に関係なく無料なのは0歳だけ。分娩時のタクシー券や家事補助券など支給している自治体もあり。どうして差があるの?(ときさん)
はまれぽ調査結果!
神奈川県・横浜市は東京都と比べ財源が不足しているので、小児医療費助成に差がある。現在、横浜市は医療費負担を減額できるよう国や県に要請中
ライター:藤井 涼子
小児医療費の助成や、妊婦健診費の助成に関しては、地方自治体が独自に設定しているものであり、各市区町村によってその内容は異なるようだ。
横浜市の小児医療費助成や、妊産婦への助成やサービスなどはどうなっているのだろうか?
詳細を取材すべく、横浜市役所に問い合わせると小児医療費の担当部署は「健康福祉局医療援助課」で、妊婦健診費の助成などは「こども青少年局こども福祉健康部」とのこと。
それぞれの部署に取材依頼をし、その内容を確認することにした。
まずは、小児医療費助成について都市別に比較するため、東京都や神奈川県内の政令指定都市の助成はどうなっているのか調べてみた。
東京23区や川崎市、相模原市などの助成内容は?
比較のための調査対象は、東京23区と、23区以外の市で人口が多い順3位までの八王子市、町田市、府中市。神奈川県は政令指定都市の川崎市と相模原市の小児医療費助成について調べてみた。
その結果はこのようになった。
調査対象とした東京各地区はすべて中学生まで医療費無料で所得制限はなく、川崎市と横浜市は同じ助成内容になっている。町田市は、小学校入学までは無料で、小中学生は窓口で一律200円負担という制度になっているようだ。
横浜市の小児医療費助成の現状
では、東京都と横浜市では、なぜこんなに違いがあるのだろうか。取材に対応してくれたのは、横浜市健康福祉局生活福祉部医療援助課長・加藤隆生さんと福祉医療係長・丸山直樹さん。
左から加藤さんと丸山さん
先ほどの表でも記載したが、現在の横浜市の小児医療費助成内容は以下のようになっている。
・所得制限なしで無料(窓口負担なし)なのは0歳のみ。
・1歳から小学校1年生までは無料(窓口負担なし)、所得制限あり。
・小学校2年生から中学校卒業までは入院費のみ無料(窓口で支払った後、区役所で払い戻し)所得制限あり。入院時の食事代は助成なし。
調査対象とした東京都の都市は、町田市以外は所得制限もなく中学3年生まで医療費の負担はない。
もともと、この小児医療費制度とは「神奈川県費補助事業」として1995(平成7)年に始まった。この県補助事業とは、かかる費用の一部を県が負担するというもの。
この事業開始当初は、神奈川県が費用の2分の1を負担し、残りの2分の1を横浜市が負担するということになっていた。しかし、神奈川県の財政難により年々県が負担する金額は減っていき、現在ではかかる費用の4分の1のみを県が負担、となっていて、残りの4分の3は横浜市が負担しているのが現状だそう。
県の負担額は、政令指定都市と中核市、そのほかの市で異なる。今回比較した川崎市、相模原市も横浜市と同じ政令指定都市なので、負担率は同じとなっている。
所得制限の年収金額。扶養家族の人数により異なる
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対象となる所得金額は、共働きの家庭の場合、両親の収入の合算ではなく、どちらか一方の高い方が判断基準となる。
つまり、父母ともに500万円の所得額の場合、世帯収入は1000万円となるが、片方の所得のみを判断基準とするため、この家庭の場合は小児医療費助成の対象となり、医療費は無料ということになる。この点についても、市民から「なぜ?」という疑問の声が多いとのこと。しかし、横浜市の財政上、県が設定している所得制限をそのまま使わざるを得ないのが現状のようだ。
20代の親であれば、ほとんどの家庭が医療費無料となっているそうだが、最近は年収が上がってくる30代や40代で幼児を持つ親も増えてきて、所得制限にあてはまる家庭も増加傾向とのこと。年代別に統計は取っていないそうだが、30代40代の親であれば2割くらいの家庭が所得制限で小児医療費の助成が受けられていないそう。
丸山係長は「市民の皆さまからも、『なぜ横浜市は医療費無料の期間が短いのか? もっと長くしてほしい』と言う声を多数いただいております。現状の制度で十分だとは考えていないのですが、横浜市の税金をどこに使っていくか、という問題で、医療費ばかりに数十億円追加していくというのは簡単ではないんです。所得制限の幅も広げていきたいという思いはあるのですが、なかなか・・・」と苦しそうに説明してくれた。
現在は、重度障害者医療やひとり親医療の助成制度もあり、対象者は窓口負担金が無料という仕組みもある。
この事業も小児医療費助成同様、県費補助事業となっている。
しかし、下記の資料のとおり、事業開始時には、県費で100%まかなっていた重度障がい者医療は、現在は県費はかかる費用の3分の1しか負担しておらず、残りはすべて横浜市が負担している。
つまり、利用する私たち市民への表向きの助成内容は変わっていないのに、年々横浜市の負担は億単位で増えてきていた、ということになる。
ちなみに、東京23区の医療費負担は、都の助成でかかる費用の2分の1を負担しているそう。これは、東京都の財源が豊かだからできることだ。
横浜市では、2012(平成24)年に医療費無料の対象を「小学校入学前」から「小学生1年生まで」に延長しているが、対象年齢を1年増やすと、年間約9億円の追加費用がかかるとのこと。
ただ、横浜市としても「財源が足りないから仕方ない」と放置しているわけではない。
現在の健康保険の制度では、小学校に入学する前までの子どもの負担額は2割。つまり、この2割分を自治体が負担することで市民の窓口負担がゼロ、となる。
そこで、横浜市は国に対し子どもの医療費負担額を1割にしてほしい、という内容の要請を約10年前から行っている。そこから財源を確保し、医療費助成を拡大したい、という考えだ。
また、神奈川県に対しても県費負担の増額を市長から要望し続けている。
神奈川県に対しても県費負担の増額を要請中
小児医療費助成制度だけを比較すると、ほかの区や市に劣っている部分もあるが「子育て支援の全体を見てほしい」と加藤課長。
小児救急病院の拡充のため、NICU(新生児集中治療室)を増設するなどしている。2010(平成22)年には72床だったNICUは、現在では90床まで増加。安心して暮らせる町づくりに力を入れている、とのことだった。
また、2013(平成25)年に一時ゼロとなった待機児童についても、今年2月には再び3352人まで増えたことにより、再び「待機児童ゼロ」を目標とし整備を進めている。
「子育てしている皆さんに、横浜は住みやすいと思ってもらえるように、この先も改善していきたい」と話してくれた。