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最大500万円の補助金が出る、ヨコハマ市民まち普請事業コンテストとは?

ココがキニナル!

横浜市都市整備局地域まちづくり課において、最大500万円の整備助成金を交付される「ヨコハマ市民まち普請事業コンテスト」が開かれるそう。いったいどんな提案をどんな審査で行っているの?(brooksさん)

はまれぽ調査結果!

ヨコハマ市民まち普請事業は、地域社会を支える施設の整備を、コンテスト形式で決める事業である。地域住民の協働により普請の輪を広げていた。

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ライター:三輪 大輔

2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震災。未曾有(みぞう)の災害となったこの震災は、多くの被害を出すと共に、近隣住民同士の結びつきが弱くなった現状の危うさに警笛を鳴らす声もあった。

そうしたことから震災後に「絆」という言葉が盛んに使われ、再び地域社会の重要性に注目が集まった。公共の担い手は誰であるのか。それが問われるようになった。
 


まだ記憶に新しい横浜西口ダイエー前


横浜市は、ヨコハマ市民まち普請(ぶしん)事業なるものを行っているという。「普請」には「力を合わせて作業に従事する」という意味がある。一体どういった事業であるのだろうか? 早速、この事業を行っている、横浜市都市整備局地域まちづくり課に取材を行った。



ヨコハマ市民まち普請事業とは

取材日、横浜市都市整備局地域まちづくり課の中里浩一郎(なかざと・こういちろう)さんと、森直之(もり・なおゆき)さんのお二人にお話を伺った。
 


横浜市都市整備局のあるJR関内駅南口前の横浜市役所


まず簡単に、ヨコハマ市民まち普請事業の設立の経緯と、当時の時代背景を整理したい。

同事業は2005(平成17)年に始まった事業だ。当時、国全体で大きな政府から小さな政府へ、官から民へと政策の舵が切られていた。「自己責任」の旗印のもと、多くの構造改革も行われている。

横浜市でも財政の健全化が進められており、多くの予算が削減された。市役所職員の削減や、市バスの不採算路線の見直しなどを断行。2008(平成20)年度には1961(昭和36)年度以来、実に47年ぶりに普通交付税の不交付団体となった。
 


事業の説明をしてくださる中里さん(右)と森さん


一方で歪みも生じていた。地域社会から上がってくる市への要望を断ることが多くなったのだ。

中には実現すれば、地域社会に良い影響が波及する要望などもあった。しかし、そこに公務員が関わることでコストがかさむ。こうした状況の中、若手職員が集まって、多様化する市民ニーズに応えることができないか話し合いが行われた。「施設整備を通して、市民が主体的に、課題を解決していく」ヨコハマ市民まち普請事業の骨子も固まったのだ。

市は市民の税金も使用して運営される以上、財政の健全化は重要である。しかし、コストを削りながらも良い事業には助成金を交付し、地域社会の活性化に結びつけたい。

そのために、地域課題の解決に役立つ施設であれば、ジャンルを問わず整備ができる制度設計になったという。当時、市民が主体となった地域社会のハード面の整備に、行政が助成金を出すのは珍しいことであった。
 


1次コンテストに提案があった整備事例が記載されている資料


今年で10周年となるヨコハマ市民まち普請事業。これまでの提案数は116件で、施設整備数は38件となった。それでは実際、事業の選考の流れなどはどのようになっているのだろうか?
 


パンフレットにも掲載されている事業のあらまし


まず応募してからの流れであるが、2回のコンテストが行われた結果、最終的に採用される提案が決定される。
 


提案が実現するまでの流れを説明している図


この応募から最終審査まで1年ほどの時間をかけて行う。ちなみに助成される金額「最大500万円」という数字であるが、事業予算や交付できる団体数、また可能となる事業規模などのバランスを考えて、金額設定がされているとのことだ。

それぞれの段階を細かく見ていくと2014(平成26)年の場合、4月14日~5月16日の約1ヶ月間、整備提案の募集が行われた。

応募要件は3つある。それは「横浜市内の住民等を3人以上含んでいること」「自らが主体となり整備を行う意欲があること」そして「事前に地権者などに事業応募への説明が済んでいること」の3つだ。なお、いきなり応募することに迷いがある方のため、市の担当者に相談することもできる。また事前登録という制度もあり、まちづくりの専門家の派遣を無料で受けることも可能だ。
 


パンフレットにも応募要件の詳細が記載されている


その後1次コンテストに進む。選考の基準は「創意工夫」「意欲」「公共性」の3つである。ここで、提案グループが審査員と一般の参加者に提案内容を説明。公開の投票によって、通過する提案が決定される。
 


1次コンテストでは提案内容の説明時に「模造紙」を使用


提案するグループのみんなの意見を反映し、提案内容を具体化していくときに、模造紙を囲んで話し合うことで、多くの方が意見などを書き込みがしやすくなるという。また1次コンテストの発表は模造紙を使って行うため、パソコンスキルのない、高齢者なども参加しやすくなるとのことだ。

審査委員は8名いて、都市政策を専門とする大学教授や、NPOの理事などが就任している。なお、一般の市民が審査員になることも可能だ。2年の任期で公募が行われ、現在も2名の公募市民の方が審査員に加わっている。市民の視点も審査に反映されるようになっているのだ。
 


事業関連のパンフレットを用意してくださった森さん


1次コンテストを通過した後は、2次コンテストまで半年以上の期間がある。この間に、提案の精度を高めると共に、地域住民との合意形成を進めていくのだ。そのための資金として、最大30万円の活動助成金も受け取ることができる。また、活動懇談会として、過去に事業を実現したグループや、審査員の方との意見交換も実施しているそうだ。

また2次コンテストでは、実現可能性ではなく、実際に実現できるかどうかを広範囲にわたってチェックされる。補助金の使用方法なども確認され、整備後少なくとも5年はしっかりと運営管理できる計画であることも問われるのだ。そのため2次コンテスト前には、提案グループの整備建設予定地に、審査員が実際に赴き、現地を確認している。
 


これまでの事業が凝縮されたパンフレット


こうして提案内容を実現できるレベルに高めてから、2次コンテストは開催。選考の基準も、「創意工夫」「実現性」「公共性」「費用対効果」、「地域まちづくりへの発展性」の計5つとなる。

ここを通過すると晴れて助成金の交付となるが、上限が500万円というだけで、かならずしも満額支給されるわけではない。事業の規模などにより、交付金額は変わってくる。また使用の内訳もチェックされ、目的外のことに助成金が使われない仕組みも整えているとのことだ。

これまで38件の提案に対して交付金が支給されたが、交付後に廃止した事業はこれまでに1件。しかしその事業は、予め地域住民の方と協議して実施期間を5年と決めた上で行った事業であった。
 


5年を迎えて廃止になった「浜マーケット・コミュニティスペース」の事業


ヨコハマ市民まち普請事業は、市民や地域に住む人たちが公共の維持を担えるように、行政がスタート地点でサポートをするようになっている。公共の場に多くの住人が参加できる社会。その実現を下支えするシステムになっているようだ。
 


横浜市都市整備局地域まちづくり課の職員のみなさん


しかし、である。建設まではサポートをするが、その後は運営に関しての特別な支援は行っていないそうだ。それでは、建設された施設は適切運用されているのだろうか。描いた「理想」は「現実」ではどうなっているのか。それを調査するため、2009(平成21)年にヨコハマ市民まち普請事業で整備された、鶴見区にある「鶴見ふれあい館」へ向かった。