最大500万円の補助金が出る、ヨコハマ市民まち普請事業コンテストとは?
ココがキニナル!
横浜市都市整備局地域まちづくり課において、最大500万円の整備助成金を交付される「ヨコハマ市民まち普請事業コンテスト」が開かれるそう。いったいどんな提案をどんな審査で行っているの?(brooksさん)
はまれぽ調査結果!
ヨコハマ市民まち普請事業は、地域社会を支える施設の整備を、コンテスト形式で決める事業である。地域住民の協働により普請の輪を広げていた。
ライター:三輪 大輔
整備事業の「鶴見ふれあい館」とは?
この日、鶴見ふれあい館の設立の中心人物である簡照子(かん・てるこ)さんにお話を伺うことができた。
JR鶴見駅から徒歩5分ほどのところにある鶴見ふれあい館
館内は明るい日差しも差し込む居心地の良い空間
鶴見ふれあい館設立のきっかけは、駅の近くにもかかわらず「豊岡通り」にトイレがないことが理由の一つであったという。また地域住民が集まれる場所もなく、こうした施設の建設が求められていた。
そこで2008年(平成20)年ごろから、ボランティア仲間と集まって、話し合いを開始し、事業の実現に向けて動き出した。
事業化までの出来事を説明してくださる簡さん
元々、簡さんは社会福祉法人の理事も務められていて、鶴見区の多くの会合にも顔を出されている。こうした経緯もあり、簡さんには人脈があった。
現在、「鶴見ふれあい館」がある場所は、元はただのガレージだった。使用されていなかったものを、簡さんの知り合いの方から好条件で借りることができて、場所を確保した。また、施設建設のための図面作成も、そうした人脈の中からサポートしてくれる人が見つかり、担当してくれたそうだ。
こうして支援の輪が広がり、「鶴見ふれあい館」は建設の実現に向けて動き出していく。簡さんに人脈があることが幸いしたのだ。1次コンテストは無事に通過。多くの方の協力を得ることもでき、2次コンテストまでの準備も順調に進んでいった。しかし、1つ問題が起る。それは自動ドアの設置である。
パン工房「麦の家(ばくのいえ)」への自動ドア
実は「鶴見ふれあい館」の計画途中で、ヨコハマ市民まち普請事業とは別に「麦の家」というパン工房の併設が決まった。
麦の家は、障がい者の就労を支援する施設だ。そこで工房で焼いた出来立てのパンを、鶴見ふれあい館で食べることができるようにしよう。そんなコンセプトを立てたが、鶴見ふれあい館と麦の家の間に自動ドアを設置することに異議がでた。
ヨコハマ市民まち普請事業の審査員が、自動ドア設置に普請事業の補助金を充てるのは、事業の趣旨から考えて相応しくないとしたのだ。
簡さんをはじめとした提案グループは、鶴見ふれあい館と麦の家を同時に利用できる意義や相乗効果を説明した。行政の合理的な判断と、市井(しせい)の倫理的な判断のせめぎあいがあったが、結局却下されてしまう。
パン工房「麦の家」の外観からの一枚
焼きたてのパンがたくさん並んでいる
最終的には、グループで集めた資金から捻出され、自動ドアは設置された。こうした紆余曲折の末に、鶴見ふれあい館の整備案は2次コンテストを通過し、補助金を支給されることになる。そして2010(平成22)年7月20日に無事オープンまでこぎつけた。ちなみに、就労支援施設が併設されているコミュニティサロンの運営は、横浜市では鶴見ふれあい館が初めてのケースとなる。
現在、オープンから5年目を迎え、地域住民のコミュニティの場として浸透している。地域の集まりに使われるのはもちろん、ただ休憩目的での利用や、勉強の場として使用する子どももいるそうだ。
鶴見ふれあい館では、コーヒーや紅茶の飲み物や、ランチも楽しむことができるようになっている。価格はコーヒーや紅茶は200円で、ジュース類は100円。ランチは日替わりでメニューを用意していて、500円~600円と実にリーズナブルだ。なお館内で注文をしなくても、持参のお弁当などを食べることも可能だ。
ふれあいランチのメニュー表
整備発案の核心部分の一つでもあった「トイレ」も、車椅子の方でも利用しやすいバリアフリー設計のものを完備。また、赤ちゃんと一緒でも使い勝手がいいように、おむつ台も設置されている。
トイレの案内看板
トイレは車椅子の方も、赤ちゃんと一緒でも使いやすい設計
また館内にはレンタルスペースもあり、物販も行っている。地域の食品や工芸品が置かれていて、地域社会を盛り上げるために役立てているそうだ。
館内のレンタルスペースで販売されている食品など
食品以外にも工芸品も販売されている
子ども連れで来店されていた方に、鶴見ふれあい館に対する感想を伺ったところ「自動ドアだとベビーカーでも入店しやすいですし、入口に段差もないため入りやすい所だと思います」とのこと。自動ドアは、実際の利用者からは好評であるようだ。
来店されていたお子様連れのお母さん方
最後に、肝心の運営維持に関して聞いてみた。
ボランティアとして館内のお手伝いをしている相良(さがら)さんいわく、「昨年、わずかですが黒字化にすることができました」とのこと。年間の協賛金でサポートしている方が60名ほどいて、来店される方からの募金などもあるそうだ。ただ館内で提供している飲食物は、利益がほとんど出ない金額設定になっている。
相良さん(右)と館内のスタッフの方
ヨコハマ市民まち普請事業により整備された「鶴見ふれあい館」は、いま地域社会の結びつきの場となり、存在価値を高めている。多くの取り組みが実を結び、地域解放型のコミュニティサロンとして地域に根付いたのだ。
鶴見ふれあい館では多くの事情で一般就労できない方も勤務している。しかし、人との温かな触れ合いによって就労が可能になり、実際に社会に復帰された方が何名もいるそうだ。今では、こうした障がいを持った方の巣立ちの場にもなっている。しかし課題がないわけではない。やはり黒字化になったとはいえ、運営管理には苦心されているのだ。
ちなみに現在、地域まちづくり課では、政策局共創推進課と連携し、これまで、市民と行政の協働で実施してきた、ヨコハマ市民まち普請事業を市民・企業・行政が連携して実施する仕組みになるように取り組んでいる。市民と企業が地域を舞台に連携することで、ともに良好な関係がつくられていくことを目指しているとのことだ。
鶴見ふれあい館で働くスタッフの方々
取材を終えて
日本でNPOの活動が盛んになったのは、阪神・淡路大震災のころだといわれている。しかし、寄付文化のない日本ではNPO法人の運営が難しいようだ。こうした流れを受けて、現在、社会の抱える問題を事業によって解決する社会企業家なども多く出てきている。
ヨコハマ市民まち普請事業コンテストの結果、地域社会が抱える問題を解決するための施設整備は進んだ。しかし鶴見ふれあい館だけでなく、設備の運営を続けるために苦心されている方は多いそうだ。
自分自身、これまで何かの事業のために寄付をしたことはない。それどこか地域社会のために自ら何かを働きかけたこともない。地域にどう関わっていくか。改めて考える機会になった。
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―終わり―
ヨコハマ市民まち普請ひろば
https://www.facebook.com/yokohama.machibushin
rerereさん
2014年12月18日 15時06分
自動ドアなんで駄目なんですかね? 理由を詳しく知りたいと思いました。