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グルメだった池波正太郎さんが愛した横浜のお店を調査願います。(brooksさん)、池波正太郎が愛した餃子が、中華街の関帝廟通りにあると聞きました。どんな餃子が待ってるの?(bjさん)

はまれぽ調査結果!

数ある店から今回は中華街「蓬莱閣(ほうらいかく)」の水餃子などと山下町「ホテルニューグランド」のアイス・ティーなどを紹介。どちらも逸品

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2015年02月22日

ライター:篠田 康弘

戦後を代表する時代小説作家、池波正太郎。

多くの代表作があるが、そのいずれも食に関する描写が秀逸で、食に関する場面だけを抜き出してまとめた書籍が販売されているほどである。

これほど見事な描写ができた理由のひとつに、池波氏が食通であったことが挙げられる。池波氏は日本全国、はたまた世界の各地に足を延ばしてさまざまな料理を食し、その経験を多くのエッセイとして残している。そんな池波氏が食べ歩いた多くの場所の中には、もちろんわが街横浜も含まれている。

本日は、池波氏が愛した横浜の味をいくつか巡ってみよう。



時代小説作家・池波正太郎

池波正太郎氏は1923(大正12)年東京都浅草区(現在の東京都台東区)生まれ。新国劇の脚本・演出家として活動しながら小説を執筆し、1960(昭和35)年に『錯乱』で直木賞を受賞。その後は作家業に専念し、何度も映画化やドラマ化された『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』など多くの作品を執筆した、戦後を代表する時代小説作家である。
 


東京都台東区浅草にある池波正太郎生誕地碑
 

池波正太郎氏
 

池波正太郎氏の作品。左から『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』


また池波氏は食通としても広く知られ、食に関する多くのエッセイを残している。
 


池波正太郎氏が記した、食に関するエッセイの数々


今回はこれらのエッセイの中から、横浜で池波氏が好んで通った店を2つ紹介していこう。



中華街の餃子の名店

まずは投稿にあった『むかしの味』の中で紹介されている、中華街にある北京料理の店「蓬莱閣(ほうらいかく)」の水餃子などを紹介しよう。
 


池波氏のエッセイ『むかしの味』
 

中華街・関帝廟通りにある北京料理店「蓬莱閣」


蓬莱閣の3代目で、接客担当の王(おう)さんが取材に応じてくれた。
 


蓬莱閣の3代目、王さん


蓬莱閣は1960(昭和35)年に、山東省出身の王さんの祖母が開店。店名は山東省にある同名のお寺にちなんで名付けられたものである。北京出身ではないのに北京料理という看板を掲げたのは、開店当時は日本人の山東料理へのなじみが薄く、隣の県の北京の名前を使った方が親しみやすかったからだろうとのことであった。
 


開店当時の雰囲気を残した天井
 

創業者の王さんの祖母をモデルにしたポスター


創業者の祖母はすでに亡くなり、現在は王さんのお父さんとお兄さんが厨房を、王さんが接客を担当している。

『むかしの味』の中で池波氏は、蓬莱閣で蒸し餃子、水餃子、醤牛肉(ジャンニウロウ:牛スネ肉の冷製)、酸辣湯(サンラータン)、炒飯などを食したと記している。さっそく注文しようとしたところ、王さんから「餃子コースを頼めば、炒飯以外のすべてが楽しめますよ」というアドバイスをいただいたので、今回は餃子コース(1人前1600円、2人前から)と単品で炒飯(830円)を注文した。
 


餃子コース。1人前1600円(2人前より)


最初に出てきたのは醤牛肉。
 


醤牛肉。味付けしたキュウリがつけ合わせ


ほどよい醤油味に八角の風味が見事にマッチした、お酒のつまみでもメインの一品としても楽しめる味であった。

続いては酸辣湯が出てきた。
 


酸辣湯
 

シイタケ、豆腐、タケノコ、鶏肉、香草と具だくさん


街でよく見かける酢辣湯にはラー油がかかっているが、あれは日本人向けにアレンジされたもので、本場の酢辣湯は今回食べたような酢と黒胡椒だけで味付けしたものだ、とのことであった。

最初は「普通の具だくさんスープ」という感じだったが、食べ進めていくにしたがって、酢と黒胡椒で体がだんだん温まっていく。それに辛くないので、どんどん食べ進めることができる。お腹も温まり、食欲が一気に増した。
 


酢辣湯を食し、そのおいしさに驚く筆者
 

同行した編集部・山岸はこの笑顔


続いて今回のメインディッシュ、餃子の登場である。『むかしの味』で紹介されているのは蒸し餃子と水餃子のみだが、餃子コースではこれに加えて焼き餃子も味わうことができる。
 


水餃子
 

蒸し餃子
 

焼き餃子


まず驚いたのはその大きさだ。水餃子は一口大だったが、蒸し餃子と焼き餃子は普段食べ慣れた餃子の優に倍以上はあった。
 


とても一口では食べきれない大きさ


驚いている私たちに王さんが「山東省の方では餃子のような小麦を使った料理が主食、日本でいうご飯のようなものなんです。だからお腹いっぱい食べられるように大きくなっているんですよ」と説明してくれた。小さい水餃子も、普段の食卓には山盛りで出てくるとのことであった。

そして蓬莱閣の店内には、このような案内が掲げられていた。
 


不要醤油?


王さんに伺ったところ「うちの餃子は何もつけないで、そのまま食べてください。味に変化がほしいときは、酢とラー油だけをつけてください」とのことであったので、言われた通りに何もつけずに水餃子を食べてみた。
 


食べる前はちょっと不安だったが
 

ところがこれが
 

ものすごく美味しい
 

蒸し餃子を食べた山岸も、そのおいしさに驚きを隠せない


言われた通りに何もつけずに食べてみると、これがものすごく美味しい。餃子全体から味がたっぷりしみ出してくるので、何もつけなくてもどんどん食べられる。確かにこの餃子なら醤油は不要だ。

水餃子、蒸し餃子、焼き餃子のいずれもそれぞれ味が異なっていた。水餃子は口当たりよくさっぱりとした味わい、蒸し餃子は具に入った白菜の風味が絶妙、焼き餃子は肉の味が濃厚、といった具合であった。ところが王さんにそれぞれの餃子の具の違いを伺うと「どれも同じ皮と具で、調理方法が違うだけです」とのことであるから、これも驚きである。
 


調理方法が変わるだけで、同じ材料が全く別の味になる


美味しい餃子を食べていたら、お酒がほしくなってきた。王さんが「池波さんは日本酒をよく飲んでいたそうです」と話していたので、日本酒を注文して餃子に合わせてみた。
 


蓬莱閣と同じ名前の日本酒「残草蓬莱(ざるそうほうらい)」(780円)


餃子と日本酒とは意外な気がするが、これが非常によく合う。さすが池波氏といった組み合わせだ。ちなみに池波氏はいつもひとりで来店し、静かに飲んでいたそうだ。

そして最後に、炒飯の登場である。
 


炒飯


しっかり炒めてパラパラにほぐれているのに、炊きたてのご飯のようなもっちりとした食感が見事に残っている。こんなに美味しい炒飯を筆者は初めて食べた。池波氏が「この店の炒飯は旨い」と言い切った気持ちがとてもよく分かる一品だった。
 


あまりのおいしさに、レンゲを持つ手が止まらない


紹介されていた料理を一通り食べたが、いずれも本当に美味しいものばかりであった。食後に料理を作ってくれた王さんのお兄さんにもお会いすることができたので、どのような点を工夫しているのか伺ったところ「特別なことはせずに、親から教わった当たり前のことを当たり前にやっているだけです」とのことであった。
 


接客担当の王さん(左)と、厨房担当のお兄さん


当たり前のことを当たり前にやる、簡単そうだがなかなかできないことである。それが毎日できる蓬莱閣は、本当に素晴らしい店であった。
 
 
続いては『食卓の情景』のアイス・ティーとドライ・マティーニを味わう≫
 

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