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横浜のキニナル情報が見つかる! はまれぽ.com

里山の原風景が残る栄区瀬上沢の川沿いにある小さな謎のトンネルは何?

ココがキニナル!

栄区上郷町の県立栄高校裏手の小さな川のカーブを描く地点に素堀トンネルがあったのですが、いったい何なのかキニナル。房総で見られる川回しか何かでしょうか。どんな用途で使われているのか。(浜っ子さん)

はまれぽ調査結果!

山沿いに流れる川の水を、山すそに広がる田んぼに流すための農業用水用のトンネルであり、川廻しではない。現在は使用されていない。

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ライター:小方 サダオ

山に掘られた謎のトンネル



川の近くにある、素掘りトンネルとはどのようなものなのであろうか?
投稿の川廻しとは、千葉県立中央博物館友の会観察会のホームページによると「主に上総地方南部の丘陵地を流れる河川で、江戸時代以降、穿入曲流(せんにゅうきょくりゅう:蛇行状に曲がりくねった河流)した川を、トンネルか切通しで短絡して、旧流路部分を水田化する工事です」とある。

この千葉県に多い川廻しが横浜にあるという珍しい例となるのだろうか?
早速現場に向かった。

栄区上郷町の環状4号線沿い付近は交通量が多くにぎやかだ。
しかし山手学院入口で一本脇道に入り、さらに奥へと向かうと、山に囲まれた緑豊かな風景が広がっている。
 


山手学院入口を入り、県立横浜栄高校の裏手を目指す
 

環状4号線を金沢方面に向かう
 

山手学院入口を北上する
 

一本脇道を入る
 

道路の下をくぐる
 

山に囲まれた川沿いの道になる


しばらく進むと、川が道路沿いを流れる形になる。
 


川沿いの山にトンネルが掘られているか探す


そして間もなくすると、投稿の素掘りトンネルが姿を現した。
 


トンネルの前方にコンクリート製の壁が築かれている


川の流れが弧を描いている場所に、コンクリートで出来た、ダムのような工作物が作られている。川の水は2つのコンクリートの壁の間の段差を流れ落ちている。

そしてそのコンクリートの壁の一方は、トンネルの方に長く伸びている。トンネルと、隣りを流れる川との関係性を少なからず感じるが、確かなことは分からない。
 


コンクリートの壁の間の段差を流れ落ちる川の水


トンネルの反対側を見ると、畑が広がっているが、トンネルはこの畑と何か関係性があるのだろうか?
 


トンネルの向こう側に見える緑地
 

トンネルの反対側は畑になっている




何のためのトンネル?



地元の人に話を聞こうと思い、川を上流に向かってしばらく進むと、山の中腹に民家を発見。

地元に長く住むという女性Hさんにトンネルに関して話を伺うと「あそこでは、川の水を止めるための堰(せき)が作られていました。木の板があって、それで流れを止めて、トンネルを通じて反対側の田んぼに水をやっていたのです。"よこぜき"と呼ばれていました」

 

木の板をコンクリートの窪みに置くだけで、水は向こう側に流れて行くという
 

「川の水は上流にある瀬上池から来ています。人口の池で、水抜きの栓があり、必要な時に栓を開けて水を流すのです」と答えてくれた。

川の水をせき止め、山の向こう側に流すためのトンネルだったのだ。
しかし近くにせき止めるための道具などが見当たらないのは、長い間使われていないからなのだろうか?
 


川の水をせき止め、山の反対側に流すためのトンネルのようだ


ところでこの堰は、コンクリートで丈夫そうに作られているが、だれが作ったものなのだろうか? 河川や道路を管理する土木事務所に伺ってみることにした。
 


栄土木事務所


栄土木事務所の担当者に伺うと「昔に作られた、田畑に川の水を導くために、流れを変えるためのものだったのでしょう。現在では許されませんが、以前の河川法が厳しくないころに、許可されて個人で作ったものでしょう」と答えてくれた。
 


公図にはコンクリートの壁の形が描かれている


さらに担当者は公図(土地の大まかな形状や位置を示す図面)を確認してくれて「公図を見ますと、例のブロックが法面(のりめん:傾斜面)と同じ印で描かれています」と説明してくれた。

コンクリートの工作物に関しては、河川法が厳しくないころに、許可されて個人で作ったもののようで、公図にも載せられている。



畑の利用者を探す



次にトンネルを反対側からも見てみたいと思い、再度現地に向い、畑の持ち主の手掛かりを探すことにした。

通行人の男性に伺うと、とある施設の関係者が借りている、と教えてくれた。
そこでこの畑を農園として借りている、栄区中野町にある「SELP・杜(もり)横浜市中野地域ケアプラザ」を訪れた。
 


SELP・杜横浜市中野地域ケアプラザ


この施設は、社会福祉法人「杜の会」によって運営されていて、知的障害者の働く施設「SELP・杜」と高齢者のデイサービスセンター「中野地域ケアプラザ」との複合館となっている。

担当者の方に農園で採れた野菜に関して伺うと「あそこは上郷農園と呼ばれ、『SELP・杜』のスタッフ8名が所属する農耕班により野菜などを栽培しております。無農薬のため多くは採れませんが、食堂のメニューやパンの具などに使用されています。またその売り上げは、彼らの給料になるのです」と答えてくれた。
 


SELP・杜の農耕班
 

上郷農園でとれた無農薬の野菜が、施設の前に並んでいる
 

農園で採れたナスやトウガラシなどが売られている
 

杜のパン屋さん


そして担当者を通じて、土地の所有者に取材に関して聞いていただくことにした。すると応じてくださるとのことだった。

土地の所有者Aさんとは、例のトンネルの前で待ち合わせることにした。