新港ふ頭の岸壁から飛び出た謎の構造物の正体は?
ココがキニナル!
岸壁から飛び出ているカーフェリー対応の構造物(台座?)が気になる/みなとみらいのふ頭の建設や9号岸壁の再整備とこの岸壁の先端部にできるハンマーヘッドパークがキニナる(BonVoyageさん/幸人さん)
はまれぽ調査結果!
「貨物を荷役するためのスロープ」で、9号岸壁の整備に合わせて取り壊される予定。「新港客船ターミナル」と「ハンマーヘッドパーク(仮)」の建設計画がある。
ライター:楪 ゆう子
ナゾの構造物の正体を探る
「MARINE&WALK YOKOHAMA(マリンアンドウォーク ヨコハマ)」がこの春オープンしたばかりの「6-1街区」にあるという「ナゾの構造物」。
MARINE&WALK YOKOHAMA
横浜赤レンガ倉庫、カップヌードルミュージアム、横浜ワールドポーターズといった華やかな観光施設が立ち並ぶこの場所で、「岸壁から飛び出ているカーフェリー対応の構造物はなんだ」と言われても、どうも地味そうだし想像できない・・・。
コスモワールドの大観覧車とインターコンチネンタルホテル
そこで、横浜市港湾局みなと賑わい振興部客船事業推進課担当課長の蝦名隆元(えびな・りゅうげん)さんに現地までお越しいただき、その構造物の前でお話を伺った。
暑い中ありがとうございます
「これは『新港9号岸壁』に作られた “貨物の荷役(船への荷物の積み卸し)に使用していたスロープ”なんですよ」と蝦名さん。
これが「ナゾの構造物」
地図で見るとこの位置
当時の「新港9号岸壁」は、貨物の物流拠点として使用されていた岸壁だった。
1980年代以降は、コンテナ化(ガントリークレーンで持ち上げる荷役)が進んだが、それまではまだ船から直接人が荷卸ししたり、このスロープから船に、荷物を積んだ車が直接乗り入れたのだという。
たしかに岸壁から突き出ている
続けて「この岸壁自体が、建設からもう90年も経った古いもので、最後に船が着いたのは1995(平成7)年~1996(平成8)年のこと。以降は老朽化により基本的に使用を制限しているんです」と教えてくれた。
立ち入り禁止の看板
1995年に横浜市が「新港9号岸壁」とスロープの劣化調査をしたところ、車両の重量に耐えられないところまでコンクリート板や鋼製の支柱の老朽化が進行していることが判明。
老朽化した上置きのコンクリート盤
現在は立ち入りを制限しており、人が入ることがあっても、車の乗り入れは禁止している。
腐食が進んだ支柱
使用許可が下りるのは、タグボートの一時的な係留や、重量物が乗らない場合のみ。それも、現時点ではあくまでも暫定的なケースだ。
たしかにこれはコワイ
「そのため、横浜市の港湾計画の中では、この岸壁を『耐震強化岸壁』に位置付け改修を予定しています」と蝦名さん。
もはや物流に使えないボロ岸壁が役に立つのか、と不思議になるが、耐震性能を強化した改修を行い“耐震バース(船の停泊所)化”することで、緊急災害時の海上輸送機能の確保につながるのだという。
着々と進んでいる新港ふ頭の港湾計画
では普段の使い道は? との問いに、蝦名さんは「現在の港湾計画の中でここに客船ターミナルを作って“客船バース”として使用することになっています」とお答えくださった。
すぐ近くの「大さん橋国際客船ターミナル」は、近年客船の数が増えて大型化も進んでおり、すでに大さん橋だけではすべての客船の受け入れが困難な状況になってきている。
そんな中で、横浜港としてはクルーズ客船の受け入れ機能の強化に力を入れていきたい。そこで、平常時には9号岸壁で客船を受け入れる計画らしい。
2016(平成28)年3月に大黒ふ頭の貨物船用岸壁に着岸した大型客船「クイーン・エリザベス」号
そうなるとキニナルのは具体的な動きだが、「2018年度の共用を目指す」ものであり、2016(平成28)年度はまずこの貨物の荷役スロープ”も含めた老朽化した「新港9号岸壁」の取り壊し工事を実施。以降、新しい岸壁の整備を段階的に実施していく。
「謎の構造物」の正体が分かったら、すでに取り壊しの運命
「1929(昭和4)年に作られた背後の上屋も、客船ターミナルとして使用できない施設となったので、この機会に取り壊して新しいターミナルを建設します」と蝦名さん。
9月から始まり、今年度末まではこの一帯を更地化するとともに岸壁を壊す撤去工事が中心となり、来年度より新岸壁の建設開始。以降、その整備を2年かけて行う予定だ。
この風景が眺められるのは今だけと思うとさびしい